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アイデアを刺激する 最新科学技術キーワード


遠隔医療

「ちょっと血圧が高いですね」。「そうですか。それは気を付けないと」―。診療所や病院の日常的な一コマだが、受診者が相対しているのはパソコン画面。受診者と医療機関をインターネットでつなぎ、遠隔で医師の相談や診断が受けられる遠隔医療というサービスで、このところ注目度が高まっている。キーワードは「人と人とをつなぐ」。通信事業者は事業化をにらみ、自社の基盤事業であるブロードバンド(高速大容量通信)や携帯電話回線を利用した遠隔医療システムの開発にしのぎを削っている。

【地域格差埋める高速】

大容量通信を可能にするブロードバンドの利点を生かして、遠隔医療システムの構築に取り組むのはNTT東日本。自社の光回線「フレッツ光」を用いた遠隔医療システムの実証実験を岩手県遠野市、宮城県栗原市、福島県南会津町と三春町で行っている。

システムはフレッツ光のほか、NTT東の高機能テレビ電話端末「フレッツフォン」、通信機能が付いたタニタ(東京都板橋区)の歩数計や血圧計、体重計などで構成。実験は受診者の家や地域の公民館と保健センター、市民病院などをフレッツ網で結ぶ。利用者は自宅や公民館で血圧などバイタルデータを計測する。データは自動的に管理サーバに登録され、保健師や医師はデータを確認しながらテレビ電話で健康相談を行う。

栗原市の実験では参加する一部世帯にシステムを設置し、在宅での遠隔相談も実現した。一方、遠野市や南会津町では、受診者が公民館など近所の公共施設に集まり器具を共同で利用する方式を採用。「一カ所に受診者が集まることでコミュニケーションの促進にもつながる」(NTT東日本)と、精神面での効果にも期待する。

岩手県遠野市での遠隔医療の実証実験風景。最寄りの公民館で住民が血圧などのバイタルデータを計測している(NTT東日本提供)

岩手県遠野市での遠隔医療の実証実験風景。最寄りの公民館で住民が血圧などのバイタルデータを計測している(NTT東日本提供)

KDDI研究所(埼玉県ふじみ野市)は、緊急時に専門医が外出先から携帯電話を用いて医療画像を閲覧するシステムを開発した。「携帯で高画質画像を閲覧し、外出先から病院の当直医に治療の指示が与えられる」(執行役員の濱井龍明さん)のが特徴。専門医不足を補えるほか、遠隔地の病院への協力もでき、医療の地域格差低減に貢献していく。

システムは病院にあるコンピューター断層撮影装置(CT)などを専用のサーバに接続。サーバに蓄積された撮像データは暗号化され、専門医が持つ携帯電話に送信される。静止画像符号化の国際標準「JPEG2000」による画像圧縮で、高画質の医用画像データが最大毎秒3.1メガビット(メガは100万)で高速伝送できる。

【暗号化で漏えい防止】

ここで注目したいのが暗号化技術だ。KDDIはデータをいくつかの断片的なファイルに分け個別に送信する秘密分散という技術を採用。断片を決められた個数以上集めないと、一切の情報が復元不可能となる。断片自体は意味を持たず、機密ファイルの断片が流出してもファイル自体の情報は漏えいしない。

【X線画像や心電図も】

一方、メディカル・プラットフォーム・エイシア(MedPA、東京都台東区)とクアルコムジャパン(同港区)は、第3世代(3G)携帯電話網を利用した在宅健康管理の実証実験を8月から始めた。高血圧の患者が家庭で測った血圧データなどを専用の通信機器で送信し、担当医がインターネットを通して閲覧できるようにするもの。北海道壮瞥(そうべつ)町と奈良県斑鳩(いかるが)町、大阪市住吉区で実施する。

技術面はKDDIの携帯電話回線を使用する仮想移動体通信事業者(MVNO)のケルコム(同千代田区)が担当した。ケルコムは専用通信機器に搭載する通信モジュールを、KDDIが指定するインターネットプロトコル(IP)アドレスで管理する。

計測はデータ通信に対応したオムロンの血圧計や体組成計で行う。通信機器にUSBケーブルで接続して送信ボタンを押すだけでデータ送信が可能。携帯電話などの操作も不要で「高齢者でも簡単に操作ができる」(ケルコム社長の野口清輝さん)という。

システムはX線画像や心電図などのデータ通信も可能。将来的には「遠隔での画像診断や持ち運びができる移動体通信のメリットを利用し、救急救命現場での使用を視野に入れる」と用途拡大を目指している。

展望・この技術

医療格差の是正に一役

2010年度の医療IT市場は1兆円規模になるとも言われている。通信各社も本腰を入れて参入を狙うが、医療業界という未知の分野で一気にビジネスを拡大するのは難しそう。まずは医療機関や地域との実証実験で実績を残し、技術をアピールしたいところ。加えて、遠隔医療は光回線を中心とするブロードバンド(高速大容量通信)の普及にも貢献しそうだ。通信事業者は高齢者の利用促進などで、新たなブロードバンド利用層の取り込みにつなげたい考え。

一方、国も遠隔医療に大きな期待をかける。総務省は「地域ICT利活用広域連携事業」で、複数の市町村地域にまたがる遠隔医療実験の委託事業を実施予定。遠隔医療の有効性や安全性に関するデータ収集などを行い、将来的な普及を後押しする。患者や医師の負担軽減はもちろん、地域間の医療格差の是正など遠隔医療のもたらす効果は大