500円健診は「健診難民」を救う
| 不況の影響で飲食業を中心に「ワンコインビジネス」の話題が増える中、健康にまつわるものも登場した。2008年11月に東京・中野にオープンした「ケアプロ」の斬新なサービス「1分血液検査」が注目を集めている。 |
既存の健診を受けない人たち
川添高志・ケアプロ社長と店舗スタッフの浅井裕美氏。ワンコイン健診で生活習慣病予防、メタボ対策を。中野駅からほど近い集合ショッピング施設「中野ブロードウェイ」に開店したケアプロ(東京都中野区)は、4月中旬の時点で3000人の来店者を数え、「会社の健診で気になった数値を定期的に確認する人など、リピーターが増えている」(川添高志社長)盛況ぶりだ。
ケアプロが提供するサービスは「1分血液検査」。消毒・採血・吸引という簡単なプロセスで、「血糖値」「総コレステロール」「中性脂肪」「身長・体重・BMI(肥満度)・血圧・骨密度」の全4項目を検査しても、10分足らずで結果が判明する手軽さが特徴だ。
「会社の健康診断」がある会社員には、街中で健診を受ける実感がわかないかもしれない。しかし、主婦や個人事業者など、定期的な健康チェックの機会を持たない人も実は多い。勤務先の社会保険に加入できないフリーターもその一例だろう。
「来店者のうち、健診を1年以上受けていない人が8割」と川添氏は話す。「20年も健診を受けていなかった人もいて驚かされた」。
川添氏によると、来店者の年齢層は20〜80歳代までと幅広い。職業別では、老若問わず主婦の占める割合が最も大きく、このほかに近隣の商店主の利用も少なくない。
だが、来店者の居住地は近隣に限らない。その内訳は現在、都内在住者が7割だが、埼玉、千葉、神奈川からの来店者が2割を占める。勤務地が中野周辺の人が帰宅時に利用するケースが多いものと想定していたが「1割程度と少ない」という。
コンビニ的な構想に得た賛意

1項目は500円だが、全4項目を検査した場合は1500円。平均単価は1000円程度だという。
ケアプロの原点は、看護師・保健師でもある川添氏が病院に勤務していたときに、糖尿病患者から言われた言葉にある。
「客観的な数値から健康状態を把握していればよかった」――。合併症による失明、足の切断といった結果に至った人たちが発する偽りのない悔いを聞き、川添氏は健診を利用しなかった理由を尋ねずにはいられなかった。
答えは、「フリーターだと健診の恩恵をそもそも受けられない」「住民健診はあるが交通の便が悪い。病院に行っても待ち時間が長い」といったものだった。
「受診を難しくしている要因は多々あり、満たされていないニーズがある」と確信した。生活習慣病予防の重要性はしばしば指摘されている。コンビニのように利用できるサービスがあれば、手軽な解決策になると考えた。そこで「1分血液検査」のアイデアを練り上げ、患者に話すと好意的に評価されたのだった。
ケアプロの設立は07年12月。直後は検査結果確認用サイトを使った検査結果の蓄積・表示に関するビジネスモデルの特許申請や検査設備の購入などに時間を割いた。また、フィットネスクラブで出張健診を行ったり、中小企業向けの健康イベントに出展したりと精力的に動いた。この間の受診者は約1000人。500円という料金設定も好評を得ることができた。
FC展開も見据えて事業モデルを構築
指先にこの器具をあてて採血する。ごく短い時間で終わる作業だ。川添氏は実務面の準備だけでなく、ビジネスモデルの構築にも力を入れた。範としたのは格安ヘアカットで全国に400近い店舗をFC(フランチャイズチェーン)展開する企業だ。「店舗のオペレーションだけでなく、FCビジネスのノウハウや実際を学ぶ機会になった」という。
開店前に大きな壁として立ちはだかったのは、店舗向け物件の獲得。当初は集客力の高い「エキナカ」を狙った。
しかし、前例がないこともあり、色よい反応は得られなかった。使い捨て採血器具を使用、感染対策は病院と同レベルとし、廃棄物も医療専門の業者に委託するなどして安全性に配慮する点を強調したが難しかった。
難航の末、中野ブロードウェイに辿り着いた。中野区は東京23区内でも20〜30歳代の人口が多い。ケアプロがターゲットの中心と考えた層だった。「『メタボ』をもっと強く打ち出すのであれば新橋駅周辺での出店が常道だったかもしれないが、ブームの一服感もあり、『フリーター』も重視」(川添氏)して入居を決定した。
業界のルールづくりが不可欠
採血器具(左上)は使い捨てのもの。検査結果の書面(中央)には健康に関するアドバイスも。会員カード(右上)に記載された「検査結果確認用サイト」(携帯電話・パソコン)には個人の結果が蓄積される仕組み。ケアプロのビジネスは業種で分類すると「サービス業」。病院・クリニックによる医療とは一線を画している。
とはいえ、医療機関で使用する設備を使用し、検査結果に合わせた食事の取り方など、保健指導も行うため、保健師資格を持つスタッフが常駐する。
これは将来を考えてのことだ。川添氏は、看護師が医師に代わり薬剤の処方や注射などを行う米国流の「ナースプラクティショナー」が日本で導入されたときのビジネスをすでに思い描いているのだ。
「現在の法的な枠組みではまだ不可能だが、将来的には検査だけでなく、診断や薬の処方もできるような事業にしたい」
川添氏はケアプロの開業に備え、東京大学医療政策人材養成講座で、医師、厚生労働省の官僚らに交じって学んだ。この経験から、ケアプロの成長は独力では難しいと認識している。「(事業の成長には)医療機関との連携とビジネスを法的に定義することが重要になってくる」
医療機関との連携に関しては、検査結果のシートにケアプロが提携する病院検索サイト「ここカラダ」のURLを掲載し、医師に相談するルートがすぐに開けるようにするなど、すでに配慮している。「開店以降、ワンコインのサービスがちょうど注目されるようになった」と語る川添氏。景気悪化が進めば進むほど、手軽な「ワンコイン健診」の独自性は際立っていきそうだ。
| 企業名 | ケアプロ |
|---|---|
| 所在地 | 東京都中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ1階 |
| 資本金 | 1000万円 |
| 電話 | 03-5942-8981 |
| URL | http://carepro.co.jp/ |
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