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時代の気分は今再びアウトレットモール

景気の低迷により、消費は縮小する一方で小売業は窮地に追いやられている。いくつもの企業が店舗を閉める中、2008年12月お台場にオープンしたアウトレットモールは大盛況である。ここ数年相次いでオープンが進むアウトレットモールの現状をみてみる。

目次

歴史は浅く日本誕生17年

「アウトレット」という言葉は、水などの排出口を意味しており、「アウトレット商品」と言えば、メーカーの衣料品などで、売れ残り商品やディスプレイ商品などを処分するために在庫処分店舗で低価格で売られているものをさす。その後、複数のメーカーの店舗を一堂に集めてモール化したのが現代の「アウトレットモール」の形といえる。

小売業の歴史と比較すると、アウトレットモールのそれは浅く、もともと1980年代にアメリカで生まれた小売業の新業態だ。その後ビジネスモデルは世界に広がり、日本では1993年に埼玉県の現在のふじみ野市に「アウトレットモール・リズム」が開業したのがはじまり。現在は、全国に30カ所以上のアウトレットモールがある。

消費者とメーカーの救世主

アウトレットモールが生まれた背景には、消費者とメーカーのメリットが考えられる。

●消費者のメリット

  • 節約志向によって、「良い物を安く買う」傾向
  • 旅行よりも手軽なレジャーを味わえる

●メーカーのメリット

  • 早い商品サイクルによる在庫処分の受け皿
  • 正規品流通店舗(以下、プロパー店舗)の集客を増やすための入り口

100年に一度の大不況といわれるなか、消費者の間では物を買うこと事態が後ろめたい空気さえある。そういった中、良い物を安く買うことは「許される気がする」という気分に合致したのがアウトレットモールだ。

ひと昔前のアウトレットモールといえば、「B級品、時代遅れ品、合致しないサイズ」といった悪評も多かったが、現在は、特にアパレルに関して言えば、プロパー店舗の商品が卸され、さらに商品サイクルが非常に早いため、流行や季節の遅れを感じることは少ない。これは、メーカーのメリットにもつながる。常に新鮮で多彩な商品を求められるようになり、プロパー店舗では短期間で頻繁に商品を入れ替える必要がでてきているため、その在庫処分の場としてアウトレットモールが重要になってきたのだ。

時代の気分を捕らえることに成功

もともとメーカーの在庫処分としての機能が大きく、日本でアウトレットモールがオープンした1990年代は消費者にもそのように認知されていた。しかし、時代の変化が味方し、この業態は今再び注目を浴びることとなった。その理由は3つある。ここであげる理由は、前記の「消費者のメリット」にもリンクしている。

(1)景気の低迷による消費者動向の変化   不況下により消費が低迷する中、消費者の潜在的な購買意欲を呼び覚まし、「良い物で、かつ安いのであれば買う」という落とし所にアウトレットモールが合致した。

(2)レジャー施設としての役割   ショッピングだけではなく、遊園地や外食といった要素を盛り込むことで、家族全員で楽しめる施設とした。

(3)高速料金1000円という追い風   一部を除くアウトレットモールは、高速道路や幹線道路沿いの郊外に立地しているため、高速料金の低額化は集客の起爆剤となった。

特に、(1)「景気の低迷による消費者動向の変化」は特筆すべきである。現在の小売業をみると、百貨店とスーパーは共に売上高は減少傾向にある。しかし、アウトレットモールの売上高は、2007年度は前年度対比8.8%増加、2008年度は前年度対比14.2%増加見込みとなっている。つまり、節約志向の消費者の中には、百貨店やスーパーでの買い物は控えているものの、アウトレットモールでは消費をしているということも考えられる。

百貨店・スーパー・アウトレットモールの売上高推移

グラフ1

グラフ1

グラフ2

グラフ2

出所: グラフ1/日本百貨店協会、日本チェーンストア協会
      グラフ2/矢野経済研究所
      注)2008年度は08年8~9月時点での見込み

アウトレットモールの市場規模をみると、今後も拡大傾向にあることがわかる。現在、運営大手2強と呼ばれるのは、三菱地所の子会社チェルシージャパンと三井不動産で、それぞれ複数の施設を展開している。この大手2強がシェアの約7割を占めている中、この成長分野に新たに参入する企業もみられる。2008年12月に都市型アウトレットモールをお台場ヴィーナスフォートにオープンさせた森ビル、そして、スーパーで苦戦を強いられているイオンだ。

このように、不況下でも売上高・施設数共に拡大を続けているアウトレットモールだか、すでに懸念されている問題もある。

1つは、デフレが加速すること。メーカー側にとっては、プロパー店舗の商品がこれまで以上に売れなくなることも懸念される。そのため、最初からアウトレッットモール販売向けの商品を開発するなどの対策も考える必要がある。

次に、インターネット上のアウトレットモールとの競争が考えられる。現在、ニッセンが運営する「BRANDELI(ブランデリ)」は、ネットの利便性を生かした上で、価格競争でも優位性を持ち、新作として店頭に並んだ時期を表記するなどサービスが充実している点が特徴で、好調に売上を伸ばしている。

3つ目に、集客の鈍化への対策。現在は、オープンすれば人が集まる状態を続けているアウトレットモールだが、時代による「飽き」を避けては通れない。それは、テナント構成のリニューアルはもちろんだが、新たな集客層を取り込む必要がある。そのひとつの案として、外国人の集客も考えられる。中でも、中国や韓国といったアジア圏の観光客を集めることは、すぐ目の先の課題となっているだろう。


掲載日:2010年5月 6日

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