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事業を育てる
カーシェアリングの光と影

近年、聞き慣れてきた「カーシェアリング」。不況下の解決策のひとつとして、また環境配慮として注目されており、様々な企業の参入が相次いでいる。果たして、現在の普及状況やその効果はどうだろうか?今後の課題と共にみていく。

目次

レンタカーではない、カーシェアリングの役割

近年、首都圏を中心にカーシェアリングが広がっている。カーシェアリングとは、複数の人が車を共有する会員サービスやシステムをいう。サービス内容はレンタカーと類似するが、レンタカーは不特定多数が利用するシステムであるのに対し、カーシェアリングは通常、会員だけに対して車を貸し出す。

さらに大きな違いは利用時間。レンタカーと比較してより短い時間単位(15分単位など)で借りられるのが特徴だ。そのため、子供の送り迎えなど短時間の用途に向いており、車を保有することや、レンタカーを借りることと比較して、用途によっては費用を抑えることができ、消費者にとっては節約にもつながる。

カーシェアリングはもともと市街地の混雑緩和策として欧州で登場し、中でもスイスではいち早くサービスが始まった。市街地で大規模な車の流入規制が実施され、都市ではバスなどの公共交通機関の利用が推進された。しかし、住民は都心で車を持てないために、郊外に共同で車を所有しはじめた。これがカーシェアリングの始まりといわれている。

車をあきらめた人が気軽に使える

カーシェアリングの日本での普及がはじまったのは、2000年代。渋滞緩和や二酸化炭素排出の抑制につながることや、消費者や企業の経費削減の解決策として期待された。

利用者の最大のメリットは、コストの低減である。車は取得価格のほか、税金、駐車場代、車検代などの維持費がかかる。しかし、特に首都圏在住の大半の人は、車の利用は休日のみにとどまるため、稼働率を考えると車保有は大変経費がかかる。カーシェアリングを利用することで、必要なときに一定金額を支払って車を借りることができる。

そして、事業者は車を複数人で使用することで固定費を分散することができ、"規模のメリット"が働くため、低価格でサービスを提供できる。

また、首都圏では公共交通機関が充実していることや、昨今の経済不況も影響してか、若い層の間で「車離れ」があるという背景も味方して、時代の流れに適応したビジネスといえるだろう。

最近では、企業や自治体で利用するケースもみられる。企業としては、社用車の固定費を削減できるほか、環境対策の活動のひとつとして取り入れているという。カーシェアリングが環境に及ぼすおもな効果として、自動車保有台数や自動車走行距離の削減、環境にやさしい移動手段へのシフト、駐車スペースの削減が期待されている(交通エコロジー・モビリティ財団より)。

参入企業増、利用者増で市場拡大も

おもな事業者は、オリックス自動車のプチレンタをはじめ、マツダレンタカーのカーシェア24、株式会社ガリバーインターナショナルのGulliverカーシェアメイト、コンビニ店舗を活用した日本初のカーシェアリングとして登場した、スリーエフとミニストップが運営するアイシェア(i-share)など。

最近では、独フォルクスワーゲングループ(VW)が住友不動産と共同で事業を行ない、高級マンションの住人などがVW傘下の高級車アウディの車を利用できるようにし、これが外資系初の国内カーシェア事業参入となった。

このように、事業者の増加に伴い、車両ステーションや車両数も増加している。交通エコロジー・モビリティ財団の調査によると、2009年1月時点でカーシェアリング車両ステーション数は357カ所(前年比20%増)、車両台数は563台(同10%増)となった。

同調査によると、会員数は6396人と前年比97%増加した。数字だけをみると、前年比約2倍となったものの、事業者にとって「規模のメリット」が働き収益を安定させるには、利用者はまだ少ないのが現状だ。

※2002年から2005年までは4〜6月調べ。2006年以降は1月調べ。実験は含まず。(出所:交通エコロジー・モビリティ財団)

注目の裏で、問題も山積み

参入企業の増加からも、将来的な可能性が期待されていることがわかるが、課題も多い。

カーシェアリングは、会員制により複数人に固定費を分散させるため、ある程度の会員規模を持つ必要がある。また、多くのサービスは車の使用に対する定額制のため、ガソリン価格高騰の場合には、費用増加分は事業者が負担する。つまり、事業者にとって経費の変動に弱い仕組みとなっている。

また、同じ業態であるレンタカー会社との競争は大きいだろう。カーシェアリングは短時間利用による低価格が売りであるが、今後レンタカー会社の価格の設定次第では、そのメリットは生きなくなる。

そのため、まずは利用者の拡大が望まれる。企業や消費者に対して、価格面における成功事例を提示し、地域密着による利便性を打ち出し、認知度を高めることで、利用者のさらなる拡大を図ることが当面の課題だろう。


掲載日:2010年3月23日

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