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アイデアを刺激する 最新科学技術キーワード


宇宙をかけるトロン

デジタルカメラ、ファクス、携帯電話、情報端末などに広く使われている日本生まれの組み込みOS(基本ソフト)「トロン」。そのトロンが日本の探査機や人工衛星の通信・姿勢制御、ミッション系機器制御のコンピューターの動作に使われるケースが増えてきた。高信頼性で低消費電力、そしてオープンアーキテクチャーにすぐれているからだ。海外の衛星には専用OSや有償の汎用リアルタイムOSが多く使われるなか、無償のトロンは宇宙機の主流になれるのか。宇宙を駆けるトロンの近未来を探る。

【"宇宙ヨット"にも搭載】

OSは機器を動かしたり制御したりする基本ソフト。トロンは東京大学教授の坂村健さんが提唱し日本で生まれたOSで、使用する用途に応じていくつかの種類がある。衛星では制御系コンピューターの組み込み用リアルタイムOSとして使われる「μITRON(マイクロアイトロン)」が代表格だ。

高度数百キロメートル以上の軌道を周回する人工衛星には地球観測衛星や科学衛星などさまざまあるが、10年ほど前からトロンを採用する日本の衛星が増えてきた。あの小惑星探査機「はやぶさ」もトロンを採用しているほか、5月に打ち上げた金星探査機「あかつき」、太陽光の光圧と太陽電池で動く宇宙帆船実証機「イカロス」にも使われている。

坂村さんは「衛星は信頼性と実時間処理が必要。消費電力も小さくしなければならない。そんな条件を満たすのがトロン」と強調する。宇宙航空研究開発機構(JAXA)主任開発員の石浜直樹さんも「5年ほど前から衛星のコンピューター制御としてトロンがかなり使われている」と話す。

トロンなどリアルタイムOSの消費電力はパソコンOSの10分の1程度。搭載機器を小型化できたり、寿命も長くできるなどメリットは大きい。ただ、衛星など宇宙機は専用OSや実績の高い「VxWorks」、「pSOS」といった汎用リアルタイムOSが"衛星OSの牙城"だ。

トロンを使う場合、衛星に載せる機器に応じて一つひとつ検証試験が必要となる。「宇宙用トロンにするためにチューニング(OSが効率よく動くようにプログラムの書き換えなどで最適に調整)している」(坂村さん)のだ。衛星は同じ設計思想でシリーズ化する場合を除いて「一品一品」異なるため、JAXAではこうした検証試験に時間とコストを費やす。VxWorksの場合、1本の使用費は300万円以上かかり、検証費は1000万円以上もするケースも。トロンは無償とはいえ、そうした検証試験を何度も繰り返している。

【小型衛星に活躍の場】

μITRONを使った小惑星探査機「はやぶさ」

μITRONを使った小惑星探査機「はやぶさ」

衛星やロケットは安全保障上の観点から、機器仕様がすべてオープンではなく、ブラックボックスのところも多い。数トンクラスの大型衛星となると、開発期間は5―10年、1基500億円前後と開発コストも高い。「宇宙でトラブルや故障が起きると、巨額な開発費は一瞬にしてパーになる」(JAXA)。海外の衛星ではコストが高くても信頼性第一にソフト資産を考慮して、専用OSや有償のリアルタイムOSへの依存度は高い。だが、数百キロ-10キログラム程度の小型衛星や数キログラムの超小型衛星なら、開発期間はおよそ1―3年で、数千万―数十億円ですむことから、オープンアーキテクチャーのトロンの活躍の場が広がるとみられる。

そのトロン利用の後押しともいえるのが標準化作業の始まった「スペースワイヤ」。OS上で動くミドルウエアに対応した日米欧による宇宙通信規格で、衛星に搭載する機器の共通インターフェースにしようとしている。オープン化の波は少しずつ広がりつつある。

【技術者不足が課題】

だが、課題もある。トロンを利用するコンピューター技術者の確保だ。「近年、コンピューター技術者が少ない。このままでは産業が衰退する」と坂村さんは憂慮する。

日本は財政難で持続的な予算の増額は難しい。しかし、打ち上げ期間が制限されていた種子島宇宙センター(鹿児島県)からの打ち上げが11年4月から通年になり、衛星の打ち上げ基数は増える方向だ。そうなれば、国内衛星へのトロンの採用も増え、宇宙産業活性化への期待も増す。

宇宙を駆けるトロン。そのオープン化の技術は日本のお家芸である「カイゼン」、「カイリョウ」をもとに進化を遂げ、海外の宇宙機への採用に弾みをつける可能性を秘めている。

■人工衛星に使われる主な制御

  • 通信制御:地上局とのコマンド(指令)や、無線電波に乗って返ってくるテレメトリー(各機器の状態を示す信号)伝送、衛星内の各機器へのコマンド配信やテレメトリーの収集をする
  • 姿勢・軌道制御:宇宙空間で姿勢や軌道を維持するために、各種センサーからデータを集めて衛星自身の姿勢や加速度、位置などを割り出す
  • ミッション機器制御:地球や天体の撮影を行うセンサーや通信機器を操作し、必要に応じて各種信号をあらかじめ衛星上で行い、地上局に伝送する

展望・この技術

ダウンサイジングの流れにトロンOS、中堅・中小企業参入へ敷居下げる

トロンOSがここ数年、日本の人工衛星や探査機に搭載されるケースが増えている背景には無償OSでオープンアーキテクチャー、そして高信頼性である。トロンOSは宇宙機で広く使われる有償汎用リアルタイムOS「VxWorks」に比べると、検証試験のコストを含めても大幅に安くできるなどのメリットは大きい。
 昨年6月に策定された「宇宙基本計画」では宇宙産業のすそ野拡大を進めることがうたわれた。だが、宇宙機は特殊仕様の機器が多く、参入へのリスクが高い。しかし、衛星は「安く、早く作れる」といった小型衛星などにみられるようにダウンサイジングのニーズが高まっている。こうした宇宙機にトロンOSが普及すれば、一般企業だけでなく、中堅・中小企業も宇宙への敷居を低くできるだろう。


掲載日:2011年1月 6日

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