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アイデアを刺激する 最新科学技術キーワード


“生命の設計図”医療に生かす「パーソナルゲノム解析」

「ヒトゲノム計画」の完了から今年で10年目を迎えた。かつては膨大な時間と費用がかかっていたゲノムデータだが、今では短時間で解析できる。現代では、この技術進歩が“新しい差別”や“命の選別”などの懸念を生み出している。ゲノムデータは、未来を照らす灯台の光になることができるのか―。我々の知性が試されている。

【個別化医療の実現】

30億もの暗号文字(塩基対)で記され、生命の設計図と言われるヒトゲノム(全遺伝情報)。日米欧などがその解読に挑んだ「ヒトゲノム計画」の完了から、2013年は10年目に当たる。かつてはスーパーコンピューターを駆使し、膨大な時間と費用をかけて読み解いたゲノムデータ。今では卓上型の装置を使ってごく短時間で解析できるようになり、そのわずかな個人差と病気の関係を調べて、効果的な治療や予防につなげようという試みが進んでいる。
 最近ではゲノムデータを部分的に解析し、ヘルスケアなどに応用する遺伝子ビジネスも広がりをみせている。ただ、病気へのかかりやすさを示すゲノムの暗号解読技術には、新たな差別や命の選別につながりかねないといった側面もある。個々人が自らの遺伝情報を簡単に手に入れられる「パーソナルゲノム」時代が訪れようとする中、人はゲノムデータを賢く使いこなせるのだろうか。

図:近未来の病院ではゲノムデータを利用して薬の効き方や副作用を判定

図:近未来の病院ではゲノムデータを利用して薬の効き方や副作用を判定

遺伝子はDNAの二重らせん構造からなり、生物の遺伝情報はすべてDNAを構成する4種類の塩基の並び方によって表される。並び方にはところどころにわずかな個体差があり、この個体間の違い「一塩基多型」(SNP)が体質の違いを生む。このうち病気へのかかりやすさや治療薬の効き方、副作用の大きさにかかわる個体差が、製薬業界などで大きな関心事となっている。体質の違いを遺伝子レベルで調べることができれば、個々人の体質に合った治療法や治療薬、予防策を用いる「個別化医療」の実現につながるためだ。

【競う高速・低コスト解析】

どのような個体差が病気などに関係しているのかを突き止めるには、多くの人の塩基配列を調べて統計学的な傾向を割り出す必要がある。「ゲノムシーケンサー」と呼ばれる解析装置の進歩がそれを可能にした。ヒトゲノム計画では13年間の年月と、米国だけで30億ドルもの予算を投じた1人分のゲノム解析だが、シーケンサー大手の米ライフテクノロジーズは解析にかかる時間が1日、費用が1000ドルの装置を開発。業界最大手の米イルミナなども、これをしのぐ高速・低コストの装置の開発を進めている。
 解析技術の発展を追い風に、病気や薬剤と遺伝子の関係を解明する研究も進んでいる。日本では文部科学省の「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」で理化学研究所や東京大学医科学研究所が、2003年度から大規模な研究を推進。がんや心筋梗塞などの患者20万人のDNAや診療情報を分析し、病気や薬の効き方に関係する遺伝子を180個以上見つけた。
 理研はこれらの実用化に向けた臨床研究にも取り組んでいる。てんかん治療薬の副作用が出やすい患者や、乳がんの再発を抑える薬が効きにくい患者を遺伝子検査で見分け、治療法を改善するという。同プロジェクトのリーダーを務める理研の久保充明博士は「今後2年間の臨床研究で遺伝子検査の有用性を確認できれば、保険収載が期待できる」と、数年以内の実用化を目標に据える。

【遺伝子ビジネスの可能性】

米イルミナは医療目的で個人の全ゲノムを解析し、iPadに送信するサービスを提供(画面はフラットレー同社CEOのゲノムデータ)

米イルミナは医療目的で個人の全ゲノムを解析し、iPadに送信するサービスを提供(画面はフラットレー同社CEOのゲノムデータ)

ゲノム解析技術を用いた遺伝子ビジネスも広がりをみせ始めた。一般個人向けに遺伝子の一部を解析し、肥満になりやすい体質かどうかを調べるなどのサービスが、米国を中心に増えている。医師が患者の遺伝情報を基に、がんなどの病気にかかるリスクがどのくらいあるか、どうすれば予防できるかなどの相談に乗るということも、遠い将来の話ではなさそうだ。
 一方で新たな課題も浮上してきた。病気にかかるリスクの大小が就職や保険への加入に影響したり、胎児の生命をふるいにかけることにつながったりはしないかという懸念だ。究極の個人情報であるゲノムデータを誰にどこまで開示し、どう用いるかで、明確なルールが求められている。
 それでも「生命の設計図」をひもとく意義は大きい。日本人で初めて自身のゲノム解析結果を実名で公表した慶応義塾大学の冨田勝教授は「従来の医学は、たとえて言うなら設計図を持たずに壊れた家電製品を修理するようなものだった」と振り返る。ゲノムデータが医療の明日を照らす灯台となりつつある。


掲載日:2013年6月26日

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