闘いつづける経営者たち

企業の成長には、独自の理念や戦略がある。成功後もさらに闘いをつづける経営者たちに聞く、企業成成長ストーリー。

ファイン株式会社【清水 直子】

目次

ep-fight-051-6.jpg 2010年、ファインの和恵社長が70歳を機に会長に退き、その後継として直子さんが3代目社長に就任した。この人事に際しては、ファイン設立以前から20年以上にわたり会社を守り続け、夫の益男さんを亡くして以降16年間社長をつとめた和恵さんをねぎらうとともに、安心して3女を筆頭とした次世代に社業を委ねられるよう、直子さんは会長に感謝の意を示す「社長の花道プロジェクト」を実施した。

母はカリスマ社長だったが、私は...

ep-fight-051-7.jpg とりわけ新製品開発において和恵社長の築いた功績は大きかった。歯磨きを覚えたての幼児でも安全に歯磨きできるようハンドルをリング型にした「ぷぅぴぃ」(1996年通産省のグッドデザイン賞受賞)、ポリ乳酸や竹の微粉末を使用した、人や地球に優しい生分解性樹脂の歯ブラシ、寝たきりの人の口の中の汚れを吸引する介護用歯ブラシの「吸ty」(キューティ)など、ユニークな歯ブラシを数々世に送り出してきた。

 「母独特のカンで開発してきたところがあるのですね。トップダウンで開発してそれがうまくいきました。でも、私にはそんなカリスマ性はありません。ならば、みんなで意見やアイデアを出しあって開発につなげていこう。このように方向性を明確にできたこともあり、母が安心して勇退できる道をつけられたのです」

社員の気持ちが1つになる

 この合議制は奏功した。会議でも社員の意見が活発に出るようになり、しかも建設的かつ現実的な意見が出るようになった。
 「無鉄砲な発言、無責任な発言はなくなり、社員の気持ちが1つになりました。社長だからといって私が陣頭指揮をとるというようなことはせず、プロジェクトリーダーのような形でやっています」
 「潰れる会社は社員が本を読んでいない」という情報が直子社長の持論と合致。その考えが社内に浸透したことで社員がよく本を読んで勉強するようになり、それが会議の場にも反映されているという。

実際に社長に就いてみると勝手が違った

 社長になる準備は副社長時代に十分してきたつもりだったが、実際に社長に就いてみるとまったく勝手が違った、とも直子社長は言う。
 「社長は副社長の延長線上にあると思っていたのに、そうではなかった。それを思い知らされました。社長になると、それまでとはまったく思考回路を変えなければいけませんでした。取締役から副社長までなら、今日の業績、今月の業績を見て一喜一憂していてもなんとかやっていける。でも社長は違う。2年先、3年先、あるいは10年先の仕事をどうつくるか、それを常に考えなければいけないのです」

びくびくしながらの社長業スタートだった。が、2年目になるとふっと心が軽くなる日もでき、3年目を迎えて新たな人脈も広がり、「やっとパワーが湧いてきた」と表情をなごませる。

清水直子 プロフィール(しみず・なおこ)

1967(昭和42)年生まれ。1988年、貿易商社の宝通商に入社。1990年、宝通商を退社し、ファインに入社。1994年に取締役、2006年に副社長に就任。2010年、父、母に続く3代目の社長に就任する。歯ブラシというハードのみならず、幼児の口腔衛生セミナーなどソフト面にも着目し、心身の関連性を重視するビジネスにチャレンジする。

企業データ

ファイン株式会社

東京都品川区南大井3-8-17
03-3761-5147
事業概要:歯ブラシ製造・販売
資本金:2000万円
売上高:2億円

掲載日:2013年12月17日