トップページ  >  起業する  >  コラム・インタビュー  >  業界レポート  >  複合カフェ業界

業界レポート
複合カフェ業界
サービス充実で女性層も利用
曲がり角にさしかかり新規顧客の獲得が課題
20080909_001.png

目次

男性客はマンガやネット女性客は友達と遊ぶため

学生街として知られる東京・高田馬場。駅に隣接する大型商業ビル「ビッグボックス」に2007年10月、570坪もの広さがある都内最大級の複合カフェ「スペースクリエイト自遊空間」が開店した。リクライニングチェア、小上がりマット席、2人がけソファなど総座席数は466席。ネットカフェエリアの一般席なら1時間500円で、5万冊のマンガ、インターネット、ダーツ、ビリヤードなどを自由に楽しめ、多種類のソフトドリンクが飲み放題となっている。ほかにカラオケルームが27室、シャワー室もあり、24時間営業だ。複合カフェとは、大まかに言えば、コーヒーやジュースなどのソフトドリンクとともに、漫画本や雑誌の閲覧、インターネットの利用などを提供する時間消費型レジャー施設だ。

滞在時間および時間帯に応じて客が料金を支払う仕組みで、基本的に1時間の定額料金が設定され、別料金を要する一部サービスや商品を除き、各種サービスを自由に利用して時間を過ごすことができる。昼間の3時間パックや深夜から早朝までのナイトパックなど、割安のパック料金を設けている場合も多い。店内の座席は間仕切りによってまわりの客の視線が気にならない個室感覚で利用でき、マンガやネットで暇をつぶす個人の若い男性客が主流だったが、最近では客層を広げつつある。

「自遊空間」は平日でも利用客であふれ、女性の姿が目立つ。これまで女性から敬遠される理由となっていた「薄暗く、清潔感がなく、不安」のイメージを払拭し、「明るく、きれいで開放的な空間づくり」を進めた成果だ。仕事の合間に1人でマンガを読んでいる女性もいれば、ダーツを和気あいあいと楽しむ女性グループもいる。

「この店舗に弊社が目指すすべてが詰まっている」と胸を張るのは、「自遊空間」を経営するランシステム(東京都豊島区)の田中千一社長だ。同社は複合カフェのパイオニアを自任し、直営店とフランチャイズ(FC)店を合わせて全国に182店舗(07年12月31日現在)を展開している。会員登録の手続き、入退場から精算までを完全自動化したシステムと設備一式は、自社開発によるものだ。利用者がわずらわしく感じる手続きを簡易にしたことも女性客の増加につながり、会員数は700万人に達した。

「ここまで自社開発が可能な同業他社はないでしょう。だからこそ、弊社は市場ニーズの目まぐるしい変化にいち早く対応できるのです」(田中社長)

20080909_002.png

「ネットカフェ難民」によるイメージ低下の改善が課題

新規顧客の開拓を積極的に進めているのは、他社も同様だ。01年頃に誕生し急激に市場を拡大した複合カフェ業界も、客数が伸び悩み、曲がり角を迎えている。

複合カフェの原型は、70年代に誕生したマンガ喫茶にある。名古屋の喫茶店業界で飲み物と軽い朝食セットのモーニングサービスを提供し利益率の向上を図る「モーニング戦争」が起き、付加価値としてマンガの蔵書を増やした店が登場したのが発端だ。その後、飲食よりもマンガに比重を置く店が現れて成功し全国に広まった。さらに90年代後半、インターネットに接続したパソコンが利用できるインターネットカフェが誕生。いずれも時間消費型ビジネスであることから、両者を統合し、さらに多くの遊戯サービスを加えた複合カフェが生まれた。

「市場はまだ拡大の余地があると思いますが、近年は足踏み状態に陥っているようです」と分析するのは、富士経済東京マーケティング本部(東京都中央区)の上田周作主任だ。店舗数はまだ増加傾向にあるが、人口密集地域への出店が一巡したほか、サービスの多角化により初期投資額が増大し出店コストが高まったのが理由という。加えて、「ネットカフェ難民」という言葉が流行語大賞候補になるほど広まったことも、業界に打撃を与えたと上田主任は指摘する。家賃の不払いや家出などで住居がなく、昼間は日雇いの派遣アルバイトとして働き、夜はネットカフェで過ごす若者たちが「ネットカフェ難民」と呼ばれるようになり、業界のイメージが低下した。

このマイナスイメージを塗り替えて利用客数を増やそうという動きが顕在化してきた。現状の複合カフェは、やはりマンガとインターネットがサービスの柱で、20〜30代の男性客が最も多い。そこで、女性客の取り込みや中高年の男性や女性に訴求する新しいサービスも出てくるなど、大手各社の間で激しい競争が繰り広げられている。

20080909_003.png

団塊世代や家族連れも来る地域密着型サービスを展開

業界大手のヴァリック(神奈川県横浜市)は、女性に照準を定め、様々な仕掛けを用意している。紳士服のアオキインターナショナルが親会社の同社は、元々は遊休地の有効利用のために設立された。カラオケ事業も手がけ、複合カフェ事業と合わせて事業の両輪とし、ともに全国展開している。

同社が運営する複合カフェ「快活CLUB」は、世界のリゾート地として人気のインドネシア・バリ島をテーマに、心身ともにくつろげるオアシスという路線を打ち出し、女性客を呼び込んでいる。親会社の紳士服店と同様に、郊外の幹線道路沿いに出店しマイカーでの利用を前提としているのも大きな特徴だ。また、複合カフェならではの経営ノウハウを磨くため、全店直営としているのも独自路線。

