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事業を育てる
ノマド、パラレルキャリア...働き方の多様化によって進化したビジネス

ノマドワーキング、パラレルキャリア、フリーエージェント...といったワークスタイルを指す言葉が話題になっている。このような特徴的なワークスタイルをする個人や企業が増えることを商機としたビジネスもある。ワークスタイルの流れと共に、そのビジネスを紹介する。

目次

新しいワークスタイルが生まれた背景

長期化するデフレ不況で雇用が減少し、職を失う人や不本意な雇用環境に身を置く人もいる。東京商工リサーチによると、2012年のおもな上場企業の希望・早期退職者募集は1万7,705人にのぼり、前年(8,623人)と比べて倍増し、2013年もこの流れが続いているという。

不安定な雇用環境下で、若手ビジネスパーソンは働き方をいかに考えるのか。厚生労働省「労働経済白書」の調査によると、「新入社員が働く目的」として、2010年度で「楽しい生活をしたい」(38%)で最多となり、「社会のために役立ちたい」(14%)は2000年度調査の2倍以上となった。一方、その年の調査で最多だった「経済的に豊かな生活を送りたい」は年々低下傾向にある。

また、東日本大震災を機に、生き方や働く意義を見つめ直した人も多いだろう。また企業も、そういった時代背景や、震災時に通勤困難な社員が多く発生したことや、人材・雇用のダイバーシティ(多様化)の考え方から、これまでの雇用形態や就業規則の限界を感じつつある。そして、PCやスマートフォンの進化でどこでも仕事ができる時代になったことは、働き方(以下、ワークスタイル)の多様化に大きな影響を与えている。

価値観の変容が生んだワークスタイル

では、まず昨今よく耳にするワークスタイルとして、「ノマドワーキング」と「パラレルキャリア」、「フリーエージェント」をみてみる。

ノマドとは、英語で遊牧民を意味し、一定の場所に落ち着かず場所を移動しながら仕事をする働き方を指す。ハワイと東京を拠点に、投資事業やコンサルティング、執筆活動などマルチに活躍するレバレッチコンサルティング代表の本田直之氏や、ノマド実践者として多数のメディアで紹介され、モバイルを駆使してカフェなどで仕事をこなす安藤美冬氏などを想像する人も多いだろう。

ひとつの会社に雇用されずに独立して事業を行なう、一昔前のいわば「フリーランス」の進化版という側面もある。最近では、フリーランスや個人起業家ばかりではなく、企業が生産性の向上やコスト削減の視点から、働く場所の分散を利点と捉えて、ノマドワーキングを推進することもあり、その言葉の使われ方も多様化している。

また、普段は会社員として働き、就業時間外にボランティア活動などの仕事とは別の活動をするパラレルキャリアが、若手のビジネスパーソンのなかで最近目立つという。パラレルキャリアとは、経営学者ピーター・ドラッカー氏が著書「明日を支配するもの」などで提言した概念で、長い人生で、ひとつの組織で同じ仕事に専念する以外にも、社会活動などに労力や時間を割くことで新しいことを得られる、というもの。仕事とは別の活動で得られた人脈や技術を本業にも還元して相乗効果をもたらしたいという、意識の高い人も多くいる。「もんじゅ」など、パラレルキャリアを支援するサイトも登場している。

■「もんじゅ」
http://monju.in/

さらに、これまでプロ野球選手に対して使われていたフリーエージェントという言葉にも注目が集まっている。会社員とフリーランスの間となるワークスタイルで、個人で活動しながらも会社と契約して活動を行なっている。一風変わったコンセプトをもった不動産情報のウェブサイト「東京R不動産」がその実践版として有名だ。同サイトを運営するメンバーは基本的に個人事業主でありながら、サイトを面白くするための活動を行なう。そのため、仕事は個人の裁量に任されており、成果報酬となっている。

