トップページ  >  起業する  >  コラム・インタビュー  >  業界レポート  >  数字が語るこの市場の深層【OTC医薬品市場】

業界レポート
数字が語るこの市場の深層【OTC医薬品市場】

大衆薬、市販薬、家庭用医薬品といった名称で呼ばれ、ドラッグストアで手軽に買えるOTC医薬品。2009年から薬剤師なしで販売できるものが増え、規制緩和が進む市場の実態を検証する。

目次

薬事法改正の効果は限定的

医者から処方される医療用医薬品とは線引きされ、処方箋なしで手に入れられる一般用医薬品、それがOTC医薬品だ。ドラッグストアのカウンターで気軽に手に入れられるため、英語のOver The Counterを略して、そう呼ばれるようになった。

本来、栄養ドリンクやビタミン剤も薬剤師がいる場所でしか販売できなかった医薬品の一部だ。だが2004年の規制緩和により、医薬部外品として今ではコンビニやスーパーマーケットなどで販売できるものが増えた。

これら医薬部外品も含むOTC医薬品は、販路拡大により消費者との接点が増している。規制緩和の波に乗って、市場も拡大しそうに思われる。

ところが、矢野経済研究所(東京都中野区)ライフサイエンス事業部チーフマネージャーの生貫(うぶぬき)彦三郎氏は「実際はそれほど市場が拡大していない」と指摘する。

同研究所が発表した09年のOTC市場規模は、およそ7900億円。3年連続でプラス成長を達成したことになる(表1)。

表1:OTC医薬品の市場規模表1:OTC医薬品の市場規模

しかし、成長率は前年比0.7%に止(とど)まっている上、プラス成長といっても、3年間いずれも1%未満の微増に過ぎない。

また過去に遡っても、前年比が大きなプラスを示したことはない。04年以降、同じような水準で横ばいが続いている(グラフ2)。

グラフ2:市場規模の推移グラフ2:市場規模の推移

インフルエンザは薬が売れない

この伸び悩みの背景には、不況の影響で消費者が買い控えをしていることもあるが「それだけではない」と生貫氏は語る。「09年には、ドリンク剤や総合感冒薬の売り上げが落ち込んだことも要因の一つ」と話す。

OTC医薬品市場の中で、ドリンク剤は最大の割合を占める。栄養ドリンクなどの滋養強壮飲料には、100mlの"ドリンク剤"と、それ以下の"ミニドリンク剤"がある。両方を合わせると全体のほぼ4分の1になる。

「これらのドリンク剤の売れ行きは気候の影響を受けやすい。09年は冷夏だった」と生貫氏は分析する。不況で残業が減り、ドリンク剤を飲む機会が少なくなる。加えて、夏バテ防止にと飲む人も減ったのだ。

また、この年は新型インフルエンザの流行で、医療機関で治療を受ける人が増えた。ドラッグストアで自分が選んだ風邪薬を買うよりも、医療用医薬品に頼る傾向が強かったため、総合感冒薬が落ち込んだという。

OTC医薬品市場の中で大きな割合を占めるドリンク剤と総合感冒薬の減少が、市場全体の伸び悩みを招いた格好だ。

前年から一転して猛暑となった10年。新型インフルエンザの流行も前年を越えるほどではないと予想される。そのため「ドリンク剤の売り上げは回復するほか、総合感冒薬の売り上げも戻りそうだ」と生貫氏は語る。

09年に1310億円(前年比97.8%)に落ち込んだドリンク剤は1330億円(前年比101.5%)へ、また725億円(前年比94.8%)となった総合感冒薬は7500億円(前年比103.4%)へ。矢野経済研究所は、10年はそれぞれ前年比プラス成長を予測しているという(表3)。

表3:OTC主要5薬効の市場規模推移と予測表3:OTC主要5薬効の市場規模推移と予測

テーマは健康と美容へ

このように、全体的に見ると苦戦を強いられているOTC医薬品市場。季節的な影響も強いため、長期的なトレンドを読み取りにくいように思える。

だが「"健康や美容"をキーワードにして分析すると、消費者が購入する医薬品には一定の傾向が見出せる」と生貫氏は明かす。

健康志向の高まりを背景に、暴飲暴食を抑えてメタボリック症候群(メタボ)の改善を試みる人が増えている。この動きは胃腸薬の売れ行きを圧迫する一方で、肥満改善薬の売り上げを伸ばす。

中高年の男性に向けたメタボ対策、女性向けのダイエットなどに薬効のある医薬品は、医薬部外品を含めてすそ野が広がっている。即効性はなくても持続的な体質改善が見込める漢方を使った医薬品なども出回っていて、市場に広がりが出始めている。

さらにタバコ増税に伴い、本格的に禁煙を考える人も増えており、禁煙補助薬の伸びが期待できる。またビタミン剤では、継続使用をやめてビタミンを食品で摂取する人が増えているため、全体的に見ると売り上げも減っている。

他方、女性向けに美肌や美白の効果を謳ったものは、こうした中でも市場拡大している。これらはOTC市場の中ではまだまだ規模が小さいため、全体に対する影響は軽微だ。だが、消費者の興味が高まる中で、今後も注目される市場になっている。

うがい手洗いにビジネスチャンス

新型インフルエンザの流行は医薬部外品の中に確実に影響を及ぼしており、「薬用石けんやうがい薬、殺菌消毒剤の使用頻度が格段に増えた」と生貫氏は指摘する。

インフルエンザ流行の後、外出後に手を洗浄する習慣が浸透した。薬用石けんで手を洗う人が増え、需要は拡大している。05年の82億円に比べ、09年には200億円規模と推定される(グラフ4)。

グラフ4:薬用石けんの生産金額グラフ4:薬用石けんの生産金額

こうした商品に加え、異業態の小売業の新規参入が本格化してくれば、販売チャネルはさらに拡大する。また、消費者が自ら情報を集めて、自分の判断と責任でOTC医薬品の購入を決める。そんなセルフメディケーションの意識も徐々に広がりつつあり、気軽に医薬品を求めるようになっている。

「09年の薬事法改正の効果は11年から12年頃には現われてくるだろう」(生貫氏)。

今後も健康や美容を軸にOTC市場の動向に注目したいところだ。


掲載日:2011年6月14日

  • googleplus
  • hatena
  • pocket
  • line
  • evernote
Copyright © WizBiz Inc.
このコンテンツの著作権は、WizBiz株式会社に帰属します。著作権の承諾なしに、無断で転用することはできません。
このページの先頭へ
起業するコンテンツ一覧
  • 事業計画作りや実際の起業準備そして開業まで。起業を目指す人の『こんな時どうする?』に応えます。

  • 法律知識や経営診断など、起業準備段階はもちろん、実際に起業・開業してからも使える豊富な情報を掲載。

  • 『国の補助金を活用して創業するには?』についてご説明します。

  • 中小企業や個人投資家にとってのメリットを、その仕組みや優遇措置について詳しくご紹介します。

  • 起業・開業を考えている職種の消費者利用動向がすぐにわかる、職種別データ一覧。

  • 200以上の業種・職種から選べる開業準備手引き書。

  • 最新のビジネストレンドや中小企業が直面する経営課題など、読み物コンテンツをまとめています。

  • 若手起業家にインタビュ—。「社会人起業」と「学生起業」それぞれの選択を対比しながら起業のカタチを探ります。