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闘いつづける経営者たち
株式会社大創産業【矢野 博丈】

目次

目を見張る快進撃

ep-fight-010-1.jpg 100円ショップのダイソー。多くの人が店舗を訪れたことがあるに違いない。1991年に1号店をオープンし、約20年で国内外に3,000店舗を展開するまでに成長した。年間の購買者は延べ6億人。1日に160万人が買い物する計算になる。

 扱うアイテム数は、約9万種類。日用品から電気製品、食品、化粧品、CD、書籍まで、ありとあらゆる商品が揃う。全国に30カ所ある自社倉庫は7万250坪。大型店舗のギガ町田店とギガ船橋店の広さは2,000坪だ。一日回っても見切れない商品が並んでいる。

ep-fight-010-2.jpg 海外工場で生産される商品のボリュームも半端ではない。日本の総輸入貨物量の約1%は、ダイソーの商品になる勘定だ。1日の輸入量はコンテナ100本分。年間だと実に3万7,000本。そのスケールは同業他社を圧倒する。

 2008年3月期の売上高は3,380億円。順風満帆に見える大創産業だが、矢野博丈は、「会社は潰れる」と悲観的な考えを口にする。

入社式で「会社は潰れる」

 矢野が毎年、入社式で新入社員に話すことが2つある。ひとつは、「この会社は潰れる」ということ。入社式でいきなり「潰れる」では、新入社員も度肝を抜かれるだろう。地元の銀行からも「潰れる」発言はしないでくれと頼まれた。

ep-fight-010-3.jpg しかし、この「潰れる」の意味は、「頑張って磨き続けなければ、劣化する」という意味。一丸となって進まなければ、渡っていけないという大きな励ましなのだ。

 もうひとつは、バッファローの大移動の話だ。過酷な移動の途中で、川に流されたり、ライオンに殺されたり、弱いバッファローは死に絶え、強いバッファローだけが生き残る。「ダイソーに入社したからには、生き残るバッファローになって、数年後には先頭を走ってほしい」というのだ。

 経営計画、戦略はないというが、「頑張る」「磨く」といった基本的な社員教育が、非常に徹底している。

 広島の本社には、会議室や商談室は無く、端から端まで見渡せる職場で、社員が各自の業務に取り組んでいる。商談コーナーはその中にあり、メーカーの担当者が来社すれば、社員は相手の顔を見て、元気に挨拶する。活気に溢れ規律が感じられる。

ep-fight-010-4.jpg 予算やノルマが無くても、職場には緊張感がある。戦略や会議が無くても、各自が仕事に集中し、忙しそうに動いている。矢野は、「社員を一所懸命指導し、一所懸命怒り続ける」という。これが「商人の謙虚さ」なのだと。

 ある社員が、「一度、びっくりするくらい怒鳴られたことがあった。でも、怒鳴られて、自分を戒め最善を尽くすことを学んだと思う。社長は厳しい反面、温かくて優しい人。他人にとても気を遣う人」と話してくれた。

 「怒り続ける」には、ものすごくエネルギーが要るし、怒鳴って社員がついて来るには、信頼関係が無いと難しい。こうした矢野の独自の経営哲学は、数々の評価を受け、多くのメディアも注目している。

 中東の小売業に与えられる Retail ME award の最優秀企業に選ばれたのは、中東進出後、わずか3年の2006年。アメリカの業界誌『STORES』の最も成長している企業の10位にランクインしたこともある。日本では、日本経済新聞の「21世紀の偉大な経営者」の79位に選ばれた。

過酷な環境の中で生き残れ

ep-fight-010-5.jpg 経営戦略などを掲げず、ひたすらまい進してきた同社だが、「頑張り続けるしかなかった」と矢野は言う。

 これまでに、火事、倒産、夜逃げなど、いろいろ不運な出来事に遭遇してきた。自殺を考えたこともあったという。こうした出来事に遭って、「ただ食べるため、生きるために、必死に頑張るしかなかった」と、波乱の人生振り返る。

 店舗を増やしたい、会社を大きくしたいと思ったこともないという。価格を抑えるために商品を大量に仕入れ、オリジナル商品を作ることで商品の種類、数量が増大した。同時にタイミングよく格好の不動産物件が見つかったりしながら、店舗数が増えていった。

 「小売業において、店舗数の過剰は大変危険である」としながらも、店舗数が増え、事業は拡大していった。「不安はあった」と言いながら、「潰れないために頑張るしかない」と、ひたすら頑張った。

 「採算が合わない」と撤退する同業者が現れても、同社は「ここで止めたら食えなくなる」と止まることはなかった。採算度外視でも、止めるわけにはいかないと頑張った。

 バッファローの過酷な大移動のように、危険が待ち構えていることが分かっていても、ひたすら前に進んで力強さを育んできたのだ。

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矢野博丈プロフィール

1943年生まれ。66年中央大学卒業後、学生結婚した妻の実家のハマチ養殖業を手伝う。3年後に倒産し、借金を抱え夜逃げ同然で上京。その後、書籍の営業やちり紙交換など転職を9回重ねる。ある時、移動販売に集まった人だかりを目にして、移動販売業を始めることに。「矢野商店」を立ち上げ、夫婦で一心に働き、値札を貼る手間も惜しいと、100円均一を導入した。社名も大きく創るという願いを込めて「大創産業」とし、質の高い商品展開に力を注いだ。移動販売を続けるなか、とあるスーパーから出店の誘いを受け、固定の店舗での展開を始める。固定の店舗での集客、売り上げは順調で、1991年に直営第1号の「高松店」をオープン。その後、着々と店舗を増やし続け、今では毎月、20〜30店舗を新しくオープンするまでになった。近年は、100円以上の高額商品の扱いも始めている。

企業データ

株式会社大創産業

〒739-8501
東広島市西条吉行東1丁目4番14号
TEL:082(420)0100(代表)

事業概要:100円ショップ ザ・ダイソーのチェーン展開
設立:1977年12月
資本金:27億円
売上高:3380億円(2008年3月期)
従業者数:400名

掲載日:2009年3月26日

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