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業界レポート
学習塾マーケット

この連載は、多くのヒット業態を発掘し、日本全国に拡大してきた(株)ベンチャー・リンクの研究開発部門「リンク総研」が、豊富な消費者アンケート調査をもとに、消費者視点で市場のトレンドを読み解いていきます。今回は学習塾に焦点を当て、その市場動向について解説します。(リンク総研主任研究員・磯崎恭子)

目次

2030年には14歳以下が全人口の1割未満に減少

近年、少子化の進展やゆとり教育の推進などに代表されるように、学習塾業界を取り巻く環境は大きく変化している。塾業界がターゲットとする子どもの数は、1980年頃をピークに減少傾向を続けている。総務省の推計によると、2007年10月1日時点の日本の子ども(14歳以下)の数は、前年より7万人少ない1,740万人で、総人口に占める子どもの割合は13.6%と過去最低を更新した。

今後の子どもの数についても、状況はさらに厳しく、02年1月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した将来推計人口によると、30年の子どもの数は総人口の11.3%まで低下する見込みとしていたが、06年12月に新たに推計された結果では、30年に9.7%まで低下と大幅に下方修正された。

近年の非婚化や晩婚化などを考慮すると、この先、子どもの数が急激に増えることは考えにくく、教育市場の主な対象となる子どもの数は、今後もさらに減少していくと予想される。

子供の数および総人数に占める割合の推移

96年に1兆円を超えるも縮小傾向にある市場規模

民間市場調査会社の矢野経済研究所のまとめによると、学習塾・予備校の市場は96年には1兆円を超える規模となっていたが、少子化という大きな流れの中で、02年以降、縮小傾向が続いている。

02年度から実施された「新学習指導要領」が学力の低下を招くのではないかという懸念から、子どもを学習塾に通わせる家庭が増えたこと(通塾率の増加)や、以前から塾に通っていた家庭も塾に支払う費用を増やしたこと(1人当たりの教育費の増加)、さらには公教育への不安の高まりから有名私立中学校の受験熱が増していることなど、プラス要因はあるものの、少子化による子どもの数の減少という大きな流れを打ち消すまでの力とはなっていない。

01年、02年と市場が上向いたにもかかわらず、再び減少傾向となってしまっているのは、マイナス要因がプラス要因よりも大きくなっていることに起因している。 今後、子どもの人口はますます減っていく見込みであり、「ゆとり教育」についても方針変更により学校での指導が充実していくことが見込まれるなど、塾を取り巻く市場環境は厳しいと言わざるを得ない。これまでプラス要因となっていた通塾率の伸びも、すでに公立中学校では低下し始めており、少子化と相まって中学生を中心に塾に通う生徒数は減少し始めている。

学習塾・予備校市場規模推移

塾生徒数推移

競争が過熱する中で個別指導が需要拡大

このように、市場規模が縮小するなかで学習塾は熾烈な競争を繰り広げている。厳しい市場環境にありながらも成長を続ける企業もあり、業界では勝ち組と負け組が徐々に鮮明になりつつある。

最近、伸びているのは個別指導タイプの塾だ。従来の多数派であった集団指導型の塾が縮小傾向にあるため、塾市場全体は縮小しているものの、個別指導タイプの塾に限れば、近年は増加傾向にある。

個別指導塾は、個々の生徒に合わせてカリキュラムを組むため、その子どもの能力に合わせた学習レベルと学習スピードで教育・指導が進められる。そのため、生徒のみならず保護者からのニーズも高い。また、個別指導塾は有名校への進学指導から学校の授業の補習まで、あらゆる生徒を対象にできるため、ターゲットが広く、少子化の中でも経営を安定化しやすいというメリットもある。

個別指導を中心に学習塾を展開する上場企業としては、明光ネットワークジャパン(以下、明光ネット)、東京個別指導学院(以下、東京個別)、リソー教育があるが、いずれの企業も直近の決算は増収増益となっている。

これら3社は塾の展開方法がかなり異なる。明光ネットと東京個別が補習塾としてサービスを展開しているのに対し、リソー教育は個別指導進学塾という位置付けだ。また、明光ネットはフランチャイズチェーン方式で全国に教室を展開しているが、東京個別は主要都市圏に、リソー教育は首都圏に限定して教室を展開している。

生徒1人当たりの売上高は、(1)リソー教育、(2)東京個別、(3)明光ネットの順である。これらを併せて考えると、リソー教育は難関校合格を目指す首都圏の富裕層、東京個別は都市部の補習教育ニーズ、明光ネットは費用をあまりかけずに子どもの補習を望む層を、それぞれターゲットに教室を展開している。このため、これら大手3社の間では、すみ分けができていると言える。

ただし、最近ではほとんどの有力学習塾が何らかの形で個別指導サービスを実施するようになっており、個別指導塾の間でも競争は激化しつつある。そこで、個別指導塾のサービスも何らかの差別化を図る動きが見受けられ、今後は事業戦略の成否によって個別指導塾の中でも勝ち組と負け組に分かれてくると思われる。

M&Aによる再編が学習塾業界でも進む

最近の学習塾のM&A一覧

学習塾業界では、市場の成熟化に伴ってM&A(合併・買収)の動きも急速に進んでいる。最近のM&Aは大きく3つのパターンに分類することができる。

1つ目は、自社の営業エリア外に顧客基盤を持つ優良な学習塾を買収し、事業エリアを拡大する。

2つ目は、自社にない顧客層をもつ塾を買収して、サービス領域の拡大を図る。例えば、大学受験予備校の「東進ハイスクール」を展開するナガセによる四谷大塚(中学受験大手)の子会社化は、大学受験を中心とするナガセが、中学受験が中心の四谷大塚を買収することで、顧客層の拡大を狙ったものといえよう。

3つ目は、塾以外の事業者が既存事業との相乗効果を狙って、塾を買収するパターンだ。これは通信教育を主要事業とするベネッセコーポレーションによる東京個別指導学院の子会社化などが例としてあげられる。

少子化に伴い受験産業全体が頭打ちになるなかで、学習塾業界では今後もこうした淘汰・再編の動きが継続していくものと推測される。


掲載日:2008年7月 1日

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