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業界レポート
数字が語るこの市場の深層【金】

この10年来、上昇を続けてきた金価格。2009年9月には史上最高値を更新した。中国・インドの台頭による需要増加と、投機マネーの思惑。価格の動きの背景には、一言では語れない要因がある。

目次

リサイクルが進む金

「日本は現在、金の輸出国である」この言葉を自然に受け止められる日本人がどれぐらいいるだろう。

もちろん日本に金の鉱山があるわけではない。リサイクルされた金が輸出されているのだ。金事情に詳しい、非営利団体ワールド ゴールド カウンシル日韓地域代表の豊島逸夫氏が内幕を語る。

「鉱山で1トンの土を採掘して採れる金は5グラム。数個の携帯電話からリサイクルできる金は200グラム。話にならないだろう」

かつては「有事の金」と言われた。戦争が起こると、投資資金が現物資産である金に集まるということを示す。しかし、この10年の上昇相場(グラフ1)を見れば、有事に関係なく金需要が増え続けていることは明確だ。

グラフ1:金価格ヒストリカルチャート(1974年1月〜2009年9月の月間平均値)グラフ1:金価格ヒストリカルチャート(1974年1月〜2009年9月の月間平均値)

そして、増加する需要の中心に、経済成長を遂げた中国があることは想像に難くないだろう。

2008年度の金需要国ランキング(グラフ2)ではインドが第1位。インドもここ20年で経済成長を遂げたが、世界一の需要の背景には、花嫁の持参金に金を持たせたり、装飾品として金を好むという社会習慣がある。

グラフ2:金宝飾需要国トップ10(2008年)グラフ2:金宝飾需要国トップ10(2008年)

「しかし、サブプライムローン問題以降、経済基盤が盤石ではないインドは大きなダメージを受けた。そして"文化"に支えられたインドの金需要は減少している」(豊島氏)。不況で花嫁に持参金を持たせられないインドの父親が増えたわけだ。 比較的、経済基盤が強い中国はサブプライムのダメージを大きく受けずに済んだ。豊島氏によれば、09年の需要国第1位のイスには中国が座ることになりそうだ。ではなぜ大量な金を中国が求めているのか。

金でわかる日本の弱腰外交

理由の一つは女性の社会進出が進み、可処分所得が増え、装飾品としての金が求められている点。そしてもう一つは投資需要だ。中国ではかつて投資目的で個人が金を保有することを禁止されていた。

しかし07年、WTOの加盟国でもある中国は"しぶしぶ"金の売買を解禁。さらに金を保有したいのは個人だけではない。09年9月現在、中国の公的機関が保有している金は1054トン。

「中国の外貨準備は現在は大半が米ドルだが、徐々にこれを金保有に変えていくだろう」(豊島氏)

参考までに日本の公的金保有量は765トン。日本では膨大な外貨準備高のほとんどを米国債、「つまりアメリカの借金の証文」(豊島氏)が占める。

金の保有量は国の経済力を表すといわれているが、世界第2位の経済大国の金保有量は世界第8位まで落ちる。アメリカに気を遣って米国債を換金できない日本の「弱腰外交」が透けて見えるわけだ。冒頭に述べたように、ここ数年「地上在庫」と呼ばれる金のリサイクルに注目が集まっている。翻せば、増える需要を満たすだけの金の採掘が行われていないことを指す。金鉱山生産量は05年以降減少し続けている(グラフ3)。

グラフ3:金鉱山生産量推移(1998年〜2008年)グラフ3:金鉱山生産量推移(1998年〜2008年)

かつて供給国の第1位だった南アフリカの供給量が落ち、現在のトップは中国が走る。潜在的な金埋蔵量においても、中国は今後大きな可能性を持っている。 中国という未来の鉱脈があるにもかかわらずリサイクルに関心が集まるのは、需要が膨大なことだけが理由ではない。 「金は取引市場があるゆえに流動性が生まれる。同じ携帯電話から採れるレアメタルのリサイクルが進まないのは、それを売買できるマーケットがないからだ」(豊島氏)。そう、金には市場がある。そして市場があるところには必ず投機マネーが姿を現す。

「21世紀に入ってから金先物の残高は膨らむ一方だ(グラフ4)。この数字は危険な問題を暗示している」(豊島氏)

投機家が金を保有しているということは、それをいつか売るということだ。トレーダーたちは早ければ1週間、長くても2〜3カ月で買った金を売りに出す。では現在の上昇相場はいずれはじけるバブルなのか。

グラフ4:金価格とNY金先物残高の推移グラフ4:金価格とNY金先物残高の推移

バブルと実需の二面性がある

「現在の価格(09年10月29日現在、1トロイオンス=約1030ドル。日本では1グラム=約3100円)で手を出して、短期売買を試みようと考えるなら、投機マネーの荒波にさらされる危険性は高い」(豊島氏)

ただし、金はバブルと実需の二面性を持っている点を豊島氏は指摘する。世界の金需要の中で、投資需要は8%にも満たない。

そして実需で買われる価格は現在、900〜950ドル(1トロイオンスあたり)と言われている。1000ドルなら手を出せないインドの父親も、900ドルなら検討するということだ。

そして「1年後には実需の価格が1000ドルを超えている可能性は高い」(豊島氏)という。

金は、採掘コストから考えれば600ドルを割ることはないと言われている。リーマン・ショックで株式が紙くず同然になった経験を持つ投資家からすれば、金は安定した投資対象になるだろう。

豊島氏は金投資のコツを昔の格言になぞらえて「有事に売る金」と表現する。有事が起こって上昇してから買うのでは遅い。日頃からこつこつと買い貯めておいて、有事に価格が上昇した時に売る。

昔で言うところの「有事」が起こる可能性は現在低いだろう。「有事の金」という言葉が生まれた時代の「有事」は世界的な戦争を指すからだ。ただしリーマン・ショックのような「経済的な有事」が再び起こる可能性もある。純金積立を検討する価値はあるだろう。

いや、個人以上に金の保有について検討すべきなのは「日本」だ。前述した日本の金保有量の低さについて、かつて自民党の谷垣財務大臣に改善を迫った民主党の議員がいたという。外貨準備について、民主党・鳩山政権はどう対応していくのか。金の数字を見ながらチェックしていきたい。


掲載日:2010年3月23日

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