トップページ  >  起業する  >  コラム・インタビュー  >  闘いつづける経営者たち  >  03.抗体医薬の技術を応用、バイオ後発品と核酸医薬

闘いつづける経営者たち
協和発酵キリン株式会社【松田 譲】

目次

バイオ後発薬で事業に広がり

ep-fight-038-7.jpg 協和発酵キリンの松田譲社長は、次世代の柱となる事業の立ち上げを目指しある決断を下した。2012年春、富士フイルムホールディングス傘下の富士フイルムとバイオ医薬品の後発薬(バイオシミラー)の事業子会社を設置するのだ。研究開発でもこれからの医薬品として期待される核酸医薬の研究を本格化する。事業の柱である抗体医薬や低分子薬にこれらを加えることで、持続的な成長を遂げたい考えだ。

 バイオシミラーは、細胞培養や遺伝子組み換え技術を使ったバイオ医薬品の特許が満了したもので、一般的な低分子薬の後発品(ジェネリック)同様、価格が先発薬より安いことから、増大する医療費の削減に貢献できると期待される。10年の市場規模は200億円だが、15年に2000億円、20年には2兆円に膨らむと予想されており、成長著しい。高いバイオ医薬品技術を持つ協和発酵キリンにとって、いつかはやるべき事業だったといえる。

ep-fight-038-8.jpg 関係者によると、新会社設置の話は「どちらかともなく話が出た」。富士フイルムの戸田雄三常務執行役員医薬品事業部長と、協和発酵キリンの開発トップの花井陳雄専務の間でとんとん拍子にスキームが決まった。松田譲社長自身も「かつて抗がん剤の探索で富士フイルムと協業しており、高い技術力や社風に好感を持っていた」と話す。

 今後は双方の技術を持ち寄り、高品質のバイオシミラーと、高効率の生産技術の確立を進める。また、富士フイルムはグループで分析技術や内視鏡などの技術も持つことから、将来的には個人の遺伝子などを分析して適した薬を提供する個別化医療などでも提携する可能性もある。

2020年を見据え、核酸医薬に本腰

 11月9日、東京リサーチパーク(東京都町田市)に関係者を集め見学会を実施した。その席で研究本部の中西聡バイオ医薬研究所長は「新しい医薬品を作るには、抗体医薬から離れるという考えも必要だ」と説いた。これは、抗体医薬の技術を使い、違う創薬技術を確立しようという意味だ。その標的が、核酸医薬になる。

 抗体医薬は身体が持つ免疫機能を使う。病気の元になる病原体などの抗原だけをねらい打ちする抗体の特性を使い、がんなどを治療しようというものだ。一方、核酸医薬は、細胞膜の内側に入り込み、人工的な核酸を使って、遺伝子に働きかけることで病気を治すという技術となる。ベンチャー企業で研究が進み、米ファイザーやスイスのロシュ、武田薬品工業なども提携や買収などで進出している。

ep-fight-038-9.jpg だが、細胞膜の内側に入り、そこで核酸を放出する技術や、効果を長持ちさせる技術のハードルが高い。各社事業の見直しを進めており、ロシュは核酸医薬から事実上撤退した。
 協和発酵キリンは、バイオベンチャーの米ダイサーナと提携して核酸医薬の技術を持つ。足りないのは細胞膜内に薬を届ける薬物送達システム(DDS)だ。

 そこで、抗原だけをねらい打ちできる抗体の技術を応用して新しいDDSを作る研究を進める。大島悦男執行役員研究本部長は「時間がかかるし、難しいのは確か。だが、持ち味をうまく使って実現したい」と話している。花井専務も「抗体医薬も昔は難点が多かった。我々は研究開発型企業。試行錯誤で行きつ戻りつやっていく」と、長期的な視野で取り組む姿勢をみせている。

松田 譲 プロフィール

1948年6月25日生まれ、新潟県出身。77年(昭52)東京大学大学院農学系研究科博士課程修了し、同年4月に協和発酵工業(現協和発酵キリン)に入社。研究員として東京研究所(現東京リサーチパーク)に勤務し、以来新薬の開発に没頭する。主任研究員などを経て00年に医薬総合研究所長に就任。本人は天職として研究者人生を全うするはずだったが、研究部門の組織改革の実績が認められ02年に総合企画室長(常務)に抜てきされる。翌03年には協和発酵の社長に就任。08年10月にはキリンファーマとの経営統合に伴い協和発酵キリンの社長に就いた。12年3月22日9年務めた社長を退任、相談役に退く予定。

企業データ

協和発酵キリン株式会社

東京都千代田区大手町1-6-1
03-3282-0007
事業概要:医療用医薬品の製造・販売を行う事業持株会社
設立:1949年(昭和24年)7月1日
資本金:267億4500万円
売上高:4137億3800万円(2010年12月期)

掲載日:2012年2月 6日

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