独自の特産品ブランドを開発
| 最近、都道府県をはじめとした全国の自治体が、独自のブランド特産品を作り、育て、売り込もうという試みを開始している。その中には思いもかけぬ新食材が眠っているはずだ。長野県では県が主導し地鶏の開発に取り組んでいる。 |
ブランド力の強い商品を作り、流通しろ!
昨今東京でよく見られるのが、郷土料理店。それも食材を直送し、地元料理を地元の食材でいうコンセプトの店が多く出店している。その流れに呼応してか、最近では多くの都道府県で、独自のブランド食材を作り育てようという試みが盛んに行われ始めてきた。ブランド化の推進を図る部署を庁内に設置し、多角的な取り組みを開始しているのだ。
もちろん、地域イメージを高めブランド化に結び付けることが大事だが、現在は農産物や畜産物などを地域独自のブランド食材として、より広域なエリア、さらには東京などの大都市へと流通しようとする試みがされている。それら独自ブランドには、外食業者としても見逃せない高質な食材が隠されていることが多い。
これは長野県の農産物における全国シェア第1位と言えば、リンゴというイメージがあるが、実は青森県について全国2位。山梨県の特産品と思っていたぶどうの巨峰や、水産物のイワナが堂々の1位を占めていることは、あまり知られていない。つまり、農業県とも言われる長野県の中で、これぞ長野ブランド、信州ブランドと正しく認知されているものがないというのが現実なのである。
この現実を是正し、広く長野産農産物の販促、PRをしていこうということから、一昨年4月には長野県農政部農業政策課内にマーケティング係が発足した。
これ以外に県には、企画局内にブランド係が別途設置されているが、こちらは観光を主体とした商工関係のブランド力のアップを担う。マーケティング係とは、まさに川上にいる生産者と川下にいる消費者とを仲介し、マッチングさせていくことを主眼としている。いわば「作って売る」から「売れるものを作る」とシフト転換し、よりブランド力の強い商品を作り、流通する。その推進役としてマーケティング係が誕生したというわけだ。
そしていまマーケティング係が、イチオシ食材として積極的に販促・PRをしているのが、信州黄金シャモである。
県主導で開発した「信州黄金シャモ」
県が主導し開発した信州黄金シャモ長野県では県畜産試験場が中心となって、1997年にシャモ×白色プリマスロックを交配した「しなの鶏」を開発。県内各地の地域ブランドとして、前知事の登場により公共事業が減少した建設業者などの新規事業(地鶏飼育)参入ツールとして活用されてきた。
その後飼育に先進的に取り組んできた地鶏生産者から、より小型化された新品種開発の要望を受け、2001年から新たな地鶏の開発に着手。2006年に晴れてシャモ×名古屋コーチンの交配により完成したのが信州黄金シャモである。
この新地鶏の名については、小布施町で開催された「食育全国フォーラム」に列席した料理研究家、服部幸應氏から「信州の大自然で育ち、羽色と料理の焼き色が黄金に輝く」ことから信州黄金シャモと命名されたという。
前身の「しなの鶏」については、飼育される地域によってブランド名が変わっていったが、この信州黄金シャモは県統一ブランドとして、内外に販売・PRしている。最大の特徴は、「歯ごたえがあり、もともと美味なシャモと、コクに定評がある名古屋コーチンとが交配し生まれた絶妙な味のバランス」にあると、県畜産課畜産改良係の神田章氏は語る。
つまりは「肉の味が深く、歯ごたえがあり、なかでも皮がおいしく、コラーゲンたっぷりのガラスープも本当においしい」ということになる。従来の「しなの鶏」に比べても、カロリーが控えめであり、うまみ系アミノ酸のアスパラギン酸、グルタミン酸、あま味系アミノ酸のセリンの含有率が高いことから、後味を引かないさっぱり感を醸し出す。
食材で他店との差別化を図っていきたい
ふ化した雛は30日間畜産試験場で育て、その後県内13の農場に分けられ出荷まで飼育される。しかもそれはJASで決められた飼育規格を超え、(1)飼育期間:ふ化日から120日以上、(2)飼育方法:28日齢以降平飼い飼育、(3)28日齢以降1平方メートル当たり5羽以下という生産方式をとり、かつ厳格な衛生管理のもと飼育されている(事実、記者も鶏舎に入る際には複数回の消毒を行った)。
開発中から県内の調理師協会や飲食店、ホテルに県職員が営業をかけ、信州黄金シャモを使った料理を試食してもらった。評判は上々で、現在では県内73の店(飲食店、ホテル、精肉店など)のほか、東京でも3店(いずれも飲食店)で取り扱われている。価格は100g300円程度。現状では7,000羽程度の飼育数だが、今後は5万羽程度まで規模を広げていきたいという(ちなみに薩摩地鶏は10万羽、仙台・伊達鶏は5万羽程度)。信州発のブランドとして、広くPRをしていく予定だ。
昨今の地産地消の流れや、郷土料理ブームとあいまって、長野県以外でも多くの地元特産の食材が開発され、外食関係者からも脚光を浴びている。食の安全が問われる今だからこそ、食材で他店との差別化を図っていきたいものである。
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