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事業を育てる
映画のおかげで話題沸騰 葬儀業界の今を探る!!

意外と知られていないが、欧米各国やアジアの周辺国では、日本のように火葬ではなく、その大半が土葬中心。しかし日本の場合は100%火葬によって遺体が処理されている。そのため近親者だけの葬儀であっても必ず葬儀執行企業(葬儀社)が介在している。この葬儀社は人の死を取り扱う業務であり、どちらかと言うとあまり明るいイメージではないので注目されていなかったが、映画「おくりびと」のおかけで、最近俄然注目を集めている。しかも、旧態依然と言われている葬祭業界も、消費者(遺族)の意識の変化をバックに新興業者が伸びている。このように古い業界にもビジネスチャンスはある。

目次

どのような業界なのか

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現在不況真っ只中の日本において、葬儀業は高齢化による葬儀件数の増加が見込まれるため成長産業の1つと捉えられている。したがって、異業種からの葬儀市場参入が相次ぎ、現在の参入企業数は意外と多く6500〜7000社の市場規模とされている。

従来の葬儀専門業者、冠婚葬祭業者に加え、ホテルや電鉄各社、農協、生協などからの参入も相次ぎ、そして最近では、家族葬パックを目玉商品にFC(フランチャイズ・チェーン)を拡大するエポック・ジャパンや、「葬儀にサプライズと感動を」をキャッチフレーズに独自の演出を売り物にするアーバンフューネスコーポレーションなど、事業展開の手法も多様化している。

葬儀件数の増加が見込まれる一方で、葬儀単価はむしろ下落傾向にある。これは、遺族(消費者)の意識に変化が起こりつつあることに加え、参入業者の増加、とりわけ従来の不透明な価格設定に対し、パッケージによる価格の明瞭化をセールスポイントとする新興業者が台頭するなど、業界構造が変革期にあるためであろう。

結果として、葬儀業の市場規模自体は横這いないし微減の傾向だが、このような事業展開の多様化と新興業者の参入は、業者の淘汰・再編を含め、業界構造自体を大きく変えていく可能性を秘めている。もちろん、そこには多くのビジネスチャンスが眠っている。

新規勢力の参入により業界構造に変化が

新規参入企業は、業界構造にも大きな影響を与え、これまで閉鎖的であるともいわれた葬儀業界に新陳代謝をもたらしている。

既存の大手葬儀業者においても葬儀価格の明瞭化に注力しているが、新興企業では従来の慣習(神聖なる儀式を価格で評価することはタブーであり、お客様も価格のことはあまり言わない・言わせない)を打ち破り、シンプルで明確な料金プランを打ち出したことに特長がある。

かつての葬儀業界の料金体系は今ひとつ明確でない。企業によっては、同じ規模の葬儀を行なっても裕福な顧客とそうでない顧客では請求金額が異なるなどの事象もあった。

しかし、最近は遺族もある意味ドライとなり、他のサービス産業と同様に、葬儀においても料金体系の明瞭化を求めるニーズが年々強くなってきている。全国的に葬儀1件当たり30万円規模の広告も目にするようになった。

ただし、これはごく一部の傾向であり、格安プランを打ち出している事業者の葬儀であっても、実際にはオプション経費を含めて150万円以上といった業界平均単価になるような営業戦略を取っている企業がほとんどのようだ。

従来、葬儀業界は葬儀事業に特化した専門事業者と、冠婚も含めた冠婚葬祭業者の2者を中心に構成されていた。ここに農協や生協、あるいは電鉄各社、ホテルなど他業種からの参入が相次いでいる。さらにここ数年の間には、FCによる葬儀専門事業者の台頭なども加わっている。

これら異業種参入組の売上高のシェアは、まだ10%未満と推測されるが、これから本格的に新規参入事業者が増加していくと思われる。まだまだアイディアひとつで参入の余地が残されているようだ。

冠婚葬祭互助会の明と暗

「互助会」とよばれる葬儀システムをご存知であろうか?「互助会」とは、最近多くの葬儀社が顧客獲得のために乗り出している会員組織のことだ。

当たり前だが、葬儀とは人が死んで始動するビジネスだが、人の死を待つような販売手法は取られていなかった。ところが、葬儀社の競争が激しくなると他の業種のように顧客を囲い込む有利さが注目され、「互助会」という会員獲得による顧客の囲い込みが葬儀業においても始まってしまっているのだ。

その互助会であるが、運営主体は冠婚葬祭業者であり、その運営資金は、互助会を構成する会員の前受金で成り立っている。
 前受金制度の顧客メリットは、

  1. 月会費1000円程度で料金パッケージ化等のメリットを享受
  2. 料金支払いのクレジット化
  3. 斎場、ホール等の施設の充実
  4. 前受金の保全措置(前受金の半金を法務局に営業保証金として供託)
  5. 会員の解約の自由化(解約時、手数料を差し引いて払い戻しされる)

などだ。消費者にとっては、格安で明瞭な料金が死ぬ前に分かっているという点が、互助会の明の部分となる。

逆に暗の部分は、運営費や斎場設立等の先行投資の多くがこの前受け金によって賄われている点であろう。
 葬儀業者の純資産は互助会による前受け金の約10〜20%程度が一般的であるが、運営主体である葬儀業者が倒産した場合、互助会会員への前受け金の返済が滞るリスクが想定される。このため、互助会に対しては消費者保護の観点から金融、クレジット会社等を対象にしている割賦販売法が適用されることとなっている。

将来的には、国内の人口が減少するなかでは新規会員の獲得がより困難となり、サービス充実に必要な先行投資がしづらい状況になることが予想される。今は好調であるが、いずれパイの奪い合いとなるであろう。特に人口が減少しやすい地方都市から始まるであろう。

