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業界レポート
中古マンション・市場動向編

多くのヒット業態を発掘し、日本全国に拡大してきた(株)ベンチャー・リンクの研究開発部門「リンク総研」が、豊富な消費者アンケート調査をもとに市場のトレンドを読み解いていきます。今回は中古マンションに焦点を当て、その市場動向について解説します。(リンク総研主任研究員・磯崎恭子)

目次

市況は下落傾向 相次ぐ倒産報道

新興企業を中心に経営破綻が相次いでいる。特にアーバンコーポレイション(負債総額2558億円)やケイアール不動産(同1677億円)、六本木開発(同1340億円)、ゼファー(同949億円)など、巨額の負債を抱えて経営が行き詰まるケースが目立つ。サブプライム問題により不動産会社を取り巻く資金調達環境が悪化しているうえに、消費低迷傾向が鮮明で販売不振により不動産市況は低迷している。

環境変化の引き金となったのは、2007年6月に施行された改正建築基準法だ。耐震偽装の再発防止のため建築確認審査が厳しくなった影響などで、審査期間が長期化し、着工が遅れる物件が増加した結果、新設住宅着工戸数は大幅に減少した。なかでも分譲住宅の落ち込みが目立ち、特にマンションは激減している。

改正建築基準法の影響が一段落すれば、マンションの供給戸数は回復するものと見られていたが、供給戸数の大幅減とともに売れ行きも低迷しており、08年度に入っても新規供給が抑制される状況が続いている。

新設住宅着工戸数(分譲マンション)

住宅購入に対する意識・行動が変化した点

売れ行き不振要因の1つは価格上昇だ。新築マンション価格は05年後半から上昇しているが、その主要因は用地価格と鋼材など資材価格の高騰である。不動産経済研究所によると、07年の全国の新築マンションの平均発売価格は3813万円で、前年に比べて8.3%の上昇となった。かつて購入できる価格の上限は「年収の5倍」といわれていたが、すでに年間平均給与437万円(国税庁「民間給与実態統計調査」)の9倍弱となっている。景気の減速で賃金上昇が期待できないことから、消費者は高値物件には手を出せない。

07年の平均価格が年収の約5倍で収まる年収700万超は15%程度しかいない。所得が伸び悩む中での価格上昇は、新築マンションをますます消費者の手が届きにくくしているといえる。

ベンチャー・リンクが08年10月に実施した「住まいに関する消費者調査」でも、住宅購入に対する意識が変化した点として、「予算を抑える」(25%)、「景気や金利の状況や見通しをチェックする」(24%)、「購入する時期を遅らせる」(20%)などが上位に入る。不動産市況の変化を受けて、購入を慎重に考えるようになった消費者の様子が見てとれる。

新築低迷と対照的に5年間で15%の成長

そこで、見直され始めたのが中古マンションだ。割高な新築マンションの販売が低迷しているのとは対照的に、中古マンション市場は堅調に推移している。不動産流通近代化センターによると、08年4〜9月の中古マンションの売買件数は首都圏と近畿圏の合計が1万9792件で、前年同期より5.8%増加した。この5年間で市場は15%も成長した計算だ。

中古マンションの売買が増えている最大要因は、新築との価格差にある。07年の首都圏の新築マンションは平均発売価格が4644万円だった(不動産経済研究所調べ)。一方、中古の成約価格は東日本不動産流通機構によると、築浅(築0.5年)の物件でも、4158万円と新築よりも1割安い。築10年を超えると新築の5割以下の水準で売買されている。最近は、中古マンションの人気が高まり売買価格が上昇しているが、それでも全体の平均で新築マンションの約6割から7割程度と値(万戸)頃感がある。

しかし、成約率が比較的高い築年数の浅い中古マンションのシェアは、年々、低下傾向にある。築年数が古いマンションは、好立地物件が多いが、建物の老朽化と設備の劣化が避けられない。加えて、当時の間取りは核家族を想定して作られたものが多く、1世帯ごとの居住人数が減り続けている現在のニーズとのミスマッチも、流通段階の課題といえる。

中古マンション売買件数推移

そのような中、最近増えているのが、中古マンション内の設備や建材を取り払ったうえで、新しい住戸として供給するリノベーションマンションである。リノベーションマンションでは、間取りや水まわりの変更などを含む大規模な改修工事を施し、時代や居住者のライフスタイルに合わなくなった物件を初期性能以上に価値を向上させることで、前述の流通段階の課題解決を図っているのだ。

リノベーションマンションは中古より設備やプランが充実しており、消費者にとっては好立地にある物件を新築より安く手に入れることができるというメリットがある。一方、マンション事業者にとっても、中古より高い販売価格や賃貸価格を設定することができるというメリットがある。

政府の住宅政策も中古物件を後押し

政府の住宅政策を見ても、「新築重視からストック重視へ」の流れがここにきて一段と鮮明となっている。住宅品質を客観的に判断することを目的に、00年に新築物件に導入された住宅性能表示制度が02年に中古住宅にも拡大されたのを始め、05年度からは新耐震基準に適合することが証明された中古住宅について、築年数にかかわらず住宅ローン減税の適用が受けられるなど、政府の様々な取り組みが始まった。06年には住生活基本法が制定され、全住宅に占める中古住宅流通の割合を、03年の13%から15年には23%まで高めたいとしている。

このように政策面からも中古住宅市場の整備・拡充に向けた取り組みが進められており、今後の中古住宅市場の活性化が期待される。

近年の主な住宅政策

割安な価格のほか好立地条件も魅力

中古マンションの中には、古くても管理状態がよく、良好な立地にある物件も数多く存在する。1981年の新耐震基準の設定や、95年の阪神淡路大震災を経て、建物の耐震性・耐久性は上がっている。こうした中古物件をうまく活用すれば、所得の問題からマンション購入に踏み切れなかった顧客層を活性化させ、不動産市場の活性化が期待できる。加えて、特に首都圏では新たなマンション用地が減ってきており、希望する立地に新築物件の建築予定がないというケースも今後は増えるであろう。そのため、価格の割安感からだけでなく、立地という面からも中古住宅には今後、人気が集まると予想される。

マンションの供給状況

日本人は新築志向が強いといわれてきたが、最近は中古車、古本、中古パソコンなどの中古市場が拡大し、消費者の動向や意識にも変化が表われている。従来は、一般に中古住宅の購入者は、建物や設備に隠れた欠陥を含んだリスクを想定せざるを得なかった。今後、購入者のこうした潜在的な不安感を取り除いていくことができれば、中古マンションは有望なビジネスになっていくだろう。


掲載日:2009年4月 7日

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