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アイデアを刺激する 最新科学技術キーワード


「超伝導物質」探索の旅

絶対零度(マイナス約273度C)付近まで冷やしていくと電気抵抗が消失する超電導現象。磁気共鳴断層撮影装置(MRI)やリニアモーターカー、さらには話題の「ヒッグス粒子」の探索実験に使われた加速器など、一部では実用化も進む。住友電気工業は数年内の実用化を目指し、2013年1月に高温超電導ケーブルによる配電システムの実証試験を開始している。ただ、超電導に変わる「転移温度」が高ければ高いほど冷やす手間が少なくて済むのも確か。もし、室温で超電導になる物質が発見できたとしたら―。

【赤ワインに浸したら…】

2010年、超電導に関する意外な発見が日本であった。ある物質を酒に浸して温めたところ、転移温度が上昇。しかも、ビールや日本酒、ウイスキーなどを試した中で、赤ワインに浸した時が最も超電導現象が起こりやすく、しかも、「同じ赤ワインでもおいしい赤ワインのほうが反応が良い」のだという。
 不思議といえば不思議。だからこそ、宝探しのように思いもよらないところから、新しい超電導物質が見つかっていくかもしれない。

図:超電導に変わる転移温度の推移(年代別)

図:超電導に変わる転移温度の推移(年代別)

【酒に浸せば何かが起きる?】

赤ワインに浸して超電導現象を引き起こす実験をしたのは、物質・材料研究機構ナノフロンティア材料グループ。高野義彦リーダーは実験の狙いについて、「酒はいろんな物質が混ざり込んだ試薬のようなもの。酒に浸せば何かの反応が起こると思った」と話す。
 実験のきっかけは、研究室の学生が作製した鉄、テルル、セレンの化合物が、最初は超電導にならないのに、数日間空気中に放置しておくと超電導になることを偶然発見したことに始まる。この原因を探る中で酒に浸すアイデアが浮かんだ。
 酒漬けで超電導になる理由については、作製した化合物に含まれる余分な鉄イオンが、酒に反応して外に溶け出したためと最近判明した。赤ワインに含まれるさまざまな物質の中で、超電導の誘発と相関関係のある物質を割り出したところ、リンゴ酸、クエン酸など3種類の成分を特定。これらはうまみ成分のため、おいしい赤ワインほど超電導が起きやすい理由が説明できる。
 高野リーダーは「この原理をほかにも応用すれば、新たな超電導物質が見つけられる可能性がある」と話す。

【新発見は“松竹梅”で】

鉄系化合物を酒で煮たところ、おいしい赤ワインほど超電導を起こしやすかった

鉄系化合物を酒で煮たところ、おいしい赤ワインほど超電導を起こしやすかった

1911年に初めて超電導現象が発見されて以降、報告された超電導物質は2000種とも3000種とも言われる。その間、転移温度は徐々に上昇してきた。
 1986年にはドイツの物理学者のベドノルツと、スイスのミューラーが銅酸化物で超電導を発見、転移温度が飛躍的に向上した。2008年には、従来は超電導にならないとされてきた鉄系超電導物質を東京工業大学の細野秀雄教授らが発見し、世界の研究者を驚かせた。
 超電導物質の研究者の間で、新たな物質の発見はしばしば松竹梅に例えられる。転移温度がマイナス113度C以上のノーベル賞級の発見は松、マイナス196度Cまでは竹、それ以下は梅といった具合だ。マイナス196度Cは安価な液体窒素で冷却できるため、一つの目安になる。
 ごくありふれた物質の二ホウ化マグネシウム。それがマイナス234度Cで超電導になることを2001年に発見した青山学院大学の秋光純教授によれば、現状の転移温度を超える超電導物質は、今まで発見された物質とは異なる「全く新しいカテゴリーの物質でなければならないだろう」と予測する。
 物質の組み合わせは無限に存在し、候補化合物を作り出しても、実際に計測してみなければ超電導になるかどうかが分からないという難しさがある。これまでの研究の蓄積や勘を駆使して探索するしかない。

【室温の超電素物質は存在するか】

新しい超電導物質や転移温度を高める手法については、世界中の研究者がそれこそ寝る間を惜しんで研究中。2013年2月には、産業技術総合研究所と理化学研究所の研究チームが、水銀系銅酸化物が絶対温度153度(約マイナス120度C)で電気抵抗ゼロの超電導になることを発見したと発表。15万気圧という超高圧の条件下で実現した。さらに3月には岡山大学の研究チームが、122型と呼ばれる鉄系超電導物質で電気抵抗ゼロの超電導状態に移る転移温度を、絶対温度45度(同228度C)に高めることに成功した。これまで最高値だった絶対温度38度を上回った。
 まだまだ道は遠いような気もするが、果たして室温の超電導物質は存在するのだろうか。「(現在の最高転移温度)マイナス113度Cで頭打ちになる理由はない。僕は(室温超電導が)あると思って研究している」と秋光教授。「大きな発見には相当粘り強い研究が必要だ」と強調する。


掲載日:2013年5月29日

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