そのため、会員数が増加し続けない限り運転資金が増えないという互助会の仕組みから、結果として中小規模の互助会の経営が行き詰まるケースが増加することが予想される。

このような背景から、今後冠婚葬祭業者(互助会)同士の吸収・合併が進み、現在300社あまりある業者数が長期的には3分の1程度になるとの見方も示されている。

農協の勢力拡大

実は、葬儀専門事業者にとっては、パイの縮小による業者間の競争よりも、完全な異業種である農協の参入のほうが短期的な脅威のようだ。農協が葬儀業に参入している地域では葬儀専門業者はかなり苦戦を強いられている。

特に地縁・血縁のつながりが強い地方の場合、農協の組織力は強固であり、農協メンバーの葬儀はほぼ100%近く農協により取り仕切られているばかりではなく、組合員以外の新規ユーザーの獲得にも注力している。農協の葬儀業に関する売上高は、現在はまだ葬儀業市場規模の7〜8%程度のようだが、地方を中心に今後もシェアを拡大する勢いだ。

その他の参入業者は、生協、ホテル、そして電鉄会社などがあげられるが、農協のように地縁・血縁的に基づいた強固な体制ではないため、それ程の脅威とはなっていない。

葬儀サービス体制は二極化へ

葬儀業における業界構造は激変期にある。価格の明確化により葬儀1件当たりの平均単価が抑制される傾向にある現在、参入事業者が経営を好転させるためには、

  1. サービス範囲を拡大して1件あたりの受注単価を高める
  2. アウトソーシングなどによる徹底的なコストの削減

といった方策が考えられる。

現在の参入業者はこのいずれかの方法を選択しつつあり、業界におけるサービス体系は二極化する傾向になっている。

業界最大手の「公益社」(本社:大阪市)では、事業領域に返礼品事業、運送事業を含めており、さらに仏壇仏具の販売や、飲食事業、あるいはエンバーミング(遺体衛生保全)事業などを業務範疇として、「総合葬儀業化」の方向へ事業展開を行なっている(サービス範囲拡大戦略)。

また、ユーザーの予算に応じた葬儀価格をメニュー化し明瞭化するなどの工夫も行なっている。ちなみに、料金体系は基本料金となる祭壇価格にホール使用料、飲食・返礼品といった変動・オプション費用を合わせたものとなっている。

公益社のような業界大手企業の多くは、「総合化」「明朗会計化」によりハード、ソフト両面でのサービスの充実を図ることによって、ユーザーニーズに応える方向で事業展開している。

大手企業の「総合力」に対し、中小規模事業者の中には収支の改善を図るため、コアとなる業務以外の付帯サービス業務すべてのアウトソーシングに徹する事業者も多く見られるようになっている。この戦略では、ランニングコストの縮小、人件費の削減、少ない資本金で業務展開が可能などのメリットが考えられるが、付帯サービスの品質を十分にコントロールできなくなる可能性も指摘されている。

互助会組織も変革の時

互助会のような組織は葬儀業にとって効率よく顧客を組織化できるので、各企業が何かしらの形で互助会的な組織を運営している。しかし先ほど記載したように、暗の部分もあり社会問題化した例もある。そこで、この互助会を進化させた企業が、業界でも大手の「ベルコ」だ。

ベルコは互助会という会員組織をより強力にするために、ベルコグループ100%子会社「みどり生命保険株式会社」が生命保険業界に進出した。生命保険は生前に掛けておき、亡くなった時に活用するものだが、亡くなってすぐ保険金が下りるわけではない。このような状況で葬儀もできないという遺族が多数存在している。

ベルコが生保事業を行なうことにより、保険金を担保に葬儀を執り行なうこともできる。互助会は、成り立ちの特性上、少しでも安価に葬儀をと考えている人が多い。そのため所得に関係なく余裕のない生活を送っている人が多い。今回のような生保ができれば、葬儀を執り行なう上で極めて有用な生保となり得ると考えられないであろうか。

葬祭業と生命保険業、極めてつながりが深い業種を結んだということだが、「葬儀業は人の死をビジネスにしている。生命保険は人の死が前提となるビジネスである。この両方を結びつけるということは人の死を待つビジネスであり、社会通念、倫理上許されるべきではない。しかも相乗効果があるなどと考えることは極めて不見識である」という批判的な意見も多い。

まとめ

現在の葬儀業は、映画「おくりびと」にあるように、美しく・厳粛で・荘厳な業種とは言えないかもしれない。当然、ビジネスとして成立している以上、運営している企業は壮絶な競争を行なっているわけであるし、現場の社員も毎日のように執り行なわれる葬儀を「仕事」と見てしまうのはやむを得ないことかもしれない。

しかし、山口県にある老舗企業「大隅」の社員の方の、「仕事は仕事かもしれない。しかし私たちは、今まで社会で活躍してきた故人の『送られる』という最後の仕事で最も厳粛な仕事のパートナーに選ばれたという自負を持ってお送りしている」という言葉がある限り、「おくりびと」は人々に尊敬され感動を与え続けると思う。

新規参入には、ビジネス意識ばかりではなく、他に精神性も必要となろう。これが、精神性を軽んじ、他の業種と同じ世界になってしまったら、葬儀業はとても寂しいものになってしまう。そうならないためにも「おくりびと」は自分を律しているし、そのような心構えで仕事をしている人々こそ映画の題材になり、私たちに尊敬の眼差しでみられる存在となっている。

互助会や生命保険、異業種からの参入を否定するわけではないが、拡大が期待できる市場であり旧態依然とした市場ということで参入チャンスは多いが、より高い精神性が必要な業種であるということを慎重の上に慎重を重ね考えてから参入しても遅くはないであろう。


掲載日:2009年7月21日

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