トップページ  >  起業する  >  コラム・インタビュー  >  業界レポート  >  数字が語るこの市場の深層【新築不動産市場】

業界レポート
数字が語るこの市場の深層【新築不動産市場】

ミニバブル崩壊の様相を見せる日本の不動産市場。要因は米国を起点とする金融危機だけでなく、ほかにも日本固有の悪要因が折り重なっている。今後の動向を探った。

目次

視界に捉えたトンネルの出口

新築不動産市場はどん底の状況を脱し、ようやくほのかな薄日が差し込みつつあるようだ。不動産経済研究所(東京都新宿区)によると、首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)では新築マンションの契約率が4月まで5カ月連続で前年を上回った。販売在庫も4カ月連続で減少している。

需給バランスの改善を受けて、月を追って供給量の前年同月比での減少率も縮まり、4月はついに8.5%減と一ケタ減まで改善した(図1)。同社企画調査部の松田忠司氏によれば、「モデルルームへの来場者数も増えており、5月の新規の発売戸数は2007年8月以来、1年9か月ぶりに前年同月を超える見通し」だという。

図1:首都圏の月別供給戸数増減率(前年同月比)図1:首都圏の月別供給戸数増減率(前年同月比)

この2年間近く、新規マンション市場は、ほとんど呪われた市場だったと言ってよい。振り返れば首都圏の新築マンション市場は05年まで年間8万戸の大量供給が続き、市場はわが世の春を謳歌していた。この頃には"売り惜しみ"という、今では信じがたい言葉すらささやかれたものだ。

トリプルパンチでノックダウン

しかしその後、市場はスパイラル的な下降局面に突入し、08年には発売戸数がついに4万戸台にまで減少(図2)。ちなみに08年の首都圏の減少率は前年比28.3%減だが、全国計でも同26.7%減少しており、日本全国に共通した傾向であることが読み取れる。

図2:新築マンション発売戸数推移(首都圏)
図2:新築マンション発売戸数推移(首都圏)

「供給減少の最初のきっかけになったのが、07年までの急速な価格上昇。庶民には手の届かないところまで価格が上昇してしまい、顧客離れを招いた」(松田氏)。資材価格の上昇などもあり、価格については08年まで、なお緩やかながら上昇が続いていた(図3)。もちろん価格変動は市場の自然な調整であり、誰を責めることもできない。

図3:首都圏マンション価格(対前年伸び率)
図3:首都圏マンション価格(対前年伸び率)

ただし、07年には同時に建築基準法の改正で着工戸数が減少した。これは完全な人災と呼んでよい。昨年にはそこに金融危機の津波が来襲、市場はトリプルパンチを受けた形で完全にノックダウンした。08年9月には供給量が同53.3%も減ったのだから、その下降速度はただ事ではない。

それにしても不動産市況の好不調の波は短く、局面の展開が非常に速い。「購入者のマインドに左右されやすいうえに、価格が手の届かないところまで上昇してしまうと、給与が上がらない限り買えないものは買えない」(松田氏)。

ちなみに4月の新築マンション平均価格は3953万円で、平米単価は60.4万円。ここへきて、市況は底を打ったと言えるのだろうか?
 「バブルが壊れて景気が悪いといわれてた1990年代も、マンションの売れ行き自体は悪くなかった。景気は悪くても、これだけ価格が下がると"お買い得感"があるのは確か。これまで購入を控えていた層が戻ってきている。不動産はもはや完全な市況商品になったと言える」(松田氏)。

ポスト団塊ジュニアが逆転

ところで、主にどの層に買い意欲が戻っているのか?
 ずばり、主役は団塊ジュニアの下の世代だ。年齢層は76年生まれ以降の20代後半〜30代前半。購入物件の価格帯は決して高くはないが、積極的な購買意欲を見せている。リクルート住宅総研(東京都千代田区)の調査(08年首都圏新築マンション契約者動向調査)によると、昨年は団塊ジュニア世代(1971〜75年生まれ)を9ポイント上回り、ついに主役に躍り出た(図4)。

図4:契約者の世代の割合図4:契約者の世代の割合

住宅の購入理由の中で急上昇したのは「価格の買い時感」。「金利が低く買い時」は06年から2年連続で減少し、「価格が安くなり買い時」が下半期に大幅に増加した(図5)。一方、「間取りプラン」や「エリア環境」の決め手度合いが過去最高水準に、「交通利便性」が過去最低水準にと、こだわりの変化も読み取れる。そして、もう一つの主役は"アクティブシニア"と呼ばれる、リタイアしてまだ元気な世代。一時は退職金で主役に躍り出ることも期待されたが、取引件数自体はまだそれほどでもない。ただし、特に都区部の利便性の高い物件を物色している。

図5:購入理由(3つまで回答)図5:購入理由(3つまで回答)

費用対効果に優れた中価格帯商品が人気

言わずと知れた少子高齢化で、若年層は先細りで減る一方。実際、ポスト団塊ジュニア世代は、団塊ジュニア世代よりパイが小さい。主役ではないとはいえ、注目はやはり資金力に余裕があり、人口層の厚い団塊世代の今後の動向に集まる。

同社の島原万丈主任研究員は、「07年あたりまで"団塊ビジネス"という言葉が流行ったが、実態はどちらかといえば『ふたを開けてみれば、そうでもなかった』という印象。ただし、一気に大波がやってくるわけではないが、それでも今後10年の住み替えや建て替えに関して、潜在的な需要がある」と語る。

団塊世代の9万人の潜在需要がいつ市場に出てくるのか、そのタイミングはわからない。「経済力のある世帯が都心を狙っている一方で、あまり余裕のない世帯は、予算制約の中で郊外でも駅に近い物件を探す傾向がある。また、前者は女性の希望者が多いのに対して、後者は男性が多いのも特徴」(島原氏)だという。

それにしても、そもそも不動産というのは同じ立地、物件が2つあるわけではないので、一概に価格を比較できない。平均価格が上下したといっても、物件の個別性がきわめて高く、また供給エリアの分布によっても大きく価格帯が左右される。

「先進国の中では異常に低い水準の中古住宅取引の比率が、今後は特にあまりこだわりを持たない若い世代で上昇する可能性もある」(島原氏)。いつだれが主役に躍り出るのかも読みにくい。
 こと不動産市場に関しては、かように数字で読み解くのはむずかしい。


掲載日:2009年9月15日

  • googleplus
  • hatena
  • pocket
  • line
  • evernote
Copyright © WizBiz Inc.
このコンテンツの著作権は、WizBiz株式会社に帰属します。著作権の承諾なしに、無断で転用することはできません。
このページの先頭へ
起業するコンテンツ一覧
  • 事業計画作りや実際の起業準備そして開業まで。起業を目指す人の『こんな時どうする?』に応えます。

  • 法律知識や経営診断など、起業準備段階はもちろん、実際に起業・開業してからも使える豊富な情報を掲載。

  • 『国の補助金を活用して創業するには?』についてご説明します。

  • 中小企業や個人投資家にとってのメリットを、その仕組みや優遇措置について詳しくご紹介します。

  • 起業・開業を考えている職種の消費者利用動向がすぐにわかる、職種別データ一覧。

  • 200以上の業種・職種から選べる開業準備手引き書。

  • 最新のビジネストレンドや中小企業が直面する経営課題など、読み物コンテンツをまとめています。

  • 若手起業家にインタビュ—。「社会人起業」と「学生起業」それぞれの選択を対比しながら起業のカタチを探ります。