トップページ  >  起業する  >  コラム・インタビュー  >  事業を育てる  >  利便性と健康志向で成長する宅配飲料水市場

事業を育てる
利便性と健康志向で成長する宅配飲料水市場

景況感の復帰の目処が立たず、生活者の消費は鈍化を続けている。ミネラルウォーター市場も同様にマイナスを推移したが、宅配飲料水のカテゴリーに限っては、前年度対比で増加を続けている。その成長の背景をみてみる。

目次

ミネラルウォーター消費量は10年間で約2.2倍に成長

諸外国と比較して、水道事情の良い日本においても、2000年以降急速に水を購入する人口数や消費量が増加し、特に都市部ではその傾向が顕著である。

日本ミネラルウォーター協会によると、日本人1人当たりの年間のミネラルウォーター消費量は、1999年には8.9リットルであったのに対して、2009年には19.7リットルとなり、10年間で約2.2倍消費量が増加している(グラフ1)。

グラフ1:ミネラルウォーターの1人当たり消費量の推移 出所:日本ミネラルウォーター協会
グラフ1:ミネラルウォーターの1人当たり消費量の推移
出所:日本ミネラルウォーター協会

生活者1人当たりの消費量が増加している一方で、ミネラルウォーターの市場規模は減少していることがこの度明らかになった。矢野経済研究所のまとめによると、2000年以降急速な成長をしていたが、2008年度に成長率が鈍化し、2009年度は夏場の天候不順や景況感の悪化が影響したため、前年度比95.2%の2180億円とマイナスに転じる見通しとなった(グラフ2)。

グラフ2:ミネラルウォーター市場規模推移(※メーカー出荷金額ベース) 出所:矢野経済研究所
グラフ2:ミネラルウォーター市場規模推移(※メーカー出荷金額ベース)
出所:矢野経済研究所

生活者のニーズを捉えた宅配飲料水

水道水離れや健康志向などから、ミネラルウォーターの購入はごく当たり前の光景となってきたが、昨今、そのスタイルに変化が出てきている。その理由のひとつに、ミネラルウォーターを選択する際の要因が多様化していることが挙げられる。国産品と輸入品、含有ミネラルの種類、容器・容量、価格、販売・提供方法などさまざまな要素が入り組んでいる。

簡単に整理すると、ミネラルウォーターをペットボトルで購入しようとする場合、店頭での購入が考えられ、その際には予めボトル詰めの商品のほか、スーパーなどで容器に詰めるタイプも存在する。

また、最近ではネット購入する人も増加しており、楽天市場やオイシックスなどの通販や、店舗とネットが連動しているネットスーパーも登場している。これには、マルエツや東急ストア、サミットなど大手企業が参入している。また、ボトルウォーターを宅配で購入している消費者もみられる(図3)。

図3:ミネラルウォーターの選択の多様化イメージ
図3:ミネラルウォーターの選択の多様化イメージ

なかでも「ボトルウォーターの宅配」、つまり宅配飲料水のカテゴリーが今注目を集めている。矢野経済研究所のまとめによると、ボトルウォーター市場は、販売金額ベースで、2004年度は約121億円だったのに対し、2009年度は560億円の見込みとなり、この5年間で4.6倍に成長している(グラフ4)

グラフ4:ボトルウォーター市場規模推移(※販売金額ベース) 出所:矢野経済研究所
グラフ4:ボトルウォーター市場規模推移(※販売金額ベース)
出所:矢野経済研究所

同社によると、ボトルウォーター市場の拡大理由として、「重たい水を店舗から運ばなくてもよいこと」「冷水と温水を飲み分けられる利便性」「日本の住環境に合わせたスリムなデザインのサーバーが出てきたこと」と挙げている。また、最近の傾向として、以前のような法人利用以外にも、個人の利用が伸びてきているそうだ。

ウォーターサーバーといえば、諸外国の家庭ではよく見られるが、日本のような狭い住環境では収納の問題や、ボトルの提供や空きボトルの回収の手間を嫌う問題などから、日本人にはなかなか浸透していなかった。そういった課題に対して、企業がここ数年でさまざまな施策を行なってきた。

スペースの問題は、スリム型のサーバーの開発を実現するほか、宅配の手間を省くために、使い切りのボトルやビニール詰めにするなどの工夫がされてきた。また、災害時の備蓄水も兼用できるという考え方も出てきているようだ。

市場の牽引要因は「女性」「備え需要」「一般化」

宅配飲料水がここ数年伸びている背景には、以前から生活者がもっているミネラルウォーターに対するニーズにうまく合致したことが考えられる。2006年に全国清涼飲料工業会が行ったアンケート「清涼飲料ニーズの変化とミネラルウォーター」からそれがわかる。ポイントは、「女性」「備え需要」「一般化」だ。

