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新事業発見!

10年間で40万個のロングセラー

かまどで炊いたようなおいしいご飯を、今のライフスタイルの中で簡単に食べたい。
そんな願いを実現したのが、長谷製陶(三重県伊賀市)の「かまどさん」だ。使い勝手のよさからロングセラーとなっている。

地震により会社倒産の危機

■商品概要
かまどさん
一合炊き 6,300円(税込み)
二合炊き 7,875円(税込み)
三合炊き 10,500円(税込み)
五合炊き 18,900円(税込み)
※すべて陶敷板・竹杓子・レシピ付き
写真は三合炊き
■商品概要
かまどさん
一合炊き 6,300円(税込み)
二合炊き 7,875円(税込み)
三合炊き 10,500円(税込み)
五合炊き 18,900円(税込み)
※すべて陶敷板・竹杓子・レシピ付き
写真は三合炊き

1995年1月17日。後に「阪神・淡路大震災」と呼ばれる大地震が発生した。多くの人の運命を変えたこの地震は、三重県伊賀市にある長谷製陶の運命も変えた。

長年焼き物を製造している同社。当時の主力商品は住宅用タイルだった。売り上げは好調。しかし、この地震で業績は一変する。

高層階に使われていたタイルが、地震の揺れで剥れ落ちる光景が見られたのだ。注文はキャンセルとなり、在庫は山のように積み上がった。
 「このままでは倒産するかもしれない」。長谷康弘社長は青ざめた。

その頃、同社はタイル以外に食器や調理器具も製造していた。タイルが売れないなら、食器や調理器具の製造に注力する必要がある。新商品を開発しなければ...。長谷氏の脳裏に浮かんだのは、ある料理人の言葉だった。

頼みの綱は定評のある土鍋

「最近はギフトとしての需要が増えている」と長谷製陶の長谷社長は語る「最近はギフトとしての需要が増えている」と長谷製陶の長谷社長は語る

「伊賀の土でつくられた土鍋を使って調理すると、おいしくできる」。同社の商品を使っていた京都の料亭の料理人から言われていたのだ。

その背景には、伊賀で焼き物づくりに使う土の存在があった。同社が使っているのは、植物や微生物が堆積してできた古琵琶湖層の土。火にかけると植物や微生物が燃えて、小さな穴ができる。この穴に熱が蓄えられ、ほかの土鍋にはないおいしさを生み出していたのだ。

だが、いくらおいしいご飯が炊けたとしても、土鍋を使うのは面倒。火加減の調節や吹きこぼれへの注意も必要だ。料理人ならともかく、一般の人が炊飯器を選ぶのは当然だ。

「ご飯は日常的に食べるものだからこそ、誰もがおいしいご飯を食べたいと思っているはず。おいしいご飯が手軽に炊ける土鍋をつくろう」。長谷氏は決心した。

試作品は1000以上

「かまどさん」を使った料理をより楽しんでもらうために、同社はパンフレットにさまざまなレシピを掲載している「かまどさん」を使った料理をより楽しんでもらうために、同社はパンフレットにさまざまなレシピを掲載している

土鍋でご飯を炊く際の課題は二つある。一つは火加減だ。「はじめチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いてもふたとるな」という言葉通り、火加減が重要。火の調節のため土鍋の側を離れられず、炊飯器に比べ時間の拘束が強くなる。

しかし、伊賀の土が長谷氏に味方した。土鍋は厚みがあるため、火にかけても内部に急激に熱を伝えない。一方、穴に蓄えられた熱はすぐに放出されず、火を消しても20分ほどは温度が下がらない。蒸らしの効果が生まれ、おいしく炊けるのだ。

もう一つの課題は吹きこぼれ。これは、構造の工夫で解決した。吹きこぼれ防止用に内蓋を製作。その内蓋に溝を設け、外に吹きこぼれないようにしたのだ。

この構造にたどり着くまで、長谷氏は何度も試作品をつくり、ご飯を炊き続けた。「家族だけでは食べきれなかったので、従業員にも持って帰ってもらった」(長谷氏)。

おいしく炊けた時は喜ばれるが、大半は失敗作。火加減に失敗したご飯を持って帰るはめになった従業員もいたという。

注文殺到で電話回線がパンク

東京・恵比寿にある長谷製陶の直営店。店内にはキッチンが備え付けられ、「かまどさん」の使い方の実演が行われる東京・恵比寿にある長谷製陶の直営店。店内にはキッチンが備え付けられ、「かまどさん」の使い方の実演が行われる

3年以上の開発期間を経て「かまどさん」が完成。2000年に販売を開始したが、初年度はまったく売れなかった。翌年、テレビの料理番組で取り上げられたことで注文が殺到。同社がある地域は電話回線が少なく、1週間回線がパンクするという事態になった。

その上、当時の在庫はたった1000個。製造には1カ月以上要するため、注文に応じられない状況が続いた。売り上げが伸びていく中、長谷氏の心には「本当に喜んで使ってもらえているのだろうか」という不安が渦巻いていた。

そこで購入者にアンケートを実施。すると1割の人が購入したにもかかわらず、その後は使っていないことが判明した。

驚いた長谷氏は理由を調べた。すると使い方を間違えておいしく炊けなかった、蓋を割ってしまって使えなくなったという理由が浮かび上がった。

当初のターゲットは「おこげの味を知っている60歳代以上の人」(長谷氏)。しかし、最近では若い人が購入することも多いという当初のターゲットは「おこげの味を知っている60歳代以上の人」(長谷氏)。しかし、最近では若い人が購入することも多いという

使い方を間違えていた購入者には使い方を教える。蓋を割ってしまった人には蓋のみ販売する。そうした取り組みを急きょ開始した。

「社内からは『蓋だけの販売をしてしまうと儲からない』という声が上がった」と長谷氏は語る。

「かまどさん」は手づくりのため、同じサイズでも蓋の大きさは微妙に異なる。購入希望者には、持っている土鍋の直径を測ってもらい、その大きさと同じものを在庫の中から探して発送する。手間がかかるのだ。しかし、パーツ販売により、確実に購入者の満足度が上がったと長谷氏は語る。「売りっ放しにしていたら、悪い評判が立っていたかもしれない。アンケートをとって対応してよかった」。

会社の危機を救った「かまどさん」。現在も「おいしいご飯を食べたい」という欲求に応えるために日々奮闘している。

会社概要

企業名 長谷製陶株式会社
所在地 三重県伊賀市丸柱569
資本金 1000万円
従業員 56人
電話 0595-44-1511
URL http://www.igamono.co.jp/

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