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業界レポート
こだわり婚で結婚式場の競争が激化

従来、挙式と披露宴の会場といえばホテルか専門式場、格式ばらないところではレストランと決まっていた。ここへきて新たなスタイルとしてゲストハウスでのハウスウエディングが登場し、急速にシェアを伸ばしている。

目次

専属プランナーが要望を聞いてカップル独自の挙式を企画立案

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ゲストハウスとは、ヨーロッパ貴族の邸宅のような施設のことで、美しい中庭を眺めながらの披露宴やガーデンパーティーなどが行なわれる。欧米の映画に出てくるような邸宅での挙式と披露宴を手がけて業績を拡大しているのが、テイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)、ベストブライダル、ラヴィスの3強だ。

T&G(東京都港区)は、1998年にレストラン提携型のハウスウエディング事業を開始し、01年に株式上場を果たした。03年からは年間十数店ペースで出店して全国に勢力を広げた。現在の会場数は88で、年間に1万〜1万2000組の結婚式を手がけるハウスウエディングの最大手に躍進している。

ハウスウエディングの人気上昇の理由を、同社の柳瀬光太郎社長室長は「時間と空間を独占し、招待客を自宅に招いたかのような特別な披露宴を演出できる点にある」と解説する。T&Gが事業を開始した当時、ホテルや専門式場のサービスは画一化し、似通ったスタイルが大勢を占めていた。そのなかにあって個々の顧客ニーズを探り、オーダーメード型の結婚式が可能な事業モデルにいち早く着手したことが、同社の発展につながった。
 独自の企画には定評があり、いまや披露宴の演出の定番となったバルーンリリース(招待客全員で風船を飛ばす)を始めたのも同社だ。

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ほかに、挙式と披露宴で撮影したビデオを即座に編集して会場に映し出し、披露宴の最後の場面では招待客の名前が映画のエンディングロールのように画面に流れるという演出も企画し評判を呼んでいる。

独自企画の発案ポイントについて、室長はこう説明する。「初めから、どんな演出をしたいかが決まっているカップルはあまりいません。担当者が話をしながら本人たちのこだわりを掘り起こすことが重要です」

結婚式で欠かせない衣装や料理、ケーキ、花などについて望みを聞き出して企画を立てるウエディングプランナーが、"一顧客一担当者制"で相談に乗り満足度を高めている。

挙式費用は5年連続増加首都圏で平均338万円

「こだわり」はブライダル業界のキーワードになりつつある。リクルートの結婚情報誌『ゼクシィ』が毎年行なっている「結婚トレンド調査」によると、挙式と披露宴にかけた費用は首都圏で平均338万円。
 02年以降、5年間で83万7000円増加している。この傾向を同誌首都圏版の武市麗子編集長は、「"ジミ婚"ブームが終わったことだけが理由ではない」と分析する。「自分たちはこうしたい」というこだわりが、衣装や花、料理、引出物などの単価アップにつながっているという。

さらに、最近の新郎新婦のニーズには、「4つの『たい』が密接に関係している」と武市編集長は付け加える。「『招待客とつながりたい』『自分も楽しみたい』『いくつもこだわりたい』『じっくり準備したい』という気持ちです。これらを満たすことで画一的な結婚式ではなく自分がり、結果的に結婚費用が増加していると思われます」

厚生労働省の「人口動態統計月報年計」によると、07年の婚姻件数は約72万組。01年に79万組まで回復したが、その後は全般的に減少傾向へと転じている。婚姻件数が減るなか、結婚費用が増加基調にあるのはブライダル業界にとって救いの種だ。

挙式、披露宴・披露パーティーの費用総額

ゲストハウスの人気上昇にホテルや専門式場が危機感

ラヴィス(横浜市都筑区)は12店舗を展開し、「アニヴェルセル表参道」「ウエディングビレッジ」「パルティーレ迎賓館」の3つのブランドをもっている。複数のバンケットルーム(宴会場)があり、顧客が「こだわり」に合わせて選べる。

ハウスウエディングの人気が高まるにつれ、同業他社との競争が激化しているが、同社経営企画部の金井樹敬課長はホテルや専門式場との競合を強く意識している。「最近は、ホテルや専門式場も敷地内に独立型チャペルを造ったり、料理コースの選択肢を増やしたりと、ゲストハウスのよさを取り入れ始めているので、さらに顧客満足度を高めていきたいと考えています」

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同社は08年4月からAOKIホールディングスの完全子会社となり、AOKIのブライダル部門を担うことになった。店舗サービスの強化により、地域で最も選ばれる式場になることを目標とする。
 業界の動向に詳しい矢野経済研究所生活産業調査本部の長谷川恵美上級研究員は、ゲストハウスがホテルや専門式場に与えた影響をこう分析する。