まず、キーワードのひとつ、「女性」について。同会の調査によると、水への関心度について、女性全体では「強い関心がある」(17.7%)、「やや関心がある」(53.6%)ともに男性を上回っており、女性において水の味への関心がより強いことがわかる。また、水道水の飲用状況について、男性で「よく飲む」人が11.5%であるのに対し、女性では6.6%と少ない一方で、女性で「全く飲まない」人は38.9%と男性をかなり上回っている。女性のほうが、そのまま飲む水としての水道水を敬遠していると推測される。(グラフ5、6)

グラフ5:「水の味、おいしさ」への関心度 出所:全国清涼飲料工業会
グラフ5:「水の味、おいしさ」への関心度
出所:全国清涼飲料工業会
グラフ6:水道水の利用状況 出所:全国清涼飲料工業会
グラフ6:水道水の利用状況
出所:全国清涼飲料工業会

次に、「備え需要」についてみてみる。ミネラルウォーターの利用状況をみると、ミネラルウォーターを「たまに購入して利用」(32.1%)が最も多くなっている。「常時備えて利用している」(22.3%)と「よく購入して利用」(14.2%)を加えると68.6%となり、ミネラルウォーターを利用している人は7割近くにのぼることがわかる。そのなかでも、1993年の調査から急増したのが、「常時備えて利用している」であり、約3倍となっている。(グラフ7)

グラフ7:ミネラルウォーターの利用状況(15~59歳・時系列) 出所:全国清涼飲料工業会
グラフ7:ミネラルウォーターの利用状況(15~59歳・時系列)
出所:全国清涼飲料工業会

3つ目に、「一般化」についてみてみる。ミネラルウォーターのイメージを調べたところ、「おいしい」(71.9%)が最も多く、次いで、「安全な」「健康によい」「美容によい」と続いている。

一方、ネガティブなイメージである「割高な」「むだな」「信用できない」といった言葉は下位であり、前回調査(1993年)と比較してもより低くなっていることから、企業努力などにより、ネガティブなイメージの払拭に成功していることがわかる。そして、「ぜいたくな」「割高な」といった項目の数値は低下しており、低価格化や認知度の拡大により、ミネラルウォーターは"ぜいたく品"というイメージが薄れ、一般化されてきたことが顕著になっている。(グラフ8)

グラフ8:ミネラルウォーターの購入先(15~59歳・2時点比較) 出所:全国清涼飲料工業会
グラフ8:ミネラルウォーターの購入先(15~59歳・2時点比較)
出所:全国清涼飲料工業会

このように、ミネラルウォーターを取り巻く環境のうち、「女性」「備え需要」「一般化」というキーワードをすべて満たして成長したのが、宅配飲料水のカテゴリーだと考えられる。

ターゲットは子どものいる家庭から、高齢者予備軍へ

宅配飲料水は、現在のところ、都市部を中心に成長を続けているが、今後は地方への販路拡大がポイントになることは言うまでもない。

ターゲットとしては、現在注力されているのが、成長期の子どもがいる家庭とミルクを飲む乳児がいる家庭である。消費量の多さと宅配の利便性と、ミルク作りのために適温の水がすぐに準備でき、衛生的で安心である点は、このターゲットに響くと考えられる。

そして、長期的な視野でみたとき、ミネラルウォーター愛用者の高齢化により、重い水を持ち運ばなくていい利便性はよりニーズとして浮き彫りになることが考えられる。そのタイミングを見越して、潜在需要をもつ人の囲い込みが市場内における競争のカギになるだろう。


掲載日:2011年3月 1日

  • googleplus
  • hatena
  • pocket
  • line
  • evernote
Copyright © WizBiz Inc.
このコンテンツの著作権は、WizBiz株式会社に帰属します。著作権の承諾なしに、無断で転用することはできません。
このページの先頭へ
起業するコンテンツ一覧
  • 事業計画作りや実際の起業準備そして開業まで。起業を目指す人の『こんな時どうする?』に応えます。

  • 法律知識や経営診断など、起業準備段階はもちろん、実際に起業・開業してからも使える豊富な情報を掲載。

  • 『国の補助金を活用して創業するには?』についてご説明します。

  • 中小企業や個人投資家にとってのメリットを、その仕組みや優遇措置について詳しくご紹介します。

  • 起業・開業を考えている職種の消費者利用動向がすぐにわかる、職種別データ一覧。

  • 200以上の業種・職種から選べる開業準備手引き書。

  • 最新のビジネストレンドや中小企業が直面する経営課題など、読み物コンテンツをまとめています。

  • 若手起業家にインタビュ—。「社会人起業」と「学生起業」それぞれの選択を対比しながら起業のカタチを探ります。