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銀座木村屋長男が起業【ブーランジェリー エーリックカイザー ジャポン】

木村社長 日本人好みにアレンジされていない、本場のフランスパンが並んでいるメゾンカイザー。2001年に高輪店がオープンして以来、人気を呼び、現在は東京を中心に9店舗、デパートでも4つの売り場をもっている。このメゾンカイザー社長が、銀座木村屋の長男であることも業界では話題になった。昨年9月には、サンシャイン池袋にカフェ・バールをオープンし、行列店となっている。

パン製造業でなく「パンのある素敵な生活を共有する場」

メゾンカイザーの店舗には、町のパン屋とはまったく違う雰囲気がある。いかにもフランス。パンだけでなく、少し落ち着いた照明に木の床や店内や置いてあるジャム、キャラメルなどにもフランスの雰囲気が漂っている。

池袋店では、パンはガラスケースの中に並んでいる池袋店では、パンはガラスケースの中に並んでいる

「メゾンカイザーが、パンとお菓子の製造販売業だと思うと誰も理解できません。パンのある素敵な生活をお客さまと共有する場にしていきたいと考えています。だから、コーヒーやバター、小麦粉など、自分たちが欲しくて開発したものは、プライベートブランドにしないで、来店客や周囲のパン屋さんにも共有化していきたい」と木村社長はいう。

「これは、自分たちの力量を正確に理解しているからでもあります。我々は人気店にはなれるかもしれないが、マーケットは作れない。たとえば、ひとりの人が1年あたりに消費するパンのなかでシェアアップを考えるのであれば、リピート率の向上となる。しかし当社がやりたいことは、パンを食べる人を増やすこと。これは1社でできることではない」と木村社長はいう。

木村社長は大学卒業後7年間、大手生命保険会社で法人営業をしていた。そこで学んだマーケットの見方がいまも生かされている。同社がめざすのは、食事パンの市場を広げること。その結果として、「食事パン、フランスパンのなかではメゾンカイザーが一番おいしい」と言ってもらえればいいのだという。

日本で固い食事パンのおいしさを伝える

日本の製パン業界は、これまで菓子パン中心で展開してきた。
 日本人は欧米人に比べてあごの筋肉が弱いから固いパンは売れない、というのがマーケティングの通説。実際店頭に並ぶのはやわらかいパンばかりで、これはよく売れた。

カフェ・バールの店内。落ち着いた雰囲気の店内には、向かいの店舗からワインを持ち込むこともできるカフェ・バールの店内。落ち着いた雰囲気の店内には、向かいの店舗からワインを持ち込むこともできる

でも、固いパンの需要は本当にないのか。
 通常、菓子パンは袋に入れて売られるが、固いパンは袋にいれられない。密閉すると、袋の中で湿度が均一化し、かみ切れないパンになってしまうためだ。流通上の問題からスーパーやコンビニには並ばない固いパンを、どう食べていいかわからなかった、というのが現実だったのではないか。

「マーケティングが大事なことは生保時代に学んできたが、これは諸刃の剣になる。データに振り回され、翻弄されることは避けたい」と木村社長はいう。
 自分たちはお客さまに何を提供したいのか、ここを追求していきたいと考えている。

スターバックス社長の一言に目覚めた

ゆったりとしたテラス席で食事を楽しむこともできるゆったりとしたテラス席で食事を楽しむこともできる

小規模ではじめたので、赤字こそ出さなかったが、起業後半年ぐらいは木村社長も悩むことが多かった。従業員とうまくいかない。売り上げが思うように上がらない。なんとかしなければ、とあせる気持ちが空回りする。どうしたらいいのか。そんなとき、異業種交流会で、サザビーの鈴木陸三社長(当時)とそのお兄さんでスターバックスの角田雄二社長に出会った。

「なんだ、しけた顔をして」と声をかけられ、「なかなかうまくいかない、従業員ともうまくいっていない」とこぼすと、「従業員とあなたは違う人なんだから、あなたの考えていることなんて、わかるわけがない。もともと働いているモチベーションが違うんだから、オレがやってるんだから、おまえたちもやってくれ、といっても通じるわけがない」といわれた。この言葉に、目が覚めた。翌朝からは従業員の接し方も自然と変わっていた。

賞与が臨時給与という認識を排除

メゾンカイザーは、朝ご飯に間に合うよう8時からオープンしている。オープン前でも、通りがかりに店内をのぞき込むと、「焼きたてがありますので、どうぞ」とドアを開けて声をかけてくれる。ベビーカーで店に入ろうとすると、中から店員が飛んできてくれる。
 どういう教育をしているのかと思い、木村社長に聞いてみると、「うちは販売の人はいません。『接客の人』というんです」という答えが返ってきた。
 接客の人だけでなく、職人にも、このお客さまはこのパンをどう食べるだろう、と考えてほしいと言っている。

現在、パート含めて190人の従業員がいる。最近は従業員が急増したため、ひとり当たりの生産効率が落ちてきた。同社では、効率が悪ければ利益率が下がる、利益率が下がればボーナスも下がるというシステムになっている。

前職で労働組合の経験をもつ木村社長は、賞与が臨時給与だという認識は、組織をだめにすると感じていた。だから同社では、なぜボーナスが上がったのか、下がったのか、どんな立場の人にも理解することが期待されている。

「おいしいパンはいい職人がいれば焼けるし、かっこいい店は優秀なデザイナーがいれば作れる。我々はそんなことをめざしているわけじゃない。パンのある食卓はハレの日の食事だという製粉会社の調査結果があります。パンを通して食事の場がもっと楽しくなるお手伝いをしていきたい」

会社概要

企業名 株式会社ブーランジェリー エーリックカイザー ジャポン
代表取締役 木村周一郎
所在地 東京都港区三田4-10-5
電話 03-3798-1771
従業員数 190人(パート含む)
URL http://www.maisonkayser.co.jp/
掲載日:2008年9月 2日

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