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事業を育てる
東アジア諸国の訪日観光客が急増

ここ数年、東アジア諸国、とりわけ韓国と"中華圏"からの訪日観光客が急増している。2007年には、韓国、中国、台湾、香港の4地域からの来日者数は、全世界からの来日者数の64.3%を占めた。こうした訪日観光客を引き寄せる地域では、そうでない地域とくらべてかつてないような活況を呈している。こうした日本旅行ブームをどのようにしたら地域経済活性化につなげることができるのだろうか。

目次

次々にバスでやってくる韓国からの旅行者たち
――平日から賑わう湯布院温泉(大分県)

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よく知られた別府温泉と山を隔てて内陸に位置し、かつては"かくれ湯"のような印象があった大分県の湯布院温泉。しかし、2000年前後から平日も大勢の観光客で賑わう日本国内でも有数の観光地のひとつとなった。それも、平日客の多くは韓国からやってきた人々...。

「ここは、ふたつの要素が成功につながったのではないでしょうか。ひとつは、地元の観光協会がよくまとまって町づくりに取り組み、あえて自動車の便利さを後回しにしてでもお客さんたちが安心して歩ける古い町並みと自然を残したことと、昭和時代の日本映画を中心とした映画上映を位置づけ特色あるイベントをよい環境のなかで展開したこと。これにより、ホテルや旅館だけでなく、そぞろ歩きして楽しめる特色ある店舗のある観光地になり、お客さんをひきつけるようになりました。

そして交通アクセス。お隣の福岡県まで韓国の釜山からフェリーが運航されるようになり、日韓相互に気軽な旅行ができるようになりました。韓国から来るお客さんは、福岡から観光バスでやってきます。韓国から手軽に来ることが出来るうえ、きれいな環境の中で温泉や散策、買い物が楽しめる場所として、湯布院温泉は絶大な人気を集めるようになったのです」(湯布院町の食品卸業者Aさんの話)

筆者もウィークデーに訪れた際、バスの降車場に次々と到着し降り立つ韓国からの観光客の多さに驚いたことがある。湯布院町を見る限り、"不景気"なんてどこ吹く風といった印象である。

韓国と"中華圏"で64%以上を占める訪日観光客

近年、政治外交問題では何かと日本との間に摩擦のある韓国や中国であるが、これらの国から日本にやってくる人の数は高い経済成長を背景にしてここ数年急増中である。

国別に昨年実績を見ると、1位が韓国で260万人(31.2%)、2位が台湾で138.5万人(16.6%)、3位が中国の94万人(11.3%)、4位が香港の43万人(5.2%)である。1~4位まで東アジア圏が占めているわけだが、2~3位は実質"中華圏であり、これを合計すると276万人(33.2%)となり、文字通りトップとなる。

これらの人々は、日本の何に惹かれてやって来るのだろうか。台湾からのツアー客をしばしば引率してきたベテラン添乗員の李國蕓さん(台北市)は、次のように語る。

「台湾の人たちは、日本の食事とか温泉とかが大好きですよ。特に日本の新鮮な食材、地方の特色ある料理などに興味があります。山の中や海辺の地方など、あちこちにある温泉でゆっくりしながら、素材が安全で調理法が健康的な日本料理を食べるツアーは、とても人気がありますよ」

李さんが案内するツアーで、お客さんが一番喜んだのは北海道旅行だそうだ。旅行代金は、5泊6日で台湾での平均給与月額ほどにもなるが、おいしいカニ料理がたくさん食べられるのが魅力で、何度もリピートするお客さんがいるほどだという。

中国からの旅行客も、日本の温泉を大好きになる人が多いそうだ。上海市のツアーガイド、叶愛屏さんは自身も留学時代から長く日本に滞在した経験を持ち、「大の日本好き」を自認している。

「中国からのお客さんは、日本の優れた製品に憧れ、勤勉で親切な日本人の噂を聞いて来るのですが、実際に日本を訪れると自分の想像以上に清潔でサービスが行き届いていて、驚きますよ。いっぺんに親日家になってしまいます。最近は、仕事でまず日本に出張する経験を積んだ中国人ビジネスマンが、お金をためて田舎の両親を日本旅行に連れて行って親孝行するといったケースもあります」(叶さん)

日本人が思っている以上に東アジアの人たちに人気のある日本。こうなると、「ぜひ自分たちの地方にも足を運んでもらいたい」と思ってしまうが、どうしたらこれを実現できるのだろうか。

カギは特色と魅力のある地域づくりと交通アクセスの確保

先の李さんは、こう語る。
 「私は、台湾の人にとって魅力ある旅行先を探す仕事もしていますが、やっぱり食べ物がおいしいこと、日本のその地方特有の地形的な美しさや歴史を感じさせる町並みなどが大事ですね。でも、何よりも肝心なのは、安く、速く、確実にその場所に行ける交通手段の確保です。採算の問題もあり、日本のどこへでも台湾からの航空便があるわけではありません。それを補うようなバスであるとか、鉄道などの代替交通が手軽に利用できないと、観光客の足を向けられません」

交通アクセスの確保は、個別の企業が考えるだけでは限界がある。地域振興の視点で行政を含めた本格的な検討が必要だ。現在、かつての国鉄解体の余波を引きずり、過疎地帯をかかえる地方では行政が主体で出資した第三セクター交通(鉄道、レールバス、路線バス)がかろうして運営されているが、全体の9割以上が恒常的赤字状態の上、充分な運行数がない。国内外の観光客の"足"にするには、現状では困難なのは明白だ。

現在、日本各地の地方自治体は中国や韓国の地方都市と「姉妹都市提携」を図るところが多い。その際、相互の友好訪問などが取り組まれているが、本格的に市民レベルで交流を図り、ひいてはそれを地域経済活性化へつなげていくには、交通インフラやシステム構築など、新たな発想で足元を見つめる必要があるといえる。

さらにこうした声が聞こえていることにも、目を向けるべきだろう。中国・大連市で日本向けツァーを取り扱っている旅行社の日本人幹部Bさんの話だ。
 「日本向けツアーは人気があり、募集をかけるとたくさんの人が応募するのですが、日本領事館はまったく協力的ではありません。観光での入国申請をしても、ビザが発給される確率は50%程度です。これじゃ、みすみす日本に落ちるお金を追い散らしているようなものです。日本では中国の格差社会ぶりを批判するマスコミ論調がありますが、中国では所得水準が上がって海外に行きたい人が急速に増えています。日本の本当の姿を見てもらえば、ずいぶん"親日家"も増えると思うのですが」
 旅行者の数は中国の人口からすればほんのわずかでしかないが、国民レベルでの相互理解が少しでも進めば、国同士のつき合いにおいても、つまらぬことで齟齬を来たすこともなくなり、さらに旅行者を呼び込むことになるのではないだろうか。


掲載日:2008年11月18日

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