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闘いつづける経営者たち
ダイキン工業株式会社【井上 礼之】

目次

心に刺さったトゲ

ep-fight-049-7.jpg 「経営者は答えのないものに、答えを出していかなければならない」。ダイキン工業の井上礼之会長兼最高経営責任者(CEO)は、事業環境の変化が激しい時代を生き抜くための勘所をこう説明する。1994年に社長に就任し、20年近く会社を先導してきた言葉は重い。自ら出した"答え"がすべて正しかった訳ではない。「いっぱい失敗してきたからね」と井上会長は振り返る。
 心にトゲが刺さっていることもある。それは撤退した事業。「古いものはビジネスモデルが変化するたびにやめる決断もしなければならない。一番苦しいのはやめた事業ですよ」(井上会長)。ロボット事業や医療機器、真空ポンプ、面状発熱体などでは外部から技術者のスカウトもして研究開発を押し進めた。しかし、結局はそれらの事業から撤退してしまい、会社を辞めた技術者もいる。大半の人材は社内で他の部署に異動したが、「意欲的に働いてもらっていたのに申し訳ない」と回顧する。

失敗をとがめず

ep-fight-049-8.jpg ただ、井上会長は「タイミングを逃したらその戦略は机上の空論になる」と自らに言い聞かせている。「一流の戦略と二流の実行力よりも、二流の戦略と一流の実行力。実行して初めて分かる」、「だいたいの方向性が出たらトップが勇気を持って実行し、実行しながらその戦略を修正していく」と攻めの姿勢は崩さない。
 失敗は一切とがめない-。ダイキンのモットーだ。それは同じ失敗を繰り返すことではなく、あくまで前向きな失敗のことだ。「仕事の上での失敗はつきもの。(社内での立場が)下の人でも同じ。失敗をとがめてはいけない。それは教育訓練費だと。次の成功で取り返せばよい」。井上会長はなによりも社員の挑戦に期待を寄せる。13年4月1日に開いた入社式でも「挑戦する人には多くのチャンスを与えることを約束します」と呼びかけた。

高い定着率

 そのようなこともあり、ダイキンは従業員の定着率が高い。従業員5000人以上の製造業では年間15%程度が会社を辞めるといわれるが、ダイキンは同3%程度しか辞めないという。
 電化製品などがコモディティー(日用品)化し、市場の風景が様変わりする様子を井上会長は「世の中が過去の延長線上ではなくパラダイムシフトの時代」と表現する。そこでは市場の勢力図も容易に塗り変わる。「現状に満足していたら会社は衰退する」と井上会長は危機感を隠さない。「現場の波打ち際にいって変化を肌で感じ、それで戦略を修正するというスピードでないと今の時代は乗り切れない」。経営者の答え探しは、決して尽きることがない。

井上礼之 プロフィール(いのうえ・のりゆき)

1935年(昭10)生まれ。京都府生まれ。57年、同志社大学経済学部を卒業して大阪金属工業(現ダイキン工業)に入社。75年に人事部長になり、79年に取締役に就任。85年に常務、89年に専務。94年に代表取締役社長、95年に会長を兼務、02年に会長兼最高経営責任者(CEO)となり、20年にわたり経営トップとして会社のグローバル展開などを推進している。

企業データ

ダイキン工業株式会社

大阪市北区中崎西2-4-12
06-6373-4312
事業概要:空調・冷凍機事業、化学事業
資本金:約850億円
連結売上高:1兆2909億円(2013年3月期)

掲載日:2013年5月20日

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