■「東京R不動産」
http://www.realtokyoestate.co.jp/

企業が推奨するノマドワーキングの形

このように、個人としても企業内の社員としても働き方の多様化が進むことで、新しい動きと共に商機が生まれている。いくつかの例を挙げて紹介したい。

まず、企業内で働く場所を固定しないノマドワーキングを推奨する例では、サントリーホールディングス(以下、サントリー)、日本マイクロソフトなどがある。サントリーは、グループ会社の営業社員にスマホを導入し、社外からも社内の情報サイトへアクセスして、在庫確認など素早く対応することが可能となっている。これまで会社のパソコンでしか確認ができなかった業務が外出先で行なえるようになった。日本マイクロソフトでは、本社のオフィススペースの半分以上にフリーアドレス制を導入している。固定席をなくすことで、社員に社内外で働く場所を自由に選択させている結果、省スペース化や時間のロスの解消、さらに同じ場所に居合わせた社員同士の交流を深めるといった副次的な効果も生まれているという。

こういった動きは、大手企業や、IT系の企業で早くから取り入れられている。それを支えるのは、ITである。セキュリティレベルを高く維持しながら、会社のパソコンを遠隔地から操作できる技術などが進んでいる。また、特にIT系やクリエイティブ系の業種では、BYODの動きもみられる。これは、Bring Your Own Deviceの略で、個人のパソコンやスマートフォン、タブレットなどを会社に持参して、仕事をする仕組み。ただし、情報漏洩や個人情報の管理など、企業と個人間のルール化が未だ十分に整備されていない課題が残る。

「つながる場所」と「つながるサービス」を提供する事業が増加

外で仕事を行なうビジネスパーソンに対して、ネット接続ができるなどのIT環境が整っており印刷・複写といったサービスをもつ場所を運営する企業が、ここ数年増えはじめている。

日本リージャスが運営する会員制サービス「ビジネスワールド」は、会員になると主要都市にあるIT環境の整備されたスペースを好きな時に使うことができるもの。また、2012年4月には、コクヨがメンバー制ラウンジ「クリエイティブラウンジMOV」を渋谷ヒカリエに開設して話題となった。ツクルバが運営する「co-ba」は、会員制シェアードワークプレイスで、IT系やフリーランスを中心に、広告系や営業職などの会社員も利用するという。「ノマド」プランでは、月1万5000円のフリー席で24時間使用可能。「スモールカンパニー」プランは、月5万8000円の固定席で24時間使用可能となり会社登記もできる。これらは、ネットにつなげることができるほか、異業種同士が集まることによって、情報交換や新しいビジネスを生み出すなど、人と人をつなげる役割をもつと期待されている。

■日本リージャス「ビジネスワールド」
http://www.regus.co.jp/products/businessworld-membership/index.aspx

■コクヨ「クリエイティブラウンジMOV」
http://www.shibuyamov.com/

■ツクルバ「co-ba」
http://co-ba.jp/

場所に縛られないとはいえ、多くの場合、働く際にはネットを利用するため、どこにいても「つながる」ことも重要となる。そういった背景も寄与してか、モバイルWi-Fiルーターの普及・進化も著しい。ここ数年で、携帯キャリア各社が続々と次世代モバイル通信を開始しはじめた。NTTドコモの「Xi(クロッシィ)」、KDDIの「+WiMAX(プラスワイマックス)」、ソフトバンクモバイルの「SoftBank 4G」、イー・モバイルの「EMOBILE LTE」である。それぞれ、料金体系やサービス領域、データ容量、連続通信時間などの基準で競争が激化している。

さらに、フリーランスや個人事業主が活動の場を増やすことや、自分のスキルを活かして、小規模で働きたいと考える人に向けて、インターネットのマッチングサービスも登場している。「ランサーズ」は、ロゴ作成などのデザイン、Web制作などを発注したい企業と、仕事を探すフリーランスのマッチングサイト。また、「ココナラ」は、自身のもつスキルなどを、1回500円のサービスとしてオンライン上で売り買いできるサービスで、現在利用者が4万人の注目のサービス。

■「ランサーズ」
http://www.lancers.jp/

■「ココナラ」
http://coconala.com/

日本の高度成長期に、ビジネスパーソンが企業のためにすべてを犠牲にして働いた、いわば「モーレツ社員」の時代は終わったのかもしれない。個人がそれぞれの価値観にそって、自分の人生における働き方を、それぞれに選択する時代がきたのだろう。変化が起きれば、新しいニーズが生まれ、それがまたビジネスにつながる。


掲載日:2013年3月 7日

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