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業界レポート
高級路線と低価格の両面で団塊世代を中心にアピール

現在の会員制リゾートクラブの市場規模は2500億円ほどといわれ、社会経済生産性本部の『レジャー白書2008』によれば、会員制リゾートクラブの売上高は、07年で前年比15%増と急伸している。

目次

従来はなかった都心型や週単位タイプなどが登場

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会員制リゾートクラブとは、運営会社に預託金を支払い、建物の共有持分の所有権とともに会員権を得て、格安料金でホテルなどを利用できるサービスだ。不動産神話に浮かれたバブル期までは、会員権が投機対象にもなり、実需以上に価格が高騰した。

だが、バブル崩壊の余波を受けて運営会社が倒産し、高額な会員権が一瞬にして紙くず同然になるなど、問題が相次いで業界全体に風評被害が及んだ時期もある。その苦しい期間を経たことで業界再編が進み、バブル崩壊の混乱が収束してきた2000年頃から市場は持ち直して順調に復活してきた。

08年、東京・台場にリゾートトラスト(名古屋市)の新しい会員制リゾートホテル「東京ベイコート倶楽部ホテル&スパリゾート」が誕生した。米ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルやクライスラー・ビルなどで知られるニューヨーク・アールデコのデザインで統一され、地上27階、約2300平米の巨大スパエリア(温浴施設)や高さ100mの夜景が楽しめるバーなど、豪華を極めている。通常、会員制リゾートクラブが運営するホテルはリゾート地の立地が多いため、リゾートトラストの都心進出は業界に大きな衝撃を与え、その成否が注目されている。年間に12泊または24泊の利用で会員権販売価格は約700万〜4000万円と、業界の中でも最高クラスの価格設定だが、資産に余裕のある「リッチシニア層」に好評だという。

対照的に、買い求めやすい価格で会員権を販売しているのが、東京急行電鉄(東急、東京都渋谷区)の「ビッグウィーク」だ。リゾートホテルの1室を1週間単位で宿泊できるタイムシェアシステムを導入。オンシーズンとオフシーズンとで販売価格が異なり、10年利用で35万〜260万円という価格設定で、富裕層でなくても手が届く。ホテル内にレストランがなく、温泉など付帯施設も少ないという側面もあるが、長期休暇で家族そろっての利用を想定し、客室は6人までの宿泊が可能な広さを確保するなど、リゾートホテルとしての条件は十分に整っている。

会員制リゾートホテルは元々、富裕層向けの余暇ビジネスであり、かつては金持ちのステータスシンボルとして脚光を浴びていたが、バブル崩壊とともに路線変更して、新たな顧客層の掘り起こしが加速している。

レジャーと健康維持を兼ね備え新規客を狙う

「活況を取り戻した一因は、新市場の開拓にある」と『月刊レジャー産業資料』編集部主査の山崎博氏は話す。
 「より低価格でサービスを提供するクラブが現われるなど、業界では新たな動きが出ています。商品の特性からいっても、対象は資産にも時間にも余裕のあるシニア層が中心であることに違いはないのですが、シニア層に入りつつある団塊世代は、個々の趣味嗜好が多様なことでも知られています」。このため、従来と同じように、会員権を持つことで得られる満足感だけでは、多様なライフスタイルを持つ団塊世代を取り込めない。そこで、業界各社はさまざまな仕掛けや取り組みに余念がない。

その1つが、付帯施設の充実だ。これまで、リゾートといえば、ゆったりとした時間を過ごす場所とのイメージがあったが、休暇中にレジャースポーツなどを積極的に楽しむ「アクティブシニア層」が増加してきたためだ。各企業は用地買収や提携などによりゴルフやスキーなどのアクティビティー(リゾート地での活動)を拡充させている。なかには、昨今のブームを反映してペット同伴を認めているホテルもあり、愛犬を自由に走らせることができるドッグランスペースを設けているところもある。

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70年に事業を開始した老舗のダイヤモンドソサエティ(大阪市)も、アクティビティーに力を入れている。特にクラブイベントを精力的に開催しており、200人以上を集めるゴルフコンペなどが好評だ。会員限定のほかに、非会員を招くこともあるなど、各施設でさまざまなイベントを催している。
 「イベントで来館していただき、当ホテルがわが家のようにくつろげる場所であることを理解していただきたいのです」とダイヤモンドソサエティ秘書室の兵頭孝信氏は話す。なお、会員権購入の主なきっかけは「利用者からの紹介」というデータがあり、こうしたイベントは顧客満足度の向上だけでなく、新規顧客の獲得にも貢献している。

ほかに変わったところでは、リゾートトラストの「グランドハイメディック倶楽部」が挙げられる。最先端の検診技術を備えた優秀な医療スタッフによる予防検診を受けられる会員制サービスを山中湖、大阪、東大病院の3施設で展開しており、山中湖ではリゾートホテルを満喫しながら高精度の検診を受けられる。健康が気になり始める年代であるリゾート業界の主顧客の要望に応えたサービスだ。

気楽に利用できるポイントシステム

バブル崩壊後に急増したのが、会員権が1口で100万〜500万円程度の低価格帯リゾートクラブだ。自前の施設にこだわらず、提携ホテルの利用や既存ホテルの買収などによりコストを徹底的に削減。富裕層以外の顧客の取り込みに成功した。国産の標準的な自動車を購入するほどの費用で、リゾートクラブの会員権を手にできることが功を奏した。

