事業を育てる

タイムリーで役にたつ、ビジネステーマの核心を取材しました。

飲食店成功の絶対条件

自分が開きたい飲食店はマーケットに合っているだろうか、資金と人は確保できているだろうか、同じ業態の既存店との差別化をロジックで説明できるだろうか――新規開業の指導にも携わる際コーポレーション社長の中島武氏が、実践アドバイス!

中島武社長 ●際コーポレーション社長  中島 武(なかじま・たけし)

1948年生まれ。拓殖大学商学部卒。東急航空、東洋ファクタリングを経て90年に際コーポレーション設立。「紅虎餃子房」など多くの革新的な業態を開発し続け、たえず外食業界をリードしている。アンティーク家具の販売や飲食店のコンサルティングも手がけている。

目次

お客さまに喜んでいただくことに熱心な人物だろうか

――そもそも、飲食店を開業して成功する人はどんな資質の持ち主でしょうか。

人間力のある人、好奇心が旺盛で探究心のある人です。最初の1店舗目は接客から料理まですべて創業者にかかってくるので、その人が魅力的であることがポイントになります。

たとえば、いくら料理を作れても成功するとは限りません。しかし、凄い料理を作れる人なら成功の確率は高くなります。凄い料理を作れる人とは感動を与えようと考えている人、つまりお客さまに喜んでいただくことに一生懸命であるからです。そういう人は店づくりや接客も一生懸命に考えられる人です。たとえ本人が意識していなくても、店の経営についてきちんと考えられる人です。

それから本当にいい店で修業をした人。本当にいい店には、いい料理、いい設え、お客さまへの心得などのDNAが備わっているので、修業をした人はそのDNAを身につけているものです。反対に同じ修業でも、そのDNAのない店でいくら修業をしても、成功の確率は低くなるといえるでしょう。

――当然のことですが、サービス行為への適性があるかどうかですね。

飲食業はサービス業ですが、サービス業はお客さまに喜んでいただいて、お代をいただくビジネスです。喜んでいただくことに熱心でないと成功しません。普通にやれる人ならいっぱいいますが、それでは成功しません。

飲食店は物販店と違います。物販店にも店主の魅力が必要な場合が多いですが、飲食店はそれ以上に人の介在する要素が大きい。寿司屋さんでも、お客さまにとって料理がすべてではありません。お客さまはご主人の姿も味わっているのです。

飲食店においては商品を考えるのも、商品を作るのも、これができるのは人間しかいません。だから人間力が問われるのです。

――一方、飲食店を開いて成功しない人とは、どんなタイプでしょうか。

習ったことしかできない人、習ったことが正しいと思い込んでいる人、時代の変化がわからない人、人の心を読めない人、人に思いやりのない人、利己主義の人。こうしたタイプは成功できません。店の運営はチームワークなので、人間関係が陰湿になったりしたらきちんと運営できません。

勤勉でない人も成功できません。毎日店の掃除をする、河岸に仕入れに行くなど、みずから動くことが飲食店の経営には欠かせません。動くという点では、多くの店を見て廻るという自己投資、これができない人は成功できません。もし蕎麦屋さんを開くのなら、いい蕎麦屋さんを100軒、それも意識的に食べて歩くというような探究心がないと。

自分の企画をロジックで説明できるだろうか

――飲食店を開いて、最初につまずきやすい問題は何でしょうか。

1つは、自分の実力、主に資金と人を集める実力ですが、これをビジネスベースで客観的に把握できていないこと。自分が見てきたこと、知っていることだけで店を開いたら失敗します。

三ツ星クラスはレストランで開こうとして、ただモノマネをしただけではやっていけません。料理だけではなく、食器、設え、さらに従業員のたたずまいなど、すべてが三ツ星のレベルであることが求められますが、いまの自分にそれをクリアする実力があるかどうかを認識できないと失敗します。

2つめは、店の企画がマーケットに合ってないこと。店を開く前にいろいろな人たちに企画を示して意見を聞いても皆「いいね」としか答えないでしょう。この場合、聞かれた側は面倒なので、詳細にチェックして回答する人はほとんどいないと思います。そして、いざ店を開いても「いいね」と答えてくれた人達しか来てくれないような店で終わってしまうのではないでしょうか。

もしイタリア料理店を開きたいと企画している場合、イタリア料理店はたくさん存在しているのですから、自分の企画はどこが違うのかをロジックで説明できなければいけません。カレー店を開くのなら、チェーン店にするのか、個性的なカレー店にするのか。チェーン店なら、どうすれば「CoCo壱番屋」さんに勝てるのかなどをロジックで整理しておくことが不可欠です。

――企画をマーケットに合わせることは、理屈としては誰でも理解でいてるでしょうが、ズレてしまうことが多いのが現実です。

トレンドを追いかけなくても、時代の流れをつかんでおく必要があります。自分がやろうとしている業態が時代の流れの中で軌道に乗るかどうか、その見極めが問題です。

さんざんブームになった業態にお客さまは辟易しているので、いまさらヌーベルシノワーズ(新感覚の中国料理)の店を開きたいという人がいたら、「おい、おい(笑)」という判定を下さざるをえないでしょうし、回転寿司店にしても同じ判定になります。

お客さまに納得していただける商品を出しつづけること

――開業を目指すためのポイントを整理すると何がピックアップされるでしょうか。

第1に自分の資金力を把握すること、第2に人を確保すること、第3に業態を企画すること、第4に物件を探すこと。

かりに資金が1,000万円しかなかったら1,000万円で確保できる物件を探すというように、流行っている店のマネなどせずに、資金がなければないなりの店をつくることです。資金がなければ内装にお金をかけず、店の規模が小さくても構いません。ただし、きちんとした料理を出すこと。そうすれば「小さいけれども、いい店だね」と評価されるようになります。飲食店は、まず商品ありき、次に仕組みです。

際コーポレーションには組織力があるかもしれませんが、「紅虎餃子房」、「万豚記」が色褪せた店にならないのは、お客さまに納得していただける商品を出し続けているからです。「なんだ、この店は!」と思われような商品を出していては、いくら組織力があっても店は衰退していきます。

――開業して軌道に乗っても店の発展段階に応じて壁にぶつかります。まずは、どんな壁が待っているのでしょうか。

経営者がリーダーシップをもっていないと、ホール、キッチンに自分の考えを伝達し、それを具現化することができません。さらに店舗数を増やしていくにつれて、各店長に任せていく力、委託していく力が求められてきます。

そうして事業規模を拡大していく中で、通常、年商10億円ぐらいが1つの壁になるものです。この段階になると、経営者と創業時代からのメンバーが"仲間"から"経営者と被雇用者"に変わります。一人の例外もなく組織のルールをきちんと守ることを徹底させなければなりません。

仲間の感覚から脱皮できず、組織のルールを守れない創業メンバーは経営の足を引っ張る要因になってしまいます。この壁を乗り越えて初めて、次の成長ステップへと進めるのです。

――ありがとうございました。


掲載日:2008年8月12日

あわせて読みたい