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業界レポート
数字が語るこの市場の深層【スポーツ関連市場】

2010年前半は「2010FIFAワールドカップ南アフリカ」で盛り上がった。だが、スポーツは「見る」から「する」へ移行しつつあるという。参加や用品の購入といった面から市場を探った。

目次

スポーツをする人が増加傾向に

スポーツを楽しむ場合、「見る」と「する」に大別できる。三菱UFJリサーチ&コンサルティング(東京都港区)とYahoo!リサーチ(現マクロミル、東京都港区)の共同調査によると、日常におけるスポーツの位置付けを「見ることよりもすることの方が、大きな位置付けを占めている人」が増加傾向にある(表1)。

表1:スポーツの位置付け表1:スポーツの位置付け

同調査では、何らかのスポーツをしている人は全体の56.4%で、2008年と比較して8.2ポイント増えている。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの政策研究事業本部の白藤薫氏は「高齢者を中心として、健康維持を目的にスポーツを始める人が多い」と話す。

その増加傾向を裏付けるように、「することよりも見ることの方が、大きな位置付けを占めている」人は減少している。

そのことは、スポーツ用品の購入や施設の利用料、観戦費用など、スポーツ活動への参加にかかる支出を示すスポーツ参加市場規模を見ても明らかだ(表2)。

表2:スポーツ参加市場規模表2:スポーツ参加市場規模

09年のスポーツ参加市場規模は4兆314億円。そのうち野球やサッカーなどのスタジアムでの観戦市場は5639億円だ。前年の7051億円に比べると、市場の縮小が顕著に表れている。

特に若い世代がスタジアムや競技場に足を運ばなくなった影響が大きい。今年は「2010FIFAワールドカップ南アフリカ」の開催で日本中が盛り上がった。

しかし、「それが国内のスタジアムなどでの観戦に結び付く可能性は薄い」と同社の五味崇氏は指摘する。世界的なイベントに対する盛り上がりとJリーグの試合への動員は、直接的に結び付くわけではない。今後はスタジアムや競技場での観戦人口の減少により、周囲の飲食店にマイナスの影響が出ることも考えられる。

このスポーツ参加市場の特徴は、市場全体のうち、3割を60歳代が占めている点だ。
 「この世代は人口が多いため、市場の中で大きなウェイトを占めている」と五味氏は指摘する。

この層は子どもが独立して時間ができたことで、仲間づくりのためにスポーツを始めるケースも多い。そのため、ウォーキングなど手軽で人と一緒にできるスポーツへの参加が顕著だ。

分野によっては減少傾向にある

では、スポーツ用品の国内市場はどうだろうか。
 矢野経済研究所(東京都中野区)によると、09年のスポーツ用品国内市場は前年比98.0%(見込み)だ(グラフ3)。

グラフ3:スポーツ用品分野別 国内市場規模推移グラフ3:スポーツ用品分野別 国内市場規模推移

マイナス成長の最も大きな要因はゴルフ市場がマイナスになったことにある。それには、08年のSLEルールの改正が影響している。

この改正によって、ドライバーなどのゴルフクラブの設計自由度が制限された。そのため性能の進化が鈍化し、消費者のクラブの買い控えが発生(表4)。ゴルフ用品別国内市場規模の推移を見ると、09年は前年比84.2%とほかの用品と比較しても、非常に減少している。

表4:ゴルフ用品別 国内市場規模推移表4:ゴルフ用品別 国内市場規模推移

クラブの売り上げ不振が、結果としてゴルフの市場全体の縮小につながったのだ。

女性がゴルフ市場に参入し、ゴルフブームといわれているものの、市場の推移を見ると、実態とは乖離しているといえよう。ただし、まったくビジネスチャンスがない市場というわけではない。

たとえば、ゴルフを楽しむ女性が増えつつあるものの、クラブは男性用のものが多い。矢野経済研究所のファッション・スポーツ&リテール事業部主任研究員の三石茂樹氏は「メーカーは性能にばかり目を向けていたが、デザインの工夫で女性ゴルファーのニーズをつかめるだろう」と語る。

不況の影響でアウトドアに関心が高まる

また、スポーツ用品市場は全体を見ると縮小傾向にあるものの、全分野で落ち込みが見られるわけではない。サイクルスポーツ用品やアウトドア用品など、一部には市場が拡大している分野もある。

サイクルスポーツ用品市場は前年比107.8%の303億円になる見込みだ。環境にやさしい乗り物ということで、自転車ブームが起き、その影響で売り上げが伸びている。また、節約のために通勤・通学に自転車を使う人も増え、市場の拡大を押し上げている。

あわせて好調なのがアウトドア用品市場だ。09年は前年比103.4%の1360億4000万円になると見込まれている。この市場の拡大には特に不況の影響が強いという。「不況になると、レジャーにおいて『安・近・短』志向が強くなる。そうした傾向の受け皿としてキャンプやバーべキューの人気が高まっている」(三石氏)

不況によって心理的な不安が強くなり、人との絆を確かめたくなる。そんな時にアウトドアが向いていることも市場の拡大を進める要因の一つだ。

高齢者が健康のためスポーツに参加

今後、スポーツ用品市場はどうなるのだろうか。矢野経済研究所の調べによると、2010年のスポーツ用品国内出荷市場規模は1兆2851億8000万円になると見込まれている。これは、前年比100.4%の伸びだ。

理由として、健康意識のさらなる高まりが挙げられる。「年をとっても若々しく元気でいたいという高齢者が、スポーツを始めるケースが増えるだろう」(三石氏)

そうした中で企業が消費者の心をつかむには、「ライフスタイルの提案が必要」と三石氏は話す。
 商品の機能や性能だけではなく、その商品を使えばどんなライフスタイルが手に入るのかを示す。それによって消費者に財布の紐を緩めてもらう。スポーツ用品市場は、工夫次第で、まだまだニーズをつかめる市場といえるだろう。


掲載日:2011年2月22日

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