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業界レポート
お客様相談窓口から事業戦略拠点に進化

電話が発明されてから130年あまり。個人的なコミュニケーション手段にとどまらず、企業と顧客を結ぶ重要なツールとして重宝されてきた。その機能を最も効率的に活用しているのがコールセンターだ。これまでは顧客対応が主な役割だったコンタクトセンターが進化している。

目次

1企業専用のセンターで知識を蓄えて質を高める

現在は電話だけでなくファクスや電子メールの利用も含めてコンタクトセンターと呼ばれることが多い。これまでは顧客対応が主な役割だったコンタクトセンターが進化している。いまや、先進的な企業の間ではIT技術や様々な分析機能を備えた事業戦略拠点に位置づけられる。

相談やクレーム処理に終始した"コストセンター"から、経営に生かせる情報を収集してフィードバックして顧客満足度を高める"プロフィットセンター"への転身が求められている。

最大手の一角に位置する「もしもしホットライン」(東京都渋谷区)は、サービス向上の一環として、業界内でいち早く専任制を敷いた。専任制とは、コンタクトセンターのインフラ(通信情報施設)、人材ともに顧客企業の要望に沿って体制を構築する仕組みだ。

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日本でコンタクトセンターが誕生した1980年代には、「シェアード・コールセンター」が一般的だった。シェアードは、1人のオペレーター(電話応対係)が複数の企業の問い合わせを受け持つ形式だ。空いている回線に着信するため、稼働率がよく費用対効果が高い。一方、専任制は時間帯や曜日によって生じる繁閑差を埋めきれないことも多く、効率は落ちる。にもかかわらず専任制に踏み切った理由について、同社広報・IR室の和田謙司室長はこう話す。

「87年に創業した当社は、業界では後発組です。他社と同じ形式では差別化を図れないため専任制を採用しました。電話応対業務だけを見れば専任制は効率が劣りますが、顧客企業の知識が蓄積されるうえ、オペレーターは空いている時間を業務知識の習得に充てているので顧客満足度が高まるというメリットもあります。それが顧客企業からの評価につながります」

今では大手のほとんどが専任制を採り入れているが、早くからノウハウを蓄積した同社のサービス品質には定評がある。売上高660億4300万円(08年3月期)のうち、95%が継続業務であり、顧客企業の定着率が抜群であることが品質の高さを証明している。この定着率のよさから、売上高販管費率(売り上げに占める営業経費の割合)は7%と、業界最低水準を誇る。

「コンタクトセンターは、他社に乗り換えるとリスクが大きいといわれています。オペレーターやスパーバイザーのノウハウに頼る部分が大きいため、他社のコンタクトセンターに乗り換えると、サービス低下を招きかねないからです。1企業のコンタクトセンターを安定的に運用してきた当社は、継続すればするほどサービス力が高まることが最大の強みといえます」(和田室長)

同社は全国22都市34拠点でコールセンターを稼働させており、ニーズに応じて設置場所を選べるのも特徴だ。

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景気に左右されない半面 個別の対応力が問われる

コンタクトセンターの機能は大きく分けて消費者からの問い合わせや電話注文などを受けるインバウンドと、消費者に働きかけて販売促進などを図るアウトバウンドに分けられる。一般消費者が日常的に利用している「お客様相談窓口」はインバウンドの代表だ。

特定の商品やサービスを持たないテレマーケティング各社にとっては、インバウンドやアウトバウンドを通して顧客企業のニーズに合わせた「かゆい所に手のとどく対応」が腕の見せ所だ。

コンタクトセンターの動向に詳しい月刊『コンピューターテレフォニー』の矢島竜児編集長は、「電話業務の質だけでなく、コンタクトセンターの運営形態においても多様化するニーズに対応できるかどうかが勝負の分かれ目」と指摘したうえで、詳細をこう説明する。

「一般に企業がコンタクトセンターを立ち上げる場合、アウトソーシング(外部委託)にするか、自前で持つかという選択肢があります。現在、ニーズが高いのは、自前でインフラを整えて人材を供給してもらうパターンです。コンタクトセンターは業務の繁閑の差が2〜3倍あり、さらに人件費が総コストの7割を占める労働集約型のため、正社員でまかなうのは費用対効果が低いからです」

