七転び八起きで65歳の起業 モットーは生涯現役【セールスレップコラボ】
自分らしい仕事をしたいと考え、起業したシニアにエールを送るコーナーです。
48歳で電気設備業を畳んでから、不動産業や派遣社員、心理カウンセラーなどを経て、65歳で起業した堀部武司氏。どんな厳しい状況も“新しいことを学ぶ機会”と前向きにとらえる堀部氏は、70歳となった今も、新しいビジネスの普及に挑戦している。
生涯現役がモットーの堀部さん。覚悟を決めて前向きに取り組むことがピンチ脱出につながるという。 |
株式会社セールスレップコラボ 代表取締役 堀部武司<ほりべ・たけし> 1939年生まれ。大学卒業後、会社員を経て、父の経営する電気設備会社に入社。45歳で社長に就任するも、不況の影響で48歳で事業を畳む。その後、不動産販売や心理カウンセラーを経て、2006年5月、(株)セールスレップコラボを設立。 |
欧米で一般的な営業代行サービスをビジネスに
- ――セールスレップとは、具体的にどんなサービスなのでしょうか?
- セールスレップとは、営業代行および販売代行という意味で、企業の商品やサービスを当社に登録しているセールスマンが代行して販売するというものです。現在、フリーの営業マンのほか、会社を経営している人、保険の代理店をやっている人、企業に勤めながら自分の販路に商材を乗せようという人など、約30人がセールスレップとして登録しています。
- ――セールスレップが扱う商材はどんなものがありますか?
- 健康食品からコンサルティングまでさまざまです。ただ、現代は、でき上がった商材を預かって売るという方法ではなかなかモノは売れませんので、当社では、顧客が求めるものが何かを理解し、それを作るという商品開発の段階から相談にのっています。とくに、中小企業は、どうしてもプロダクトアウトの発想に終始してしまいがちなので、そうした企業に、マーケティングの発想を教えることもしています。
- ――堀部さんご自身がそうした指導をされるのですか?
- はい。これまでの仕事を通じ、関西には幅広い人脈がありますので、必要に応じて、いろんな専門家と協力してやっています。たとえば、イベントをやろうという場合には、イベントに詳しい人と一緒にやることができます。つまり、いろんな専門家とコラボレーションしながら、サービスを提供するのが当社の特徴です。
48歳で廃業。さまざまな仕事を経て65歳で起業
- ――セールスレップの事業を始められたのは、65歳の時でした。それまでいろんな仕事を経験されたそうですね。
- 大学卒業後、3年ほど会社勤めをした後、父親の経営していた電気工事会社に入りました。もともと私は技術者でしたが、事業には顧客の獲得が大切だと思い、以来、営業ひと筋でやってきました。45歳で社長に就任したのですが、ちょうどオイルショック、ニクソンショックなどが起こり、企業の設備投資がぱたっと止まり、その影響で当社の受注もなくなってしまい、48歳のときに事業を畳むことになりました。
- ――48歳でゼロになるというのは、大変なことでしたね。
- それは、本当にショックで、どうしようかと無茶苦茶悩みましたよ。ただ、何もしないわけにはいきませんから、いろんな人に相談したところ、友人のつてで、不動産業に入ることになりました。資格を取って、不動産の仲介業をやったり、東京の不動産会社の大阪出店をサポートする仕事などをしましたが、不況や本社の経営方針の転換などで、仕事を続けられなくなってしまいました。その後、知り合いの紹介で住宅販売会社の周辺クレーム対策を請け負うことになりました。
- ――クレーム対策ですか?
- そうです。住宅販売というのはクレーム産業と言われ、一軒家を建てるのにも周辺対策が必要なんです。それまでは社長がクレーム対策を担当していたのですが、その処理に追われてなかなか本来の仕事ができないので私が手伝うことになったのです。最初は「こんなもんやってられへん」と思ったのですが、これまで自分は事業を畳んだたとはいえ、二代目として何の苦労も知らずにここまでやってきた。であれば、本当の苦労をいっぺん経験したれと思ったんです。この仕事は4年半やりましたが、人間の心の裏を学ぶいい勉強になりました。
- ――その後、電気設備会社の派遣社員を経て、61歳で「アイこころ心理学研究所」を設立されました。
- 電気設備会社では、携帯電話のアンテナの設置場所を確保する交渉作業を請け負いました。住宅販売会社では個人相手の交渉でしたが、今度は企業を相手の交渉です。ただ、相手が個人であれ企業であれ、人を説得するという意味では同じでした。そこで、こうした経験を活かし、人の心に働きかける仕事をしようと思い、還暦を迎えたのを機に、心理カウンセラーの資格をとり、離婚問題専門のカウンセラーになりました。
- ――しかし、65歳の時にセールスレップコラボを設立され、再びビジネスの世界に戻られたのですね。
- 心理カウンセラーとして文化サロンなどでセミナーも開催しており、その原稿をまとめて本にし、出版記念パーティーをしたところ、昔の友達が「セールスレップという仕事があるのでやらないか」と言ってきたのです。商売はモノが動いているように見えるけれど、実はモノを動かしているのは人間。つまり、人の心が商売をしているんです。であれば、これまで自分がやってきたことがこの仕事にも活かせるのではないかと思い、セールスレップの会社を作ることにしたのです。
ビジネスマンを対象に心理学のセミナーも行なっている。テクニックやスキルの奥にある人の心を学ぶことで、営業力も高まるという。ピンチはチャンス。前向きに考えることが危機脱出につながる
- ――登録しているたくさんのセールスレップを統率するのは、大変ではないですか。
- 個人で営業をしている人たちは、個性の固まりのような人ばかりで、営業の仕方も10人あれば10通りあります。私は、自身のスタイルを押し付けるのではなく、それぞれの人のやり方を尊重し、バックアップすることを心がけています。ただ、従来の型にはまって営業がうまくいかないときは、手法の見直しもアドバイスします。そのさいに役立つのが心理学です。とくに、30代などの若い人の場合、セールストークなどテクニカルなことは知っていますが、営業の根底にあるものを理解していない人も多い。そういう人たちに心理学に基づいたアドバイスをすることで、小手先ではない営業力が身につくのです。
- ――現在、70歳を迎えられたわけですが、まだまだ引退するご様子はないですね。
- 欧米では営業をアウトソーシングすることは一般的ですが、日本では営業は自社でというのがもっぱらです。しかし、営業を外部委託すれば、営業マンの人件費が固定費にならないため、企業にとってメリットは大きく、とくに新しい商品やサービスを売りたいという中小企業にとっては利用価値が大きいのです。ですから、このビジネススタイルを普及させることが当社の役割だと考えており、定着するまでは現役で頑張ろうと思っています。
- ――堀部さんは、48歳で事業を畳まれてから、常に新しいことに挑戦してこられました。今、100年に1度といわれる不況に多くの人が苦しんでいます。この人たちへのアドバイスをお願いします。
- 私が電気設備業を経営していたとき、「会社の業績が悪いのは不況のせいだ」と考えるとなんとなく安心できました。けれど、それは苦しい状況から目をそむけていただけで、何の解決策にもならなかったのです。厳しい状況にあるときは、それを現実として受け止めた上で、この状況をどうすればいいのか、前向きに考えることが大切なのです。100年に1度のピンチは、100年に1度のチャンスだと思うことが必要です。
- グローバリゼーションだとか言われますが、自分の手が届く範囲は限られています。まずは、自分の足元をしっかり見つめ、自分の回りの人を幸せにすることから取り組むことが大切なのです。
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