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業界レポート
数字が語るこの市場の深層【オーラルケア】

口と歯。口臭や虫歯治療や入れ歯など、さまざまな形で老若男女の問題となる。この分野を対象とするオーラル(口腔)ケア用品の市場は社会全体の現象と結びついて推移している。

目次

存在する二つの市場

「オーラルケア」という言葉から、どんな商品が思い浮かぶだろうか。カタカナ語にすると、具体的にイメージしにくい向きもあるかもしれない。

だが、「歯磨、歯ブラシを筆頭とした口と歯の健康を保つもの」といった理解をしてみればわかりやすいだろう。

ドラッグストアに足を向けて見れば、歯磨から電動歯ブラシ、入れ歯安定剤に至るまで、実に多くの商品が並んでいる。価格こそさほど高くないが、日々家庭や職場で使うものとしてなじみ深い。

厚生労働省が昨年9月に発表した「平成19年度国民医療費の概況」によれば、歯科診療医療費は前年度比43億円の減少となっている。これを「オーラルケアに対する意識向上と商品の普及のため」と結論することは容易にはできない。

ただ、この市場にある商品が消費者に正しく活用されれば、虫歯で歯科医のお世話になる機会も減りそうなものだ。

そんなオーラルケア市場の動向について、矢野経済研究所(東京都中野区)の浅井潤司上級研究員は「市場全体は微増の傾向にある」と指摘する。

同研究所では2004年からオーラルケア市場のリサーチを行い、「オーラルケアマーケティング総鑑」を発刊しているが、調査開始以降この傾向にある。

浅井氏によると、08年度オーラルケア市場の全体規模は約1700億円の見込み。04年度では約1570億円だった。市場に対して、同研究所ではドラッグストアやスーパーなどでの販売という「一般ルート」と、歯科医院での販売の「歯科ルート」の二つに分類・調査している。

前者が総市場に占める割合は9割を超す。後者は単価こそ高いものの、消費者から見た場合、ドラッグストアに置かれた商品との差異が明らかでない場合が多く、さほど受け入れられていないのが現状だという。

一方で「『一般ルート』の商品が高機能化している」(浅井氏)との現実もある。

表1:診療種類別国民医療費の構成割合表1:診療種類別国民医療費の構成割合
グラフ:オーラルケア総市場規模グラフ:オーラルケア総市場規模

PB浸透の影響

ここで「一般ルート」の市場に絞って見てみよう。矢野経済研究所では、この市場で包摂する商品分野を「歯磨」「歯ブラシ」「電動歯ブラシ」「洗口液」「義歯安定剤」「義歯洗浄剤」「デンタル用品」としている。

それぞれの08年度の市場規模の見込みは、「歯磨」678億円、「歯ブラシ」382億円、「洗口液」195億円などとなっている。やはり毎日使う歯磨、歯ブラシの存在感は大きい。

さらに各分野を見ていくと、オーラルケアの主役ともいうべき「歯ブラシ」は横ばいの推移にる。そして、浅井氏は「09年度はPB(プライベート・ブランド)など、低価格商品の台頭もあり、若干市場は縮小するのではないか」との見方を示す。

横ばいとなっている背景にあるPBは、08年のリーマン・ショック以降の景気悪化で脚光を浴び、急激に浸透した。この影響をオーラルケア市場も免れないのかもしれない。PBのような低価格商品が伸びれば必然的に市場規模は縮小してしまう。

歯ブラシについては「ナショナルブランドとPBの間で、その違いに消費者がさほど意味を見出していない面があるようだ」と浅井氏は語る。

そんな「歯ブラシ」に対し、「歯磨」は微増で推移している。この点に関して、「歯磨」では、中高年向けの「歯周病対策」、喫煙によるヤニ対策を含めた「ホワイトニング」といったように、「用途を明確にした高価格の商品により、商品単価が上がっていることが挙げられるだろう」(浅井氏)。

医薬部外品では、500円~1000円台のものも珍しくない。浅井氏によると、この層の商品が歯ブラシの分野では拡大しつつあるという。

表2:2008年度一般ルートにおける分野別市場規模と構成比表2:2008年度一般ルートにおける分野別市場規模と構成比

平均寿命も関係する

「洗口液」は、「歯ブラシ」と「歯磨」に比べ、まだ使用率が低いとされる。

そのため、この使用率をメーカーが新たな商品提供を通じて上昇させれば、市場の成長につながる。「メーカーはユーザーを拡大しようと、朝用、夜用といったシーンに分けた商品や、フルーツフレーバーの商品、大容量タイプの商品を発売するなどしている」と浅井氏は動向を解説する。

オフィスのトイレでは、昼食後に洗口液を使用する人の姿を見ることも珍しくない昨今だが、まだ掘り起こせる需要はあるようだ。

糸で歯間の汚れを取るもの、ブラシタイプのものなどを含む「デンタル用品」は、近年拡大基調にある。要因としては、洗口液と同じく、使用率が「歯ブラシ」「歯磨」ほど高くないことが挙げられるという。

同研究所では「電動歯ブラシ」について、「一般ルート」では家電量販店などで販売されている本格的なものを省いて捉えており、ここでは「3000円未満の汎用品」という見方だ。この分野は微減を続けているという。

その背景を浅井氏は「家電店で販売されている、より高機能の電動歯ブラシに需要がシフトしているのではないか」と推測する。

オーラルケア市場のうち、義歯(入れ歯)関連の「義歯安定剤」「義歯洗浄剤」も微増の状況にある。これは平均寿命が延びた影響で、入れ歯で生活する人が増えていることを考えれば納得できるだろう。

オーラルケア市場は、日常使用するものという性格もあり、その動向を景気に左右されにくいといわれる。

社会全体の健康志向もあり、消費者がこの分野での出費のレベルを簡単に落とすことはないのかもしれない。また義歯関連の市場を後押しする高齢化も見逃せない。

使用率の低い商品を成長材料として、しばらくは市場全体の微増傾向は続きそうだ。


掲載日:2010年6月22日

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