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事業を育てる
会社経営とは"5人に対する使命と責任"
今回は1冊の本を紹介したい。坂本光司氏が著わした「日本でいちばん大切にしたい会社」だ。企業経営の本質とは何か。企業の不祥事がつづいた今だからこそ問い直したい本質である。

目次

全国6000社におよぶ企業の訪問調査

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食肉偽装事件で、不正競争防止法違反(虚偽表示)と詐欺の罪に問われていた食肉加工販売会社「ミートホープ」社長の刑が懲役4年と確定した。同社は創業(1976年)の数年後から食肉の偽装を開始。偽装ミンチだけでも年間3億円以上の売り上げを達成していたという。

しかも元社長夫妻の役員報酬は年間約3500万円であったのに対し、同族以外の社員やパート従業員は月24万円以下の報酬で働かされていたともいう。つまり利益のほとんどが元社長ファミリーの蓄財に当てられていたといえる。

ミートホープ社の例を見るまでもなく、昨年は企業の偽装問題が大きくクローズアップされた1年間であった。まさに企業の価値が問われた1年であったのだ。

さて、そこで今回紹介したいのは「日本でいちばん大切にしたい会社」だ。作者の坂本光司氏は、法政大学大学院の兼任教授。中小企業経営論を専門としているが、ただ「象牙の塔」にこもるだけではなく、全国6000社におよぶ企業の訪問調査によってさまざまな元気な中小企業を見聞きしてきた。そのひとつの集大成が、本書といえよう。

企業は、それに関わるすべての人のもの

坂本氏は、本書冒頭で昨年来の企業の不祥事について触れている。そのなかで法律はもとより、社会的ルールを平気で破るこれら企業の不祥事は、社会のものである企業を私物化した結果と喝破する。

しかも多くの人が勘違いしていることとして、企業は経営者や株主のものではなく、大小にかかわらず、従業員やその家族、顧客や地域社会など、その企業に関わるすべての人々のものであるとする。

そのうえで「会社経営とは"5人に対する使命と責任"を果たすための活動」であるとして、経営の目的を以下の5つに定めている。

  1. 社員とその家族を幸せにする
  2. 外注先・下請企業の社員を幸せにする
  3. 顧客を幸せにする
  4. 地域社会を幸せに、活性化させる
  5. 株主を幸せにする

多くの経営書では、経営の目的は「顧客満足」とか「株主の満足」などということが当然のようにいわれているが、坂本氏はそう考えない。社員が喜びを感じ、幸福になれてはじめて顧客に喜びを提供することができる。顧客に喜びを提供できてはじめて収益が上がり、株主を幸福にすることができる。だから株主の幸せは目的ではなく結果である。

経営者の器以上には、企業は成長しない

本書の後半では、坂本氏が訪問調査した企業のなかから5社を選び紹介された。50年前に、社員みんなの願いで身障者の女の子2名を採用し、以来ずっと身障者の方々を雇用し続け、いまでは全社員に占めるその比率が70%にも達している企業。限りなく辺鄙な地域にありながら、日本全国から入社希望者やお客が集まってくる会社。「会社の目的は社員を幸福にすること」という理念を掲げて、48年間も増収増益をつづけている会社等々。

読み進むうちに、以前取材に訪れたある弁当卸業者の話を思い出していた。社長ひとりががんばっているうちはなかなか業績がアップしない。何をやっているんだうちの社員は......との心根が、朝に夕に必死に働く社員の姿を見て、一緒に成長していきたいと変わりはじめる。その後、社長の心の変化とともに業績もアップしはじめたという話だ。

もちろん次元は違うだろうが、本質は一緒に思える。企業の地域貢献、企業の付加価値など、営利目的以外の企業の役割が説かれて久しい。しかしそれがただの経営施策になっているだけでは劇的な変化はないのであろう。経営者の器以上には、企業は成長しない。まさにそう感じさせる一書だ。


掲載日:2008年6月 3日

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