代表例として冒頭で示した東急のほか、ポイントシステムという新しい手法を取り入れたサンダンス・リゾート(東京都新宿区)が挙げられる。宿泊利用ごとに手持ちポイントを使っていくシステムで、使い切れなかった分は翌年に持ち越せる。ポイントは繁閑の差や場所によって異なるが、2年目以降(70ポイントの場合)では、5万2500円で最大約10泊まで宿泊できる。サンダンス・リゾートは国内だけでなく世界13カ国76カ所と施設数を豊富にそろえているのも魅力で、明朗な料金システムと併せて、人気が高まっている。
 これら低価格志向のクラブに共通しているのは、会員権の高級感を維持しながら低価格を実現している点だ。あくまで費用対効果に優れた価格帯がポイントとなっている。

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ただ、気がかりな動きもある。ここへきていくつかの企業が倒産していることだ。廉価の既存ホテルを買収してリニューアルすることで低価格での販売を進めていたセラヴィリゾート泉郷(東京都豊島区)が08年5月に会社更生法適用を申請、数多くのメディア露出で知名度もあったパルアクティブ(東京都新宿区)も同年同月に民事再生法適用を申請した。前者は会員制リゾートクラブとは別の事業の焦げ付きが、後者は施設買収にともなう借入金や過大な広告宣伝費などが重荷となったことが原因とされる。成長市場とはいえ、戦略的な経営が求められていることを認識させられる出来事である。

さらなる高級化を加速させる動きも

一方、さらなる高級化への動きも加速している。「エクシブ」シリーズを展開するリゾートトラストと、「ハーヴェストクラブ」の東急不動産(東京都渋谷区)だ。両社は業界2強であり、従来通り、高級さを求める富裕層の関心をがっちり握っている。この2強も、新顧客層の開拓に力を入れている。

東急不動産はこれまでも、一部屋当たりの販売口数を10口に限定して予約を取りやすくしたり、独自の会員権買い取り制度を導入したりして、高級感とともに安心感のあるサービスを展開してきた。さらに不動産の総合開発業者としての強みを生かし、用地開発力や施設運営力の高さを訴求している。08年には、「ハーヴェストクラブ」よりもハイグレードとなる新ブランド「ヴィアラ」第1号店を箱根に開業。販売価格は高くなるが、客室の広さ、専用ラウンジなど、設備を充実させている。

「クラブ選択の条件に、家族全員で楽しめるようなアクティビティーに注目する人もいますが、宿泊部屋の広さや家具のグレードなど、基本となる室内設備をさらに高めてほしいという人もいます。そのような、子供が独立して夫婦2人でゆっくりしたいというリッチシニア層にヴィアラシリーズを提供していきます」。東急不動産リゾート事業本部第一事業部販売企画グループの和田真理さんは説明する。特に既存会員の高齢化が進んだことで、買い替えや買い増しなど、さらなる高級化へのニーズが高まったという。加えて団塊世代の富裕層の新規獲得もにらんでいる。ヴィアラは、兵庫県の有馬で第2号店の開業が予定されており、今後も複数展開していく計画だ。

16年連続で業界首位のリゾートトラストも、さらなる高級化路線を進めている。「エクシブ」を基本に、ゴルフやマリンスポーツなどのアクティビティーを拡充させた多機能リゾート「グランドエクシブ」や、全室スーパースイートの「エクシブサンクチュアリ・ヴィラ」、高級感をさらに増したエクシブ「離宮」シリーズ、そして冒頭でも述べた都市型リゾートホテルの東京ベイコート倶楽部ホテル&スパリゾートと、新しいコンセプトで幅広いターゲットに訴求している。

「短期的にはサブプライム問題などによる景気減速が、当社のような余暇ビジネスにも影響を及ぼすでしょうが、団塊世代が60〜70代になるにつれて、中長期的にマーケットは拡大していくと考えております」(リゾートトラスト広報部)
 今後は、ホテル並みのサービスに加え、セキュリティーやメディカルサービスも充実した住居「シニアレジデンス」事業を展開していく予定という。

団塊世代の現役引退が進み、蓄えた財産が市場へと本格的に流れ出すのはこれからだ。経営者や個人事業家などの富裕層はもとより、資産の潤沢な団塊世代が年齢を重ねるにつれ、会員制リゾートクラブ業界のチャンスは広がっていく。事実上破綻した企業もあり、なおも予断は許さないものの、新マーケットの取り込みに成功した企業が、業界をリードしていくと見られる。

会員制リゾートクラブの各種形態

【権利形態】

 大きく共有制と預託金制に分かれる。
 共有制とは、1室の不動産所有権(土地分を含む)の共有持分を所有することで会員となる方式だ。固定資産税の負担が必要だが、運営会社が倒産しても不動産価値が手元に残る。
 預託金制とは、運営の原資となる預託金を運営会社に預けることで、施設を利用する権利を手に入れる方式である。預託金は退会時に返却されるが、運営会社が倒産すると会員権の価値はなくなる。
 それぞれ一長一短があり、各企業は施設によって使い分けていることもある。

【利用形態】

 多拠点型、多拠点ホーム指定型、単独拠点型などがある。
 多拠点型は、会員になるとクラブが所有する複数施設を特別な条件なしに利用できる。多拠点ホーム指定型は、特定施設の会員でありながら、一定条件付きでクラブが所有する他の施設も利用できる。単独拠点型は、会員となった特定施設のみを利用できる。現在では、多拠点ホーム指定型が半数以上を占めている。

【運営形態】

 チケット制、タイムシェア制、ポイント制などがある。
 チケット制は、毎年配布される一定枚数の利用チケットを使って利用する。タイムシェア制は、一年のうちで利用できる特定期間をあらかじめ決めて購入する仕組みで、該当期間は優先的に利用できる。ポイント制は、購入した年間ポイントの範囲内で、希望する期間に先着順で部屋を利用でき、予約変更にも柔軟に対応してくれるところが多い。


掲載日:2009年3月 3日

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