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闘いつづける経営者たち
シスメックス株式会社【家次 恒】

目次

海外直販化で成長

ep-fight-025-3.jpg 世界160カ国以上に製品を輸出するシスメックスは、北米・南米・欧州・中国・アジアパシフィックの各地域に子会社37社を設立し、グローバルに事業を展開する。しかし、家次が同社へ入社した1980年代後半は売り上げの大半を国内で占めており、海外に現地法人はあるものの代理店経由での販売が中心だった。

 91年、英国で販売代理店契約を結んでいた現地企業の販売部門を買収。これが海外での直接販売に乗り出す契機となった。95年にはドイツのオーナー系企業を買収。当初「社内の海外部門はみな反対した」(家次)が、英国ではトップとの直接交渉、ドイツの場合は相手に合わせた丁寧な対応で合意に至った。企業の性格や規模に応じた交渉の進め方に「銀行員時代の(さまざまな会社への)対応の経験が生きた」(同)と語る。

 海外企業との提携も推進。同業大手であるロシュのトップを会社に招き「(会社の規模が)小さくても独自の強みを持つことで(立場は)対等」(同)という関係を築き、業務提携を行った。これがシスメックスの、国際地位を高めることにつながっていった。家次が社長に就任した96年には、血球計数検査分野で世界の2、3番手につけていた。ただ「トップは遠かった」(同)と振り返る。

珍しいグローバル企業

ep-fight-025-4.jpg 家次は「医療関連や試薬販売を事業とする会社には、直販は大事」と説く。顧客の反応が直接伝わり、サービスやサポートに生かせるためだ。世界最大規模の市場を持つ米国では、競合他社が市場をほぼ独占し、国土の広さや国内の時差などの問題があったが、03年に直販を開始。以降順調に進展し、10年3月期のカナダと米国の合計売上高は現地通貨ベースで10%以上の増収となるなど、業績を着々と伸ばしている。

 直販化や提携といった海外戦略でグローバル企業の仲間入りを果たしたシスメックスだが、欧米企業が市場を占める検体検査分野で同社のようにグローバルに展開するアジア企業は珍しいようだ。家次は、通貨の統一で欧州の各国がひとつの国のようになった現在では「大企業に優位となり、中小企業単独での(グローバル展開の)チャンスが少なくなった」と、先を読んですぐに行動を起こす重要性を強調する。

 海外事業の比重が増すことで懸念されるのが円高の問題。同社は現地通貨で取引し、為替リスクは日本で負っているが、「現地で円高の進展レベル以上に成長していく」(家次)と、経済情勢に左右されず着実に事業を進める考え。世界各地に試薬の生産拠点を置く現在でも検査機器は日本で手がけており、これにより高品質の「シスメックス」ブランドが世界的に確立されている。
 世界の検体検査市場規模は08年度で約3兆4700億円、成長率は8%と言われている。米国では今後、政府の医療保険制度改革により3200万人の保険加入需要が見込める。現在の北・中米地域のシェアは2位だが、市場の伸びを超える成長で拡大を目指す。

家次 恒 プロフィール

73年(昭48)京大経卒、同年三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。86年東亞医用電子(現シスメックス)入社、取締役。90年常務、96年専務を経て社長。現在、神戸商工会議所の副会頭も務める。熱烈な阪神タイガースファン。

企業データ

シスメックス株式会社 SYSMEX CORPORATION

〒651-0073
兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1丁目5番1号
事業概要:臨床検査機器、検査用試薬ならびに関連ソフトウェアなどの開発・製造・販売・輸出入
設立:昭和43年(1968年)2月20日
資本金:88億2,400万円(2010年3月31日現在)
上場取引所:東京証券取引所 市場第1部、大阪証券取引所 市場第1部
従業者数:2,025名(2010年5月31日現在。嘱託・パートタイマーなどを含む)

掲載日:2010年11月 1日

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