ニーズ対応への競争は激しくなると予想される一方、テレマーケティング業界は景気循環に左右されないという側面も持つ。企業にとっては、どんなに不景気でも顧客サービスを省略できないからだ。矢島編集長は「コンタクトセンターをアウトソーシングする方がコストを抑制できるので、むしろ不況の方が強いともいえる」と強調する。

08年度のテレマーケティング市場規模は、5200億円(予測値。矢野経済研究所調べ)と堅調に推移している。消費者に対して自社ホームページのFAQ(よくある質問集)で対応する企業も多いが、「ホームページやメールでの顧客対応を充実させるほど電話業務も増える」(矢島編集長)傾向にあり、今後も市場規模拡大が予想される。

スケールメリットを生かし新事業に取り組む系列企業

コンタクトセンターの一元管理システムで業務を効率化し、顧客企業のニーズに対応しているのがNTTソルコ(東京都港区)だ。東日本を中心に点在するコンタクトセンターをIP(インターネットを応用した通信技術)網で相互接続し、一元管理することができるという。そのメリットを同社経営企画部の上澤慎二広報室長はこう説明する。

「巨大なコンタクトセンターが1つできると想像してください。場所を選ばないので短期間で迅速にコンタクトセンターを開設できます。例えば、食の安全などにかかわる問題でセンターの立ち上げが必要になるなど、緊急の依頼にもすぐに対応できます」 一元管理することで、コンタクトセンターの品質が平準化され、質が高まることも期待できるという。

同社は、86年に前身のNTTテレマーケティングとして発足し、マイラインサービスの申し込みや問い合わせなどの対応業務を拡大。さらにNTT東日本における電話の新設・移転、各種サービスの受け付けや問い合わせに応じる116センターの運営で急成長している。上澤室長は強調する。
 「コンタクトセンターには、電話応対だけでなく高度な機能が求められています。当社はお客様のニーズに合わせ、最適なシステム構成を提示できます」

07年度の売上高は652億円。NTTグループの強みを発揮しつつ、グループ外の会社とのゆるやかな連携も視野に入れている。国際電話の取り次ぎや国番号案内を担う事業からスタートしたKDDIエボルバ(東京都新宿区)は、携帯電話の普及で弾みがついた。07年度売上高は360億9500万円とプラス成長を続けている。

現在、KDDIに関する業務が6割を占めるが、そのうち携帯電話のau関係が7割と高い。それだけ、通信に関する業務に精通している。
 「auの申し込みからクロージング(端末の配送手配)まで、派生する業務のすべてをトータルで請け負っています。つまり次の工程が分かるのでオペレーターがより効率的に案内できるというわけです。業務全体を知ることで、通信に関するオペレーターの知識も向上します」(同社運用統括本部の川根健一郎運用管理部長)

同社のコンタクトセンターは、専門性の高さを重視している。例えばインターネットへの接続方法が分からないといった問い合わせの場合、熟知したオペレーターが短時間で的確に対応できれば、ユーザーの満足度が高まる。そうすれば顧客企業の満足度も上がるというわけだ。

また、KDDIグループで培ったノウハウは、他企業でも生かされている。同社の経営基盤となった国際電話業務の知識は、現在、ホテルの交換業務で発揮され、最近進出している外資系ホテルや国内一流ホテルからのニーズに応えている。

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離職率を抑えて顧客対応を強化

どの業種でも顧客対応は必須であるため、「当面、テレマーケティング市場が衰退することはない」(『コンピューターテレフォニー』の矢島編集長)と見られているが、重要なのはビジネスチャンスを捉える資源とノウハウを持っているかどうかだ。そのためには「人材の確保と育成が必須」と各社とも口をそろえる。

都心部で数千〜数万人規模のオペレーターを確保するのは難しいため、地方で採用するケースも少なくない。それでも、「確保は難しい」(KDDIエボルバの川根部長)という。「えり好みできる状況ではありません。人材は選ぶ時代から育てる時代に移行しています」(矢島編集長)というのが現状だ。

さらに、熟練オペレーターの離職は大きな損失につながるため、離職率を抑える工夫も必要だ。トレーニングに加えて報酬などによる士気高揚、オペレーターが業務を行ないやすいような運営面の改善など、各社はつなぎとめ策に苦慮している。オペレーターをまとめるスーパーバイザーへのステップアップを明示する企業も少なくない。

人材の育成が、コンタクトセンターから「プロフィットセンター」に躍進するカギとなる。


掲載日:2009年1月27日

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