「ここ6、7年でゲストハウスの認知が高まり、その勢力拡大が業界に危機感を与え、全体のレベルアップにつながったと見ています。画一的なサービスを提供してきたブライダル業に一石を投じ市場を活性化させたハウスウエディングの功績は大きいでしょう」

また、外資系ホテルの日本オープンが相次いでいるが、世界的に知名度の高いホテルの人気は根強い。
 「既存のホテルも、スイートルームの宿泊プランを加えたり、庭園を利用したハウスウエディングのような会場を設けたりと、ウエディング事業へのテコ入れを始めました。料理にしても、年配の招待客にはフランス料理ではなく和食を用意するなど、ニーズに合わせて工夫を凝らしています」(長谷川上級研究員)専門式場については挙式施設を改装し、演出に力を入れる傾向が見られるという。同研究所によると、2007年の挙式・披露宴・披露パーティー市場は推計1兆4600億円。
 結婚情報サービス、ジュエリー、旅行、家具などの関連ビジネスを加えると約2兆7700億円に上ると見られる。

列席者数や同伴率の増加が顧客単価アップにつながる

少子化が進むなか、今後も婚姻数が劇的に増加する見込みはない。だからこそ、個々の結婚式の費用増加に期待がかかる。長谷川上級研究員も「顧客単価のアップを誘引する仕組みづくりに、各社とも注力している」と見る。

代表的なのが、ハウスウエディングからホテル経営に乗り出したケースだ。全国16店舗のゲストハウスを運営するベストブライダル(東京都渋谷区)で、07年にウエディングを主体とするサーウィンストンホテルを名古屋市で開業した。宿泊費用込みとすることで単価アップを図る。
 婚礼客と一般客の出入り口を別にするなどの配慮により、ホテルでありながらゲストハウスの貸し切り感覚も得られることでブライダル顧客を呼び込む。

一方、列席者増でパーティー需要が高まる海外・国内リゾートウエディングも注目される。シェア1位のワタベウェディング(京都市下京区)は73年にハワイに進出した老舗だが、列席人数や同伴率の増加傾向が顧客単価上昇につながっている。「73年当時の海外ウエディングは2人だけの挙式が多かったのですが、今は両親や友人も一緒に渡航するケースが多いです。旅行代金が安くなったこともありますが、海外で結婚式を挙げたい、しかも大切な人をもてなしたいという新郎新婦のこだわりの表れだと見ています」(販売促進部広報グループ・中山結花さん)

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同社は現在、海外19カ所に直営店があり、海外ウエディングの取り扱い組数は年間1万7066組(08年3月期)。平均同席者数はハワイやグアムで10人程度に上る。01年のアメリカ同時多発テロ以降は国内のリゾートウエディングにも力を入れ、一番人気の沖縄での取り扱い数は3133組(08年3月期)に達している。また、目黒雅叙園(東京都目黒区)を傘下におさめたほか、「京都和婚」と名づけて上賀茂神社、清水寺などでの伝統的な挙式スタイルを提案するなど、国内ウエディングでも精力的な動きを見せる。

さらに、同社は将来的な日本の挙式・披露宴市場の縮小を見越し、中国市場における現地カップルへのサービスを強化した。97年に上海で写真事業からスタートした「薇蒔(ウィズ)」ブランドの新展開である。

「写真事業は豪華なアルバムを作って盛大な披露宴を開く中国流の婚礼スタイルに着目してスタートし、現在では挙式ビジネスも手がけています。富裕層を中心に、日本企業ならではのきめ細かなサービスが好評で成功しています。このほど新設したのは、より大きな市場である中流層に向けたブライダルショップ。新ブランドで中国本土での多店舗展開を狙います」(中山さん)

今後は世界各国の直営拠点を生かし、日本から海外への送客だけでなく、海外から日本、海外から海外へとグローバル展開に力を入れたいとしている。

業界全般として施設、サービスを充実させて顧客獲得を図っているが、満足度を高めるポイントとして各社が口をそろえるのが有能なウエディングプランナーの確保だ。『ゼクシィ』の武市編集長も「挙式ビジネスのカギになるのはプランナーの対応力。話をしっかり聞き、そのうえで何ができるかを探り出せる人材が、顧客に求められている」と言う。

各社ともプランナーの教育に力を入れているほか、「社会経験を重視して30代のプランナーを採用するケースも増えている」(矢野経済研究所・長谷川上級研究員)挙式・披露宴という夢と希望にあふれた人生のセレモニーを盛り上げるためには、現実的な提案力と実行力が求められる。優秀な人材の争奪戦も含めて、競争がますます激化しそうだ。


掲載日:2008年11月11日

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