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事業を育てる
防犯や注意喚起に役立つ特殊鏡メーカー

「丸く出っ張った形の凸面鏡を平らにできないか......」と好奇心に駆られて挑戦し、試行錯誤のうえできあがった「FFミラー」により、埼玉県川口市の小さな町工場だったコミーは、世界に名を知られるようになった。

目次

手荷物入れの奥まで映し機内の忘れ物防止に貢献

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旅客機が空港に着陸すると、乗客は立ち上がって座席上部の手荷物入れを開け、荷物を取り出す。その際に忘れ物の防止に役立っているのが、手荷物入れ内部の天井に取り付けられた小さな鏡だ。普通の鏡では見えない隅まで映し、身長よりも高い位置にある手荷物入れの奥まで目が届く。

この鏡は、今や多くの旅客機に採用されている。平面なのに凸面鏡のように広範囲を映し出す超軽量プラスチックでできた「FFミラー」だ。その独自技術を用いた製品により、埼玉県川口市の小さな町工場だったコミーは、世界に名を知られるようになった。

今から22年前の1986年。百貨店などの装飾用に様々な鏡を開発していたコミーの小宮山栄社長は、「丸く出っ張った形の凸面鏡を平らにできないか」と好奇心に駆られて挑戦を始めた。試行錯誤を繰り返した末に、特殊な加工法を開発し、下図のように平面でも広範囲を映し出せるFFミラーを完成させた。

以後、設置場所や目的に応じて様々なサイズやデザインのFFミラーを製作。現在では航空機用だけでも約30種類を数える。世界でも他に類のないコミーの独自製品だ。

出張で乗った飛行機の中で真価を発揮する用途を発見

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FFミラーの開発当初は、百貨店のエレベーター向けに営業活動を行なっていた。上部に取り付ければ、案内係がドアの開閉時に客の安全をしっかり確認できると売り込んだ。しかし、今ひとつ芳しい反響が得られない。

転機は、製品誕生から約10年後に訪れた。小宮山社長が出張で飛行機を利用した際、手荷物入れに付けられた平面鏡では奥まで見えないことに気づき、忘れ物防止に利用できるとひらめいたのだ。早速、航空業界に詳しい友人に協力を求め、旅客機の見学に行き、現物を持ち込んで試してみたところ、立ち会った客室乗務員から予想以上の好感触を得た。靴をいちいち脱いで座席の上に立ち上がって手荷物入れの奥をのぞき込まなくても、通路に立ったまま忘れ物が確認でき、手間が省けると喜ばれたのだ。

FFミラーは軽量でキズがつきにくく、軽さと耐久性が求められる航空機の備品に特有のニーズにもぴったり合う。ただ、課題もあった。安全性が最重要視されるだけに、素材や構造などで厳しい基準をクリアしなければならない。そこで、ガラスの約300倍の強度を持つポリカーボネートを素材とし、耐火性を高めるためにアルミニウム板で補強するなど改良を加えた。

そして、世界最大の航空機メーカーである米ボーイング社にサンプルを送ってみたところ、2カ月後にファクスで朗報が届いた。
「御社製品に興味があり、採用を検討したい。ついては、生産体制の確認と採用した場合の納品スケジュールを知りたい」
 思いがけない返事に歓喜の声を上げながらも、「何か裏があるのではと勘ぐってしまった」と小宮山社長は笑う。

その後、ボーイング社の仕入れ担当者が来日。直接交渉を持つことで信頼関係を築いていった。米航空局の耐燃焼性テストに合格し、日本の運輸省航空局(当時)の仕様承認を受け、製品の納入が始まったのは97年のことだった。

数年後、航空機業界でボーイング社と並ぶ大手の仏エアバス社でも採用が決まった。小型機を除けば、旅客用航空機市場のほぼ9割はこの2社が占めている。FFミラーに代わる競合製品はなく、コミーの名は世界中に知れ渡ることとなった。FFミラーの出荷量は、これまで累計7万5000枚以上に達している。

顧客の声を最大限に汲み上げ製品の可能性を伸ばしていく

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小宮山社長が日頃から重視しているのは、「お客さまの声を聞くこと」だ。納入先の企業や担当者だけでなく、実際に鏡を見る利用者も含まれる。様々な視点から製品の利用法や需要をつかみ、顧客満足度をより高めるように改良することが、企業の成長につながると信じている。

「そもそも当社は看板メーカーだったのですが、装飾品として作った吊り下げミラーがスーパーで万引き防止用として重宝されていることを知り、そのお客さまの声を大切にすることで、ミラー製造業へと転身しました。お客さまの声は大切です」(小宮山社長)

FFミラーをボーイング社に納入する過程でも、顧客の声の大切さを再認識させられていた。小宮山社長は乗客の手荷物の忘れ物防止を念頭に置いていたが、ボーイング社側は客室乗務員による不審物の点検作業という保安目的を想定していたのだ。そのため、反射角などを微修正し、客室乗務員が保安目的で利用しやすいように改良を加えた。

FFミラーは多彩な分野に活用でき、無限の可能性を秘めるといっても過言ではない。銀行やコンビニエンスストアなどに設置されるATM(現金自動預け払い機)の後方確認用ミラーとしても採用された。名刺程度の小さなサイズで、平面なのに広範囲の後ろの様子が見えるため、利用者が暗証番号などを他人にのぞかれるのではないかという不安を払拭できる。現在では全国9万台以上のATMに取り付けられている。ATMを利用する時は、注意して見てほしい。「komy」と小さく印字された鏡が取り付けられているはずだ。

従業員わずか30人ながら、07年9月期の売上高は約6億円。ここ数年も対前年度比で約10%増の成長を維持し、堅調に業績を伸ばしている。埼玉県川口市にあるコミーの製品は、文字通り世界に羽ばたいている。それでも小宮山社長は原点を決して見失わない。
「利益追求だけに走らない。利用者に便利だと感じてもらえる製品を届けることこそがコミーの存在意義だ」

ふだんは見過ごしがちなところに需要を見つけ出し、多くの新製品を生み出したコミー。次はどんな需要を見つけ出すのか、楽しみだ。

●会社概要

企業名 コミー株式会社
本社 〒323-0034 埼玉県川口市並木1-5-13
TEL 048-250-5311
設立 1973年4月12日
資本金 2,000万円
売上高 6億円(07年9月期)
従業員数 30名(パート・アルバイト含む)
事業内容 FFミラー、凸面鏡の企画開発、製造販売
URL http://www.komy.co.jp


掲載日:2009年2月 3日

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