04年からは時間料金制で利用できる運動施設「快活フィットネスCLUB」を展開、「快活CLUB」に併設するなどして他社との差異性を高めている。温かい岩の上に横たわって大量の発汗を促す岩盤浴を利用できる店舗もあり、今後もくつろぎの時間を提供することで女性客の取り込みを図る方針だ。さらに同社は、団塊世代も視野に入れている。

「『快活CLUB』の60代以上の利用者率は3%程度しかありません。弊社のカラオケ店では6%程度ですから、まだまだ訴求できると考えています。郊外幹線道路沿いの出店なので、何度も利用してもらえる地域密着型サービスを確立し、地元の幅広い年代から愛される店づくりを目指しています」(横井雄一副社長)ヴァリックは特定地域への集中出店により、その商圏内での顧客独占を狙う戦略をとっている。これは中堅のサイバック(福岡県福岡市)も同じだ。九州と関東郊外へ積極的に出店し、07年からはFC加盟店の募集にも本格的に乗り出した。

同社はオンラインゲーム(インターネットを介して複数の人が行なうゲーム)に強みを持ち、複合カフェの中心顧客層である20代男性をがっちり囲い込んだうえで、顧客層の拡大を図る。複合カフェにおけるネット利用者の多くは、オンラインゲームを楽しむ。これらの顧客に向けて、ゲームメーカーと共同での独自イベントの開催や、発売前のゲームの事前体験会などで興味を引き付ける。「ゲーム利用者は1人で来店して楽しむスタイルが一般的ですが、イベントの企画などによって仲間と一緒に来てみんなで楽しむという遊び方を提案し、他社にはない付加価値を付けています」と同社経営企画室の海津桐子マーケティングマネージャーは話す。加えて、同社はエステティックサービスにより女性層を、マッサージブースを設けることで中高年を、それぞれ呼び込んでいるほか、家族連れでの来店も狙った業態の開発を加速している。

一方、アプレシオ(東京都港区)は、意欲的に新規サービスを推し進めてきた。働く女性や男性をターゲットに、東京の銀座店や大阪の関西国際空港内ラウンジなど、これまで複合カフェが見られなかった地域へ積極的に出店している。女性向けには炭盤浴やゲルマニウム入りの温かい湯に手足を浸して発汗と血行促進を図るゲルマニウム温浴などを取り入れ、女性ファッション誌や飲食メニューなども充実させた。おしゃれと流行に敏感な女性が好む店構えにこだわり、ホテル並みのサービスの質を追求しているのも特徴だ。男性向けにはビジネス誌をとろえているほか、『会社四季報』や株のネット取り引きに最適なパソコンも導入している。

20080909_004.png

シャワー室の利用ニーズは男性よりも女性の方が高い

各社ともあの手この手で新規顧客の獲得を図っているが、なかなか軌道に乗らないのが現状だ。炭盤浴の導入で話題を集めたアプレシオも、宣伝効果は上がったが、まだ収支面では満足できる結果を得ていない。

同社経営企画部の林宏一部長が事情を説明する。「新たな利用者の需要をつかみ、それを喚起するのはやはり難しい。例えば、店舗のシャワー室を利用するのは基本的に男性だけだと考えていましたが、そうではありませんでした。『男性が使ったあとは嫌だ』という女性の意見を取り入れて女性専用シャワー室を設けたところ、女性客の利用が圧倒的に増えています」

新規顧客の求めるサービスは、出店地域によっても異なり、新たな需要にきめ細かく応えるのは容易ではない。だが、徹底したマーケティング戦略や新規サービス提供への挑戦をしていくことが、他社よりも抜きん出る唯一の方策だろう。

複合カフェとは、マンガ喫茶とインターネットカフェを豪快に複合させてしまったように、どのようなサービスをも取り込んでしまおうという柔軟さや貪欲さ、また大雑把な考えが根底にある。時間消費型サービスになり得たエステサロンやスパ施設を取り入れて女性客を招き込んだのも、その一例だろう。市場は成長し続けているが、店舗数の増加はやがて値下げ競争を引き起こしかねない。利益率を維持し、店舗の独自性を出していくためには、これからも新たなサービスを模索していく必要がある。誰も思いつかなかったサービスを発見した者に巨万の富が約束されるという可能性が秘められており、それはまさに、現代の宝探しといえるかもしれない。


掲載日:2008年9月 9日

  • googleplus
  • hatena
  • pocket
  • line
  • evernote
Copyright © WizBiz Inc.
このコンテンツの著作権は、WizBiz株式会社に帰属します。著作権の承諾なしに、無断で転用することはできません。
このページの先頭へ
起業するコンテンツ一覧
  • 事業計画作りや実際の起業準備そして開業まで。起業を目指す人の『こんな時どうする?』に応えます。

  • 法律知識や経営診断など、起業準備段階はもちろん、実際に起業・開業してからも使える豊富な情報を掲載。

  • 『国の補助金を活用して創業するには?』についてご説明します。

  • 中小企業や個人投資家にとってのメリットを、その仕組みや優遇措置について詳しくご紹介します。

  • 起業・開業を考えている職種の消費者利用動向がすぐにわかる、職種別データ一覧。

  • 200以上の業種・職種から選べる開業準備手引き書。

  • 最新のビジネストレンドや中小企業が直面する経営課題など、読み物コンテンツをまとめています。

  • 若手起業家にインタビュ—。「社会人起業」と「学生起業」それぞれの選択を対比しながら起業のカタチを探ります。