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業界レポート
逆風のなかブランド力を高め生き残りを図る【納豆】

現在、納豆業界は約2000億円市場といわれ、タカノフーズ(茨城県小美玉市)、ミツカン、くめ・クオリティ・プロダクツ(茨城県常陸太田市)など大手6社で市場全体の半分を占めている。全国区の食品となった納豆だが、今、この庶民の味が大きな岐路に立たされている。

目次

健康ブームで躍進し各社が新工場を建設

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納豆は、庶民の味として親しまれ、日本を代表する伝統食品だ。低価格ながら栄養価に優れ、独特の味わいがクセになり広く愛されてきた。納豆が一般庶民に愛されてきた一番の理由は、買い求めやすい価格にある。最も安いセール品は3パック(3食分)で80円以下も珍しくなく、スーパーの特売で目玉品になっている。

1990年代の初め頃からテレビなどのメディアによって納豆が健康にいいことが知れ渡り、納豆ブームに火が付いた。98年には、大手調味料メーカーのミツカン(愛知県半田市)が「金のつぶ」ブランドで参入。市場はにわかに活気付いた。ミツカンは独特のにおいを抑えた商品を開発し、伝統的に納豆嫌いの多い西日本地域での販売に力を入れるなどして順調にシェア(市場占有率)を拡大、今では業界2位にまで登り詰めている。

現在、納豆業界は約2000億円市場といわれ、タカノフーズ(茨城県小美玉市)、ミツカン、くめ・クオリティ・プロダクツ(茨城県常陸太田市)など大手6社で市場全体の半分を占めている。納豆の人気を受けて、タカノフーズが04年に宮城県加美町に東北工場を設立し、07年にはミツカンが、全国的に販売を広げていくなかで西の生産基盤を作るために、兵庫県三木市に新工場を建設した。そのほか、各社が新工場を相次いで造り、大量生産による低価格戦略の維持と売り上げの増加を図った。「安さ」「味」「健康」などで全国区の食品となった納豆だが、今、この庶民の味が大きな岐路に立たされている。

3倍まで高騰した大豆や、原油の価格が業界を襲う

サブプライムローン問題による世界同時株安が、これまで投資の主舞台ではなかった商品市場にまで巨額の投機マネーを呼び込み、大混乱を引き起こした。これが日本の納豆業界にも波及する。東京穀物商品取引所の非遺伝子組み換え大豆の先物相場は、07年初頭には1トン当たり約4万円だったが、緩やかに上昇を始め同年末には8万円を超え、さらに08年7月には約11万円を記録した。わずか1年半で、原料となる大豆の価格が3倍近くまで高騰した計算だ。また、原油も一時、異常な高騰を見せ、発泡スチロールやフィルムといった包装材のコスト、卸業者や小売店までの輸送コストが急激に上昇した。

現在では、大豆先物相場も原油も市場が狂乱する前の価格に戻っており、一見すると納豆業界を襲った暴風は過ぎ去ったかに思える。だが、先物取引によって高騰した時期に購入した大豆の支払いはこれからだ。世間一般では大豆の価格はすでに安定したと認識されており、原料高騰による値上げを打ち出しにくい状況になっている。

さらに新工場への投資をしてきたことで、市場の需要が多少落ち込んでも減価償却のために稼働率と生産量を落とすわけにはいかず、結果として供給過多を引き起こすこととなった。こういった理由から、同じ大豆を使った豆腐や油揚げは値上げをしていても納豆は安いままなのである。

「食品の多くは値上げをしましたが、納豆もほかの食品と同じように早めに値上げを断行すべきだった」と分析するのは、10年以上にわたって業界を見つめてきた『日本食糧新聞』の板橋英俊氏。「大手が先導し、製造コストを値段に上乗せできるように業界全体として動かなければならなかったのに、タイミングを逸してしまった」と言う。

消費者の心を捉える新商品も続々と登場

このように厳しい状況が続いているが、注目を浴びる新商品が続々と登場し、明るいニュースもある。各メーカーが納豆の味や商品構成に工夫をした付加価値商品を発売することで、他社との差別化を図ろうとしているのだ。

くめ・クオリティ・プロダクツは、すき焼きの割り下風味やおろしポン酢風味といった新しいタレをつけた「フレーバー系納豆」を積極的に展開し、新たな納豆ファンを獲得した。ミツカンはタレをゼリー状にしてフィルムや小袋をなくし、消費者の手間を減らした「金のつぶ あらっ便利!」を開発。従来にはなかった便利さで納豆の新しい食べ方を提案している。鎌倉山納豆を展開する野呂食品(神奈川県鎌倉市)は、素材や製造方法にこだわり抜いた商品を高価格で販売。最安品の3倍近くの価格設定でも、高級ブランドとしての地位を確立させている。

このほかにも、現在の売り上げシェアを劇的に変化させるほどの商品とまではいかないものの、消費者の心を捉える新商品は続々と誕生している。

納豆はしょう油、味噌、豆腐とともに、日本の食文化を支えてきた大豆加工食品だ。長い歴史があるだけに、納豆づくりの文化や技術には各メーカーともこだわりを持つ。これからも消費者の購買意欲を刺激し、満足させてくれる商品を提供していくことが期待される。そのためにもまず、目の前の壁を乗り越えるべく業界が一丸となる時期がきているのかもしれない。金融不安、不況により厳しい淘汰の時代が到来する可能性も高いが、納豆が日本の食卓に求められている限り、不断の経営努力と魅力的な商品開発を継続させた企業は勝ち残るはずだ。


掲載日:2009年7月14日

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