事業を育てる

タイムリーで役にたつ、ビジネステーマの核心を取材しました。

食料自給率アッププロジェクトが与える光と影

日本の国民食である「米」が今再び脚光を浴びている。正式に言うと、政府の積極的な活動により、消費者が見直すきっかけとなっている。日本の食料自給率アップの救世主として選ばれた米は、今「米粉」という新しい形で市場の拡大を狙っている。

目次

日本の食の一大事

過去を振り返ると、日本の食料自給率に嘆くニュースは多くあった。しかし、普段の食生活において危機感をもつことがないため、どのくらい衰退しており、どういった問題があるのかを実感することは少ない。

食料自給率とは、日本人が食べている食料のうちどの位が日本国内で生産されているかの割合で、「国内生産÷国内消費」でカロリーと生産額ベースで算出される。現在、日本の食料自給率は低下し続け、昭和40年度(1965年度)には73%(カロリーベース)だったものが、平成20年度(2008年度)には41%(同)と、43年間で32ポイントも低下し、食料の半分以上を輸入に頼っていることになる。この数字は先進国のなかでは圧倒的に低い数字。その理由は、日本人の食文化の欧米化が大きく影響している。

では、なぜ食料自給率の低下が問題視されるのか。それは、食料の大量輸送にかかる燃料消費により資源枯欠を早めてしまうこと、日本の農業の衰退、世界規模でみた時の食料確保が懸念されるからだ。

現実問題として、輸入に頼らずに食料を確保することは、今の日本には不可能だ。とはいえ、このまま輸入にばかり頼る方針でいくと、日本の農業は衰退し、世界中の限りある食料を日本のためにどれだけ確保できるかと考えた時、問題は深刻である。そして、島国である日本は物流のコストが膨大になり、さらには物流にかかる燃料を一層必要とすることになる。燃料の使用は、CO2排出量削減を公言している日本としては矛盾を高めてしまう。

そこで、食料自給率の低下を重くみた農林水産省は2010年3月、食料自給率(カロリーベース)を現在の41%から2020年度には50%に引き上げる目標を設定した。消費者へのPRや、意欲ある農家への農地集積や耕作放棄地対策なども推進していくという。

グラフ1:食料自給率の推移
出所:「FOOD ACTION NIPPON」サイトグラフ1:食料自給率の推移
出所:「FOOD ACTION NIPPON」サイト

日本の食の未来は米粉に託された

日本の食の一大事を受け、農林水産省は平成20年度より「食料自給率向上に向けた国民運動推進事業」を立ち上げ、その基盤となる組織として「FOOD ACTION NIPPON」を発足した。その取り組みのひとつとして、「米粉倶楽部」を設立し、米粉を通じて新しい食の可能性を広げ、日本の食料自給率を向上させる活動を行っている。

政府は農家保護の施策として、飼料米と米粉米を作っている農業へ助成措置を行っていることも一因となり、農家の間でも米粉は今再び見直されてきている。今回は食に関わる企業への影響をみるため、米粉米に絞って話しを進めていく。
 この「米粉倶楽部」の活動は徐々に拡大してきており、地方自治体やメーカーが動き出し、徐々にではあるが消費者へも伝わってきている。

【具体的な動き】

●公的機関(地方自治体)

  • 岡山県では、小中学校の給食で出すパンを原則、県産米を20%使った米粉パンにする取り組みが始まった(2010年4月より採用)
  • 栃木県足利市では、市立小中学校の給食に米粉100%のパンをほぼ1カ月に1回出しはじめている(2010年4月より採用)
  • 新潟県では、小麦粉消費量の10%を米粉に置き換える、にいがた発「R10プロジェクト」の取り組みを通じて、米粉加工技術の普及などを行っている

●メーカー

  • 大手食品メーカーが米粉を使用した商品を相次いで発売
  • 外食産業が米粉を使用したメニューを展開

c7_100901_02.png

●消費者

  • ホームベーカリーは「米粉パン」機能付きが人気
  • 料理教室では米粉メニューのクラスが大盛況
  • 日本最大の料理サイト「COOKPAD」上で、キーワード「米粉」で検索されたレシピ3352品(総レシピ数、約76万)

米粉プロジェクトの光と影

プロジェクトの救世主として米粉に注目したことで、食料自給率の向上もさることながら、従来の食料を違った食べ方をすることで新しい発見や喜びも生まれている。実際に、米粉でできるメニューは米粉パンやピザ生地をはじめ、餃子(皮)、麺、スイーツ(ケーキのスポンジ)など豊富である。もちっとした食感と風味が特徴で、小麦粉のメニューとは違った楽しみが老若男女問わず人気のようだ。

しかし、この「米粉倶楽部」のプロジェクトについては、メリットばかりではない。食に関わる企業の視点から、デメリット(今後解決すべき課題)を挙げると、やはり第一にコスト高ということだ。米粉は、小麦の約2倍の価格で取引されており、製造メーカーを経て商品として市場に出る際には、割高感は否めない。

最近では、テレビCMや新聞・雑誌の広告が影響してか、徐々に米粉自体は認知されているものの、実際に市場での売上が急激に伸びたという話はまだのようだ。原材料費や加工コストが抑えられ、認知度の高さが追い風となることで定着されていくことを期待したい。


掲載日:2010年9月 1日