闘いつづける経営者たち

企業の成長には、独自の理念や戦略がある。成功後もさらに闘いをつづける経営者たちに聞く、企業成成長ストーリー。

アイコム株式会社【福井 勉】

目次

ライバルと提携

ep-fight-029-4.jpg 「最大の敵との提携ですよ」-。あるアイコム幹部は冗談交じりにこう打ち明ける。陸上業務用無線機のシェア拡大に向けた、ケンウッドとの提携のことだ。日本の無線機メーカー同士のため、もともとライバル意識が強い。福井は部下の葛藤を踏まえつつも、"打倒モトローラ"に向けての共闘を進める。

 その具体策は北米でのデジタル無線規格「NXDN」の普及推進。アイコムとケンウッドを含む14社が取り組んでいる。アナログは基本的に周波数を合わせれば通信できるが、デジタルは方式が異なるとつながらないことが背景にある。規格は統一し、使い勝手や価格などで競争する考えだ。

NXDN方式の優位性

ep-fight-029-5.jpg 2010年10月時点の米連邦通信委員会(FCC)の統計では、モトローラの規格「MOTOTRBO(モトターボ)」とNXDN陣営それぞれへのライセンス付与数がほぼ同数。アナログを含めたシェアの差から考えると健闘と言える。「モトローラはまだ6.25キロヘルツ対応が不十分のため、NXDNの優位性が認められている」(アイコム幹部)という。

 日本でも400メガヘルツ帯のアナログ簡易無線機が22年11月末で使用期限を迎えるなど、デジタル化に向けた動きが始まっている。携帯電話の普及が進んだため、無線機の需要そのものを疑問視する向きも一部にはあるが、通話料金が不要で複数の相手に一斉連絡できるのは携帯にない長所。国防や警察などの公共安全に関わる分野ではこうした点が求められるため、携帯とのすみ分けができている。

マーケットに向き合う

ep-fight-029-6.jpg 市場にはデジタル化という追い風が吹く。プライドに固執せずケンウッドとも提携した。こう考えるとアイコムを取り巻く環境は悪くないようにも思える。だが福井は危機感を募らせる。「今後はアイコムがマーケットを見る必要がある。自ら顧客と接触し、ニーズを正確に理解することが第一だ」と強調する福井。これまでは市場が見えていなかった、とも取れるこの言葉の真意は一体どこにあるのか。

福井 勉 プロフィール

75年(昭50)大阪市立大商卒。89年アイコム入社。92年取締役、99年常務、03年専務、06年社長。奈良県出身。

企業データ

アイコム株式会社(ICOM INCORPORATED)

〒547-0003
大阪府大阪市平野区加美南1の1の32
事業概要:無線通信機器、コンピューター機器の製造販売
設立:64年(昭39)7月
資本金:70億8122万円(10年3月末現在)
上場取引所:東京証券取引所 市場第1部、大阪証券取引所 市場第1部
従業者数:1097人(10年3月末現在)

掲載日:2011年2月17日

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