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業界レポート
アート市場

この5年間ほど、右肩上がりの相場を謳歌したアート市場も、昨年9月のリーマン・ショックと無縁ではいられなかった。ただし、良い作品はそれほど下がらず、価格には二極化の兆候も見られるようだ。

目次

リーマン・ショックで半値に

絵画を自宅に飾るために、気軽に購入する人が増えている。ネット画廊を運営するギャラリータグボート(東京都港区)では、現代作家を中心に約5000点の作品を扱っている。同社の徳光健治代表は「アートを購入されるお客さまの数は数年前から増え続けている。年率10%程度の右肩上がり市場だ」と語る。

これは家族が家で過ごす時間が増えていることとも関係していると言われる(グラフ1)。アートも一つのインテリアであり、部屋の雰囲気を高める小道具として定着した証しだろう。

1:家族での時間の過ごし方
1:家族での時間の過ごし方

「最近になって急に起きた現象ではないが、日本人の暮らしが西洋化するのに合わせて、インテリアにこだわる人は増え続けている。現代アートもインテリアの一つとしてとらえられている」(徳光氏)

これに合わせてここ数年は現代アートの価格もうなぎ上り。商品の性格上、公式統計があるわけではないが、「2004年から08年の9月まで価格は右肩上がりで上昇し、この間にほぼ4倍になった。ただし、その後のリーマン・ショック以降は、その水準から半額まで低下した」(徳光氏)という。

4年間で4倍というのは、まさに"バブル"と呼ぶべき状況。カネ余りで資金が世界の株式市場から原油市場までを席巻していたころだけに、投機マネーが一獲千金を狙って流入していたことは想像に難くない。

素人が純粋に自宅で楽しむためにインテリアとして絵を買うというような牧歌的な世界からは、次第にかけ離れ始めていたと言えるだろう。

全面的なバブル崩壊ではない

それでも単純に計算すれば、04年比ではまだ2倍の水準にとどまっていることになる。しかしもちろん、一言にアートといっても作品によって千差万別。まだ価格が上昇し続けているものから3分の1に低下したものまで、玉石混交なのが実態だ。

ところで現代アートの日本での市場規模は200億〜300億円と言われている。一般的には、新しい手法で描かれた1960年以降の作品が現代アートとして定義される。ただし、現代アートの日本市場のシェアはわずか3%にも満たないとされており、まだまだ過渡期の市場だ。

一方、「伝統的な日本画や、油絵で描写した洋画、水彩画、掛け軸などの古美術はまた別の市場。この実態は非常に見えにくく、市場規模は推測で3000億〜4000億円とも言われている」(徳光氏)。

日本ではまだまだこちらの伝統的な作品群が巨大市場を形成しているのが実態だ。
 アート市場は景気との関係で言えば、明らかに「正」の相関をもつ。ただしアート市場は流動性が著しく低いので、価格の変化は通常の金融商品などと比べると遅いと言える。

評価の確立した作品は堅調

通常の金融商品との決定的な違いは、作品による個別性が非常に強いことだ。「価値の高い作品であるほど、値崩れがしにくい。実はさほど価値がなくても、全体の相場上昇につられて上がった作品は、足元では値崩れが著しい」(徳光氏)。

これはゴルフ会員権のイメージに近いと言えるかもしれない。アート市場で勝ち残る術は、何よりも「選別眼」。もちろん、自宅で鑑賞して楽しむ分にはこの限りではない。

また、たとえば世界的に評価されているポップアート作家である奈良美智氏の作品のように、作品数が少ないために希少価値の高い作家の場合、あまり値崩れしない。ちなみに同氏はニューヨーク近代美術館(MoMA)やロサンゼルス現代美術館に作品が所蔵される日本の現代美術界を代表する一人。にらみつけるような目の女の子をモチーフとしたドローイングなどで知られる。

逆に作品を乱発していたような作家の作品は、値崩れが激しい傾向があるという。同様に日本を代表するポップアーティストである村上隆氏は、ブームとも言える状況の中で作品価格の上昇が続いていたが、ここにきてやや価格値下がりのペースが速いと言われる。

一方、これらの価格乱高下とは無縁のように、泰然としているのがいわゆる古美術の世界。
 「古美術などは景気に強い傾向がある。これは60代以上の年配の方々の取引が多いため、資産運用が保守的で株価の変動などにあまり左右されないためではないか」(徳光氏)とみられる。

女性の購買力がモノをいう?

ところで、自宅で気軽に楽しめるような現在アートとは違い、いわゆる古典作品や古美術品などの高価な作品は、一般的にはオークションによって売買される。

国内で唯一上場する代表的なオークション企業、シンワアートオークション(東京都中央区)によれば、絵画オークションの落札率(グラフ2)、平均落札価額(グラフ3)のいずれを見ても、リーマン・ショックを挟んだ市場の低迷がはっきりと見て取れる。

2:シンワアートオークションの過去5年間の落札率の推移(5月期)
2:シンワアートオークションの過去5年間の落札率の推移(5月期)
3:シンワアートオークションの過去5年間の平均落札価額の推移(5月期)
3:シンワアートオークションの過去5年間の平均落札価額の推移(5月期)

やはり美術品は不要不急の商品であるだけに、景気停滞には弱いようだ。古典の世界でも、市場で評価の定まった作品はさほど下落していないとされる。ただし、著名作家の代表的作品はそれほど頻繁に売買されるものではないだけに、その実態はなかなか分かりにくいようだ。

また、同社のオークションの中でも意外と健闘しているのが、「ジュエリー&ウォッチオークション」(グラフ4)。これらは絵画などとは違い、実際に身に着けるものだけに、鑑賞用とは性格を異にする。また、ワインのオークションも比較的堅調を維持しているという。実用的なだけでなく、女性の羨望の的となる商品の価格が下がるのは、あらゆる商品の中でも最後の最後なのかもしれない。

4:シンワアートオークションのジュエリー&ウォッチオークションの推移
4:シンワアートオークションのジュエリー&ウォッチオークションの推移


掲載日:2009年10月13日

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