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事業を育てる
中国人観光客に沸くニッポンを支える新たな力

東京銀座、百貨店や家電量販店には多くの中国人観光客で賑わっている。7月1日、日本政府は中国人向け個人観光ビザの発給要件を大幅に緩和した。そのため、日本全国でその受け入れ体制に追われている。そんななか、影の立役者として、中国人留学生の活躍が注目されてきている。

目次

4億人市場といわれる中国人観光客への期待

東京の都心部はさることながら、北海道や温泉地など、至る所で中国人観光客を見かけるようになった。日本政府観光局(JNTO)の「訪日外客数」によると、訪日中国人について、今年5月までの数値は対前年同月比で総じて増加していることがわかる。最新の公表データである5月については、昨年は新型インフルエンザ感染拡大や景気低迷などの影響で訪日客が減少していたが、今年はそれらが解消されたことで大きく回復したとみられている。

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ここ1、2年の訪日客の増加の理由は、ひとつに人民元高の影響。そして、最大の理由はビザの発給用件の緩和である。これについては、これまでも段階的に行われてきており、2009年6月までは、中国人向けの観光ビザの発券は団体観光客に限定されていたが、その年の7月以降、年収25万元(約338万円)以上の富裕層の個人にも解禁されている。

そして、今年7月からはさらに緩和され、年収が3万元~5万元(約41万円~68万円)で、大手クレジットカードのゴールドカードを保有し、職業などの一定条件を総合的に判断した結果で発券されることになった。これにより、訪日可能な対象は、1600万世帯といわれる。この中間層は人数にして4億人ともいわれており、日本の各業界から新たな消費循環が生まれるとして期待されている。

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通訳を配置し、銀聯カードの使用も可能に

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訪日中国客が増加することは、少子高齢化や長引く不況により縮小する国内消費を補う、大きな経済効果としてのチャンスを意味する。そのため、現在、全国各地で行政から企業全てが躍起になって、ソフト面とハード面の整備を急速に進めている。では、現在進められているおもな対策を挙げてみる。

【行政】
  • 「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の一環として、中国の新聞などの媒体を利用して訪日旅行の宣伝を実施
  • 日本の主要都市の交通機関や公共施設に、中国語の表示や音声案内を整備
  • 中国語のガイドブックを公開
【地域】
  • 地域の観光案内には、中国語のガイドブックを用意
【企業】

●金融
 銀聯(ぎんれん)カードを運営する中国銀聯との提携により、日本国内で加盟店を増やす。加盟店では、同カードのクレジットカードやデビットカードの決済が可能。

●運輸
 インターネット上のホームページに中国語の航空券予約サイトを設置し、人民元で決済できるサービスのほか、割安な新運賃の設定やホテルや観光を組み合わせたツアーも販売。

●観光
 旅行会社は航空会社と提携し、各種お得なツアーを販売。中国の旅行サイトを通じて、ツアーを卸売りするほか、独自で中国語の予約サイトを設置するところもある。観光地や大型商業施設では、中国語の問い合わせを受けるカウンターを設置する施設が増えてきている。

●小売

  • 百貨店
     中国語のフロアガイドを用意。買い物の際に通訳としてサポートするコンシェルジュサービスを実施。中国人の女性は日本の化粧品などに関心が高く、通訳のスタッフは美容部員とお客さんとの間に入って詳しく説明する。
  • 家電量販店
     各フロアに中国語対応ができるスタッフを常時配置。特に、中国人に人気のデジタルカメラや携帯音楽プレーヤーなどの商品については、国別の仕様の違いなど詳しい説明に応じる。
  • コンビニエンスストア
     上海のコンビニエンスストアで人気の「おでん」に中国語表示をするなどを検討。

●外食
 中国語のホームページを作成するほか、中国語のメニューを用意。大手居酒屋チェーン店でも銀聯カードでの決済サービスをはじめている。

現在の企業の動きには、あるひとつの特徴がみられる。それは、中国人留学生の活用である。日本国内では、中国人への対応が十分とはいえない。なかでも言語は大きな問題になっており、大手量販店の店員に尋ねたところ、中国語対応ができるスタッフが不足しているという。そこで白羽の矢が立ったのが、留学生だ。ある旅行会社では、大学と協力して、中国人向けのコンシェルジュサービスを始めた。留学生は、観光客の空港送迎や観光案内、買い物などで通訳として活躍する。

日本渡航希望は6割、人気映画のロケ地北海道が1番人気

中国人の日本観光への意識調査をみてみる。

【中国人の日本への渡航意志】

2008年時の調査では、「非常に行きたい」「行きたい」の合計は55%弱。2010年にはこれが6割を超えた。少しずつながら年を追うごとに日本観光に「行きたい」願望が強まっていることがわかる。(グラフ参照)


調査:2010年2月22日~3月25日。16都市を対象に、20~49歳にインターネット調査を実施し、計4080サンプルを集計。
出典:サーチナ総合研究所
【2010年に観光客が増えそうな旅行先】

日本政府観光局のアンケート(※)によると、2010年に観光客が増えそうな旅行先(複数回答)は「北海道と東京か関西の周遊」が84%で最も多く、次いで「北海道単独」73%となった。日本での楽しみは「買い物」「桜」「紅葉」「温泉」「スキー・雪遊び」がそれぞれ5割超と上位に並ぶ結果。

中国で2009年に大ヒットした映画「非誠勿擾(フェイチェンウーラオ)」のロケ地として一躍有名になったのが、北海道の阿寒湖温泉だ。この影響で、北海道を訪れる中国人観光客が激増し、現在もなおその勢いは止まらないようだ。

【日本への観光の目的や楽しみ】

日本政府観光局のアンケート(※)によると、日本の楽しみは「マンガ・アニメ」と「産業観光」が4割を超え、「和食」「テーマパーク」を上回る結果。増えそうな旅行者の年齢層は40代から50代の女性が7割と最も多いが、上海市では20代から30代女性との回答が多かった。

※日本政府観光局は、2010年5月18日、中国・上海を中心に訪日旅行を手掛ける旅行会社46社にアンケートを実施。

日本の消費を左右する鍵は中国人留学生?

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こういった趣向を踏まえ、国をはじめ企業は商品やサービスの開発にあたるのだが、その際のキーパーソンとなるのが、前記で企業の対策としても挙げられている中国人留学生の力といえる。当然、彼、彼女らは日本に勉強を目的として来日しているため、アルバイトにより学業が疎かになっては本末転倒であるが、現在のように早急な対応が必要な時には、彼らの力を借りたいというのが企業の正直なところであろう。考え方によっては、この経験が彼らにとって、ある種の職業訓練として役立つのならば、双方に幸せなことだ。

両国の違いは、言語だけに止まらず、マナーや生活様式など様々な域に及ぶ。そこで、日本人が、双方の国を知る留学生の意見に耳を傾けることは、良い傾向と考える。日本人が中国へ渡り、様々な技術を伝えた過去があるが、今こそわれわれ日本人は中国人留学生に学び、新たな活路を見いだしていく時なのかもしれない。彼らの活躍の場は、ますます増えていきそうだ。


掲載日:2010年11月 2日

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