再チャレンジ成功「1割の違い」
経営者が再チャレンジするときには、自分と商品、従業員に1割の色と衣を付けること―過去20年に7,000名以上の中小企業の経営相談に携わってきた倒産防止互助会会長・磯崎暁氏の結論である。磯崎氏の指導方法を公開していただいた。
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磯崎暁(いそざき あきら) 1943年香川県生まれ。明治大学卒業。関東経営協会会長として中小企業の経営指導に従事するかたわら1986年倒産防止互助会を設立。著書・論文「倒産危機かけこみ本」「倒産―悲劇を防ぐ法と再起への道」「いま、再生へ勇断の時。」「倒産防止と民事再生法」 |
自分を信じてくれる人、自分で信じられる人――ふたつの存在
- ――磯崎さんが1986年に倒産防止互助会を設立して以来20年で、7,000名以上(注:2007年8月24日時点で7,243名)の中小企業経営者の相談に乗ってきて、再起・再建までサポートしてきた経験から、再起・再建できなかった人について伺います。
- 私の経験として、経営者として再起・再建できた人は3〜5人に1人ぐらいの割合です。そのぐらい再起・再建は難しいと言えます。
- 会社を破綻させた経営者の多くが、失敗の原因を他所に求めています。世の中が悪い、社員が悪い、銀行が悪い、取引先が悪い、というように。本来、破綻したときには債権者の立場や世間の立場で、自分の会社と自分自身を総括することが必要です。
- つまり原点に帰ることです。それができない経営者は再起・再建できません。なぜなら協力してくれる人を得られないからです。
- ――再チャレンジには協力者が不可欠ですが、協力者がつくには、まず失った信用をどう回復するかが問われます。ところが、好調だった時代の幻影をひきずっていて、信用を失った現実を自覚していない経営者が多くありませんか。
- 自分の置かれている状況を認識していない経営者は多いですね。「再チャレンジの資格」は2つあります。1つは、自分を信じてくれる人がいること。もう1つは、自分で信じられる人がいること。要は、家族や友人、知人など身近な人たちの協力を得られなければ、経営者としての再チャレンジを諦めた方がよいでしょう。自分の内に「信じる」ことが存在していることが大事なことです。
- 信用を得るには、単純なことですが、ウソをつかない、約束を守る、裏切らないことなどが絶対条件です。自分自身が相手を「信じる」ことも大切です。私は相談にくる経営者に対して、言葉の裏にウソがないかどうか、徹底的に問いただします。
- ――ウソがないかどうかは、どうやって見抜くのですか。
- もっともらしい言葉を口にしていても心にウソのある人は、相手を信用していないので、会話の中に自然にほころびが出てきます。相対した人間と誠心誠意向き合おうという姿勢が見られません。いかにして言葉で繕ってうまくその場を過ごすということで頭の中が一杯になってしまい、心は二の次、三の次になっています。
- アメリカでは再起できる人が日本に比べて多いと言われていますが、背景は社会の仕組みだけではありません。ビジネスマンとしての心をもっている人が再起できているのです。後ろ指を指されない言動をとらないと、本当の協力者が現われません。
自分と商品に「1割の色と衣」を付けよう!
- ――ビジネスに対するスタンスには、どんな改善が求められますか。
- 私は「1割の違い」を指導しています。競合の商品やサービスに比べて2割や3割進んでいたら世の中がついてきません。世の中と離れてしまいます。自分自身と従業員、商品・サービスに1割の色と衣を付けられるかどうかが大切です。1割の違いがあれば、二番煎じの事業であっても構いません。
- 時代の流れの中で、常に1割の違いを保ち続けること。これは、倒産しない条件でもあるのです。しかし、1割の違いをつかまずに再起を図ろうとする経営者が多いのが現実です。それは、自分を見る目、時代の先を見る目がきちんとしていないからです。
- ――割の違いをつかまない経営者の行動に多くみられる特徴は何でしょうか。
- たとえば、最先端という概念の勘違いです。販売業者の言いなりに電話、パソコン、コピー機の最新機種を揃えてしまい、毎月のリース代が100万円近くに及んでいる小売店があります。それだけのコストをかけて元がとれるのかどうかを、見極めていないのです。
- それから、いまは何でもかんでもホームページを作って注文をとることが、最先端と考えている経営者が少なくありません。ホームページへのアクセスを増やして受注に結び付けるには、相当なコストをかけたプロモーションが必要なのに、そこを見落としているわけです。
- たとえホームページがなくても、本物の商品力があれば口コミで注文が入りますし、従業員もついてくるものです。
- ――再チャレンジするビジネスはいままでと同業種である必要はありませんが、なぜこの人がこのビジネスに手を出しているのか、整合性や必然性がまったく見えないケースもあります。いままでのキャリアを活用することが現実的ではないでしょうか。
- いままでの業種での再チャレンジ、360度まったく違う業種での再チャレンジ、この2種類があります。後者の場合、家族や親類、知人などがその業種に携わっていて、その知識や経験を活用できることが大きな前提になります。活用できなければ成功しません。
- ところが現実には、Aさんにこのビジネスが儲かると勧められたから、Bさんには別のビジネスを勧められたからというよう動機で、あっちに手を出し、こっちに手を出し、というように迷走している人が多いのです。
- 自分が培ってきたキャリアは何か、その原点を見つめ直すことが大切です。
邪心を捨てて真心をもてば運は変わる
- ――磯崎さんは、再チャレンジにさいして住む場所を変えることも提案しています。慣れない土地での生活は再チャレンジの障害になりませんか。
- たとえば小さな町に住んでいると倒産したことがすぐに知れわたって、ギクシャクした人間関係の中に置かれたまま再起にのぞまなければならないこともあります。そうであれば別の土地に引っ越して、新しい人間関係を作って再出発するのもよいでしょう。
- 失敗の原因には、人間関係が悪かったこともあるかもしれません。その人間関係から離れて、新しい土地で自分にも相手にもプラスになる人間関係を新しく築く勇気が必要ではないかと思います。
- ――再チャレンジして成功するには運も大切でしょう。
- コンサルタントの立場で申し上げるのはどうかとも思いますが、実は、再チャレンジで一番大切なものは“運”です。どんなに努力をしても運のない人はうまくいきません。実際、そういう人はいます。なぜ運に恵まれないのでしょうか。それは、邪心があるからであり、一方で真心がないからではないかと私は思います。
- さらに運にも関係してきますが、時代の先を読み、時の力を見極めること。たとえば、いまの時期はAさんに仕事を依頼すべきか、それともBさんに依頼すべきか。明暗を分けるのは時の力であり、これを見誤ると失敗します。
- ――ありがとうございました。
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