D-5.リスク管理
リスクマネジメントの基礎
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リスクとは何か
企業は、つねにさまざまなリスクにさらされています。たとえば、工場が火災で焼失したとします。これにより、企業の生産活動は停止し、操業停止の危機というリスクにさらされます。また、規制緩和や強化、消費者ニーズの多様化などの社会の動きそのものが、企業の利益に大きな影響を与えることもあります。すなわち、すべての企業は、どんなに業績が順調に推移しているとしても、つねに事業縮小や最悪の場合、倒産というリスクにさらされているのです。このように、
「リスク」とは、損失の起こる不確実性のことをいいます。
交通事故の発生を例にあげて考えてみましょう。ある交通事故は偶発的なもので、もし雨が降っていなかったら、あるいは体調不良でなかったら、起こらなかったかもしれません。体調不良という「損失生起要因(損失を起こす要因)」と雨が降っていたという「損失拡大要因(損失を大きくする要因)」によって、事故は引き起こされ、事故による損失(刑事上の責任、損害賠償、医療費など)を生むのです。こうしたリスクの発生するメカニズムを図示すると以下のようになります。

つまり、「リスク」とは、損失の生起要因・拡大要因があれば損失を生じる可能性があり、しかも突発的に発生し、その大きさも甚大なものになりえる状態と理解することができます。
リスクの種類と企業の対応
企業が直面するリスクには具体的にどのようなものがあるのでしょうか。一般的には、次の5つに分類できます。
(1)財産損失のリスク
火災・爆発・地震・風災害(台風など)・盗難などによって、企業が所有している財産が損なわれるリスクのこと。
(2)収入減少のリスク
企業の売り上げや利益が減少するリスクのこと。たとえば、取引先の倒産など。
(3)賠償責任のリスク
企業が株主、従業員、消費者から賠償責任を問われるリスクのこと。たとえば、製造物責任や役員賠償責任を問われての訴訟など。
(4)人的損失のリスク
経営者、重役、あるいはその他の従業員の死亡・事故・疾病・不健康・信用損失などのリスクのこと。
(5)ビジネスリスク
新製品開発や海外進出などの営業戦略上のリスク、および株式投資・商品取引・為替相場・他社への融資などの資産運用上のリスクのこと。
以上のように多種多様なリスクが企業を取り巻いています。しかし、これらのリスクに対して無防備で、次のような問題を抱えている企業もあります。
- 安全に対する意識が欠如している
- 安全に対する投資を軽視あるいは無視している
- 安全を人的依存にすりかえている(注意をすれば事故は起こらないなど)
- 天災による被害、損失は人間の責任の範囲外の出来事という認識が強い。しかし、実際には対策により被害、損失は防止、低減できる。天災は人災ととらえるべきである
- 政治、経済、技術、社会の動きに連動した経営環境の変化におけるリスクが十分に評価、分析されていない
- 企業に内在するリスクの予見と分析がなされていない
<例>
・経営者の判断ミスにおけるリスク(新規事業進出、事業規模拡大の失敗など)
・特許侵害、訴訟問題による損失
・経営者、管理責任者の事故や病気による企業のリスクなど
こうしたリスクにかかわる意識や対応の欠如は、ひとたびリスクが発生した際には、企業の存続すら危ういものにします。そういった事態を防ぐためにも、リスクマネジメントが求められてくるのです。
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リスクマネジメントとは、
企業経営上発生するリスクについて、
最小のコストでこれを防止したり適切な処理を行い、
損失や被害を最小限になるようにコントロールすることです。
そして、リスクマネジメントの究極の目的は企業の倒産防止にあります。災害や事故あるいは突発的なリスクは現実のものとしていつ襲ってくるかわかりません。そのようなリスクを完全に掌握することは不可能です。しかし、いったんリスクが発生してしまうと、「計画した利益が見込めなくなる」「臨時の費用が発生し資金損失を生じる」「損害賠償などの損害の発生、物的・人的損失、信用の失墜」などその被害は計り知れないものがあるのです。
そこで、これらに対するリスクマネジメントでは、
- リスクの発生そのものをできるだけ抑制する対策をとる
- それとともに、リスクが発生した場合でも企業経営に影響を与えない方策をとる
ことが基本的な考え方となります。
今日では、リスクマネジメントは経営管理のひとつとしてとらえられています。しかし、生産管理、販売管理、財務管理、労務管理などの経営管理は多くの企業で展開されているのに対して、リスクマネジメントについては少数の企業にとどまっているのが現状です。経営の安定化を考えれば、すべての企業にとって、こうした損失の極小化を図る管理も必要といえ、今後は、重要な経営管理手法として定着してくるでしょう。
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