トップページ  >  起業する  >  コラム・インタビュー  >  闘いつづける経営者たち  >  03.個人を追及するよりも、企業として社会・顧客に対する責任の取り方を探る方が重要だった

闘いつづける経営者たち
株式会社ジャパネットたかた【高田 明】

目次

トップとしての責任、試練を与えられた

ep-fight-008-14.jpg 2004年3月9日は高田明にとって生涯忘れることができない悪夢のような1日になった。元社員によって51万人分の顧客リストが流出するという事件が発覚した。

 さらに元社員らは長期にわたってパソコンやビデオカメラなど約4200万円相当の商品を盗み出していたことも判明した。

 この事件を受けてジャパネットたかたは広告活動や商品販売を48日間にわたり自粛。これにより150億円の機会損失になったという。1986年の創業から右肩上がりで上昇を続けてきた売上高は2004年度に初めて減収になる。

ep-fight-008-15.jpg 創業以来の危機に臨んで高田の対応は素早かった。2時間で活動停止を決断し記者会見に持ち込んだのは、企業の危機対応の模範例として今では語り草になっている。高田は当時の状況をこう振り返る。

 「不祥事の解明ができない状態でテレビショッピングの放送を続けられるわけがありません。会社をゼロからやりなおしてもいいと思いました」

 「倒産という二文字が頭をよぎりもしたが、とにかく事件の真相を解明することでしか、社会やお客様に対して責任を果たせないと考えました。マイナスからの再出発になろうとも、社員を守っていかなければなりません。経営者はそうした覚悟がいると思います」

社員を疑っているのではなく、安全な環境を作っていることを説いた

ep-fight-008-16.jpg 高田は事件を受けて本社オフィスの入り口に監視用のビデオカメラを設置した。またネットワークのセキュリティも見直した。しかし高田は性善説に基づく経営姿勢を方向転換したわけではないという。

 「おいしいモノをいっぱい並べたまま、お店を開けっ放しにしておいて、子供たちに食べちゃいけない、食べたら処罰しますというのは経営者としてあまりに無責任ではないでしょうか。経営者には不祥事が起こりやすい環境、魔が差すような雰囲気を放置しておいた責任があります」

 高田は事件後も社員に対する考え方や姿勢が基本的に変わってないことを社内で何度も説いている。

 企業の不祥事を防止するには企業風土を「不祥事はあってはならない」から「不祥事は起こるかもしれない」に変えることが重要といわれる。

ep-fight-008-17.jpg 「あってはならない」という呪縛にとらわれ過ぎると、万一不祥事や事故が起こったときに、どう対処したらよいか前もって準備するという発想が生まれにくくなるからだ。

 不祥事を起こした社員が「隠すしかない」という精神状態に追いつめられるかもしれない。高田は不祥事を教訓に「不祥事は起こるかもしれない」という適度な緊張感を、家族的な企業風土に定着させようとしている。

「社員」「商品」「知識」が1つになった ジャパネットのブランドと品質

ep-fight-008-18.jpg CSR(企業の社会的責任)を考えるうえで消費者対応も大きなテーマといえる。

 食品偽装や製品欠陥事故が多発する事態を受け、福田政権は来年度に「消費者庁」を創設する方針を打ち出した。経済産業省や農林水産省、厚生労働省などから消費者行政に関する法律と組織を切り出し、消費者庁に一元化するという。

 消費者の安全・安心に対するニーズは急速に高まっているが、消費者問題の本質的な部分には「製品の使い方に不慣れになっている」という消費者側の未熟さや常識の欠如があるのは否めない。

 「お客様が神様ですというのは一番簡単なことですが、お客様の使い方が間違っていたら、こちらから間違っていますといえる勇気のある社会をつくっていかなければなりません」と高田は熱っぽく語る。

 福岡に二番目のコールセンターとしてテクニカルサポートセンターを開設したのは、商品の受発注だけでなくアフターフォローにもきちんと対応することで「ジャパネット品質」に磨きをかける考えからだ。

ep-fight-008-19.jpg テクニカルサポートセンターは6月2日から65人体制で稼働し、将来は最大250席規模を想定している。そしてそこで収集した顧客の声は分析結果をバイヤーやメーカーにフィードバックしている。

 ジャパネットたかたオリジナルの商品開発だけでなく、より安全で使い勝手のよい商品作りを提案することでメーカーとの関係強化に役立てているようだ。

高田明プロフィール

1948年、長崎県生まれ。県立猶興館高校から大阪経済大学に進学。在学中に鍛えた語学力が認められ、卒業後は京都の阪村機械製作所で3年間、欧州駐在員として海外赴任を経験する。1974年、故郷の平戸に戻り実家のカメラ店を手伝いながら、1986年には佐世保で「ジャパネットたかたの前身」となる「株式会社たかた」を設立、ソニーショップとして分離・独立する。出演したラジオショッピングでの売り上げの大きさに驚愕し、1990年にラジオ通販事業に本格参入。91年にはラジオショッピングの全国ネットワークを完成させ、3年後にはテレビ通販事業にも乗り出す。1999年に現社名に改称し、2000年にカタログ通販事業とインターネットによるオンライン通販事業をスタートさせ、日本全国をカバーするメディアミックス事業の体制を整える。チラシや紙媒体に加え、佐世保市内に構えた本格的テレビスタジオですべての番組を自社スタッフで制作、全国配信する徹底した自前主義が特徴。

企業データ

株式会社ジャパネットたかた

〒857-1197
長崎県佐世保市日宇町2781
TEL.0956-26-1300(代表)

事業概要:通信販売業
設立:1986年1月
資本金:1億円
売上高:1,161億円(07年12月期)
従業者数:345名(08年1月現在)

掲載日:2008年8月22日

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