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事業を育てる
いまだビジネスモデルを模索するネットスーパーの光と影

インターネットで注文した食料品などの商品を家まで届けてくれる、ネットスーパーの普及が拡大している。背景には、共働き夫婦のニーズや買い物困難者対策のほか、さらにネットの高速回線の普及が後押ししている。大手スーパーだけに限らず、異業種も含めて中堅企業の参入も見られる。その現状を見てみることにする。

目次

ネットスーパーの市場規模は1兆6806億円

近年、インターネットで食料品や日用品などを注文できる「ネットスーパー」が注目されている。現在、イトーヨーカ堂が最大手であり黒字化を実現し、ローソンが「らでぃっしゅぼーや」と組み全国展開のネットスーパーを立ち上げ、レシピサイトのクックパッドが食材宅配事業に参入するなど、話題に事欠かない。この領域にはどれだけの可能性が秘められているのだろうか。矢野経済研究所の推計によると、2010年度の食品宅配市場の規模は、対前年度と比較して4%増となり、1兆6806億円となった。なかでも、ネットスーパーとコンビニエンスストアの宅配サービスは、対前年度比76.5%増の632億円と急成長を遂げている。

そもそもネットスーパーとは、インターネットを通じて食料品や日用品などを注文できる形態である。現在のネットスーパーは、「店舗出荷型」と「センター出荷型」の2つのシステムで分類される。前者は、現在運営している店舗から商品を選定して発送するもので、イトーヨーカ堂や西友などの多くがこのシステム。後者は、ネットスーパー専用施設から商品を発送するものであり、初期投資のコストはかさむが、利用者が増加すると効率的な管理・運営ができるというメリットがある。

利用経験者は16.4%で2年前と比較して"やや増加"

では、企業の期待が高まる背景を見てみる。日本では1990年代後半に、ネットスーパーが登場した。インターネットの普及と共に成長したビジネスモデルであり、15年ほどの歴史がある。ネットスーパーの誕生は、日本の社会背景を如実に反映しているともいえる。女性の社会進出に伴う共働き世帯の増加や、高齢者の増加により、利用の拡大が期待されているのだ。

利用者のメリットは、ほぼ毎日24時間注文ができる利便性と、店舗とほぼ同価格で購入できるお得感、重いものやかさばるものの配達や、時間の節約などが挙げられる。また、高齢者人口の増加により、住居の地理的な問題や身体的問題を抱える高齢者が買い物に行くことが困難であることから、"買い物難民"と言われる状態が起きている。この買い物難民対策としても、インターネットの高速ネット回線の普及と、流通網の整備により、ネットスーパーが解決策のひとつとみられている。

では、消費者の動向を見てみる。マイボイスコム株式会社が2011年10月に実施したネットスーパーに関する調査によると、利用経験者は16.4%で2009年調査時の12.3%よりやや増加し、月に1回以上利用者が6割となった。店頭よりネットスーパーでの購入が多い商品は、「米、もち」「飲料(アルコール除く)」「アルコール類」などとなった。また今後の利用意向に対しては、ネットスーパー利用者では9割とリピートが想定できる一方、未経験者では2割に止まっていた。このように、利用者の拡大には課題が多くある点も推測される。

昨今のネットスーパーの動き

大手スーパーに限らず、異業種をはじめ中堅企業の参入が著しいネットスーパー業界であるが、一方で伊藤忠食品の子会社で、複数の中堅スーパーにネットスーパーのシステム構築や宅配代行サービスを展開していたグレースコーポレーションが2008年に撤退するなど、競争も激しくなりつつある。

参入する企業の当面の課題は、採算化だ。イトーヨーカ堂は2001年にネットスーパーに参入し、採算が合うまでに約8年かかったという。ネットスーパー自体の認知度が低いことや、利便性の浸透がされていないなか、システム導入などの初期投資に始まり、特に初動では宅配料や人件費に対して1日の注文数が見合わない例が少なくないはずだ。店舗ありきでネットスーパーを立ち上げる場合、販売の固定費を吸収できるだけの財務体力があるかがカギである。

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また、現在のネットスーパーでは、一部地域は配送が対象外と成ることがあるが、楽天で運営する「ネットスーパーモール」では、住所を入力すると、モールに参加しているネットスーパーから配送可能な店舗を検索できるといった、ネットスーパーの周辺事業にも動きが出てきていることも注目だ。

競争激化の裏で、被災地復興の役割をも担う

前記の通り、消費者の今後の利用意向については利用者のリピートが多いことから、未経験者の数値が低いとしても伸びしろが期待できる。将来的にも市場規模が拡大するに伴い、店舗の増加、業者間の競争による低価格化やサービスの充実化など多角化していくことが予想される。豊富な品揃えに加え、配送料負担の軽減のほか、ネットスーパーならではのサービスが求められてくるだろう。

また、都市部、郊外などエリアの特徴を踏まえた各企業の競争が激化すること予想される一方で、収益化とは異なる意味をもつネットスーパーの役割もある。それは、東日本大震災の被災地での動きだ。西友は、2011年9月から、宮城県の仙台市、多賀城市、名取市の一部のエリアでネットスーパーを展開し、被災者の仮設住宅への配送も行なっている。このようなケースはほかにも多数発生している。おそらく、当面の採算化は難しいであろうが、被災者援助や地域復興という役割を担っている。


掲載日:2012年2月14日

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