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業界レポート
旅館業・外国人市場展望編
この連載は、多くのヒット業態を発掘し、日本全国に拡大してきた(株)ベンチャー・リンクの研究開発部門「リンク総研」が、豊富な消費者アンケート調査をもとに、消費者視点で市場のトレンドを読み解いていきます。今回は旅館業に焦点を当て、新たなターゲットとして注目される外国人旅行者の動向について解説します。(リンク総研主任研究員・荒木覚)


街中を歩いていると外国人の多さが目に付くことを感じたことはないだろうか?現在、海外から日本を訪れる外国人は増加傾向にある。宿泊業にとってこうした旅行客を受け入れることは差別化戦略の1つとして有効であろう。今回は訪日外国人旅行者の市場を考察していきたい。

目次

国内旅行が冷え込み旅館の減少が著しい

国土交通省がまとめた平成19(2007)年観光白書によると、宿泊費やパック旅行など国内旅行関連の1世帯当たり年間支出額は前年に比べて減少した。2006年度における国民1人当たりの国内宿泊観光旅行回数は1.73回、宿泊日数は2.77日、旅行関連消費額は12万4238円である。旅行回数と宿泊数はほぼ横ばいだが、旅行関連消費額は前年より6%減となった。

旅行関連消費金額推移

旅館・ホテル数推移

このように国内旅行関連の支出額が伸び悩むなか、特に旅館が打撃を受けて軒数が大きく減少している。05年度には5万5567軒で85万71室と、10年前の1995年から1万5989軒・15万1581室もの大幅減となった。一方、ホテルの客室数は増加傾向にあり、05年度は8990軒・69万8378室で、10年間に1816軒・16万977室の増加だ。

旅館・ホテルなど宿泊施設は典型的な装置・設備産業であるため、客室の稼働率を向上させることが最も重要な経営ポイントといえる。しかしながら、旅館の稼働率は40%にも満たない状況である。今後も、団体旅行の回復は期待できず、引き続き夫婦や家族、友人・知人による小グループ単位の旅行、50〜60代の女性などを中心とした小グループが主体となることが予想される。一方で、団塊世代の退職により旅行ニーズが拡大し宿泊市場の伸びを期待する見方もあるが、景気の先行きが不透明なことを考えれば需要増に過度な期待をできないのが現状だ。

また長期的に見ると国内人口の減少は避けられず、国内旅行市場は縮小を余儀なくされるだろう。このような状況の中で新たなマーケットとして注目されているのが急増している訪日外国人旅行者である。

旅館・ホテルの定員稼働率推移

訪日外国人旅行者数推移

訪日外国人観光客数は過去最高の更新が続く

国際観光振興機構(JNTO)がまとめた「訪日外客実態調査」によると、07年に日本を訪れた訪日外国人数は前年比13.8%増の834万7000人だった。特に、韓国、台湾、中国などアジア諸国の伸びが目立つ。団体ツアーに参加することが受け入れ条件だった中国人観光客については、家族旅行程度の小グループでの旅行についてもビザ(入国査証)が発給されることになったため、今後の伸びが期待される。さらにアジア以外ではユーロ高などを受けて欧州、特にミシュランを発行するフランスからの訪日客の増加が目立つ。このような訪日外国人増加の背景には国の後押しも大きい。

具体的には、政府が03年から始めた「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の成果が挙げられる。同キャンペーンで、海外旅行に行く日本人が訪日外国人旅行客の3倍という国際観光収支の不均衡を改善しようと、国を挙げて観光地としての日本を世界各国にアピールしてきた。これにアジア諸国の富裕層増化や円安傾向なども拍車をかけ、外国人旅行客が順調に増加中で、同キャンペーンが目標とする「2010年までに訪日外国人数1000万人」は射程範囲内に入っている。

訪日外国人が国内で消費する額は決して小さくない。国土交通省の推計によると05年の訪日外国人の国内消費額は年間1兆7000億円で、10年には2兆4811億円にまで達すると推計されている。

訪日外国人旅行者内訳(国別)

外国人旅行者の増加は旅館業にも絶好の商機

外国人旅行客の市場拡大を背景に、旅館側も外国人を受け入れようと様々な工夫を凝らす。例えば、小規模旅館で構成する「ジャパニーズ・イン・グループ」は積極的に外国人個人客の受け入れを図っている。ここに加盟している熊ケ井旅館(盛岡市)は宿泊客の多くが外国人だ。外国人を受け入れるといっても、看板には英語を表記してあるものの、館内は畳の部屋のままで特別なことはしていない。和風旅館ならではの居心地の良さを外国から来る客に紹介し日本文化を伝える。こうした旅館が、「日本らしさ」の体験を目的に来日する外国人の心をつかんでいる。

旅館業者は外国人旅行客を新たな顧客層として取り込むことを考えるのであれば、自分の町にどのような外国人が訪れているのかを調べてみるべきだろう。

訪日外国人旅行の消費額


掲載日:2008年10月14日

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