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事業を育てる
「ハフィントン・ポスト」上陸にみる現代のニュースサイトとは?

デジタル時代におけるメディアの変化は著しい。新聞などの昔ながらのメディアに加え、WEBの登場により状況は激変した。見方によれば、新興勢力が取って代わってきているともいえる。そんななか、アメリカの巨大ニュースサイト「ザ・ハフィントン・ポスト」が朝日新聞社との合弁事業として、日本でのサービスを開始した。今回は、なぜいまニュースサイトが注目されているのかを考えたい。

目次

安倍晋三首相も参加宣言した「ザ・ハフィントン・ポスト」

先日(2013年5月7日)、アメリカの巨大ニュースサイト「ザ・ハフィントン・ポスト」(俗に「ハフポ」と略される)が日本上陸し、そこに安倍晋三首相が発信者(ブロガー)として参加することが発表され、大きな話題を呼んでいる。

「ザ・ハフィントン・ポスト」は、アメリカの女性ジャーナリストが創業した、読者参加型のニュースサイトで、アメリカではニューヨーク・タイムズなどに匹敵する読者数に加え、ジャーナリズムの最高峰であるピューリッツアー賞を獲得している。日本版スタートに際しては、政治・経済・国際・社会の4テーマをカバーし、ジャーナリストや起業家などのブロガーによる寄稿記事と、編集部オリジナル記事などで構成されている。議論下手な日本人にとって、この参加型がどのように作用するかも注目されつつ、また新しいニュースサイトの誕生を迎えることとなった。

インターネットの普及が進み、ブロードバンド化を経て、パソコン以外にもスマホやタブレットといったガジェット(媒介機器)の登場、mixiやFacebookといったソーシャルネットワークの普及など、現在のデジタル業界に話題は欠かない。

その過程で、さまざまなニュースを配信するニュースサイトが誕生した。多くの生活者のライフスタイルに溶け込んでいるニュースサイトについて、プレイヤー(運営社)が乱立状態となった今、その特徴と彼らの狙い、そして今後の可能性を、紐解いていきたい。

「昔ながらのメディア」を「新しいメディア」が淘汰?共存?

デジタル時代におけるメディアの変化は言うまでもないが、それを動かしてきたのはまさしく生活者(広義の意味で、消費者、世の中の人といった全般をさす)である。情報接触メディアが変化してきた点をみるのに、便宜上ここでは二分して説明をしていきたい。

  • 昔ながらのメディア・・・新聞、雑誌、ラジオ、テレビ
  • 新しいメディア・・・・・・WEB、ソーシャルメディア

総務省の資料より「メディアの利用頻度の変化」にみると、ここ2-3年間のメディアの利用頻度の変化について聞いたところ、全体としては、パソコンと携帯電話のポイントが高く(利用頻度が増えた人が多い)、一方で、ラジオ、雑誌・書籍、新聞は低い結果(利用頻度が減った人が多い)となった。特に、若年層のパソコンや携帯電話、勤労者や家庭生活者層のパソコン利用についてはポイントが高い結果となった。このことからも、生活者は次第に、新しいメディアにシフトしていることがわかる。

【メディアの利用頻度の変化】

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ニュースは無料という暗黙の空気

ニュースサイトのおもな特徴を挙げてみる。

1)男性利用者が多数を占める
2)購読料無料のケースが大多数
3)収益構造の柱は広告料

(1)男性利用者が多数を占める
 "情報を得たい人"と考えると男女関係なくターゲットといえる。ただし、男女比でみるとPCやスマホなどの利用頻度が男性の方が高いことから、ニュースサイトの利用も男性が多くを占めている。そのため、必然と男性向けニュースサイトが多数存在する。主要なニュースサイトを年代軸とコンテンツ内容から男女軸上に当てはめてみる。

【ニュースサイトのターゲット設定の比較】

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30代後半から40代、50代を意識していることがわかる。ここは、人口ボリュームも大きいことから、ある一定数が確保できると考えられた結果かもしれない。ただし、ここ数年で、若年層を取り込む動きも出てきている。なお「東洋経済オンライン」は、2012年11月にサイトをリニューアルし、3月には月間5300万PVを突破した。成功要因のひとつはターゲット層を下げたこと。20-30代の最先端のビジネスパーソン(男女を問わず働く人としている)を見据えて、スマホ対応を進め、デザインやコンテンツの若返りを図ったのだ。

(2)購読料無料のケースが大多数
 新聞や雑誌が有料であるのに対して、有料コンテンツをもつ一部サイト以外は、無料のケースが圧倒的に多い。情報は無料で得るのが当たり前の時代となった今、生活者は、情報の対価を意識しなくなってきている。総務省の資料によると、「コンテンツ入手のための支出に対する考え方」を聞いたところ、ニュースに対しては「どのような場合であっても、情報の入手には支出をかけたくない」と回答した人が41.0%いた。また「安い支出であれば有料で情報を入手するが、高い支出であれば情報を入手しない」(47.5%)という回答が最も多い点では、有料の場合でも金額が検討事項のひとつであることがわかる。

【コンテンツ入手のための支出に対する考え方】

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(3)収益構造の柱は広告料
 前記の通り、生活者がニュースにお金をかけない傾向が起きているなか、ニュースサイトの収益構造は、新聞や雑誌と比較しても違いは一目瞭然だ。

  • 新聞・雑誌・・・購読料+広告料
  • ニュースサイト・・・広告料+記事提供料(ポータルサイトへ配信する場合は提供料が発生。ただし、広告収益の1割程度が相場)

つまりは例外を抜き、経営体質の強化としては、良質なコンテンツ作り→読者増加→広告出稿増加→良質なコンテンツ作り...といったことが、卵が先か鶏が先かは明言できないが、そのサイクルで事業を維持していくことになる。

生活者ニーズの実現と事業課題の狭間

ニュースサイトに注目が集まっているのは、新しいメディアへの期待と同時に、直面する課題の多さとも考えられる。とかく、"利用無料文化"が根底にあるため、収益面での難しさから「ニュースサイトやWEBメディアは儲からない」といわれることがある。

また、社会情勢を把握し生活者のニーズに応えていくための終わりなき改善策が必要になることはいうまでもない。デジタル時代のいま、ニュースサイトのトピックスをいくつか挙げてみる。

  • コンテンツの充実・・・発信者の確保が必要。オリジナル記事と他社記事の共存など。
  • 情報の信頼性・・・発信者の責任と、運営企業の責任
  • スマホ・タブレット優先・・・システム面の対応、記事づくりにおける適応
  • ソーシャルメディア化・・・生活者の共感・参加意欲を促進
  • オープンジャーナリズム化・・・ジャーナリストやブロガーなどの個人の発言の場づくり

オープンジャーナリズムの考え方も進んでいくかもしれない。日本最大級の提言型ニュースサイトと称する「BLOGOS(ブロゴス)」や、Yahoo!が2012年にスタートさせた新コーナー「Yahoo!ニュース 個人」。そして、寄稿者やユーザー間で議論が行えるというソーシャルを取り入れた「ザ・ハフィントン・ポスト」のスタートもまさにその動きだ。

ただし、オンラインコミュニティには1%の法則なるものが論じられている。つまりネット上では90%の人が読むだけの人、9%の人は時々関わる人、そして積極的に参加する人は1%ほどというもの。

まさに今は「ザ・ハフィントン・ポスト」のスタートにより、このオープンジャーナリズムに注目が集まっているが、一方で、いわゆる、雑誌系・新聞系のニュースサイトも、広告営業を拡大しつつ、時代適応すべく試行錯誤を繰り返しているところだろう。今後の動きに注目したい。

出所:
Nielsen Norman Group「Participation Inequality: Encouraging More Users to Contribute」(英文サイト)

「ザ・ハフィントン・ポスト」

「東洋経済オンライン」

BLOGOS

「Yahoo!ニュース」内の「個人」


掲載日:2013年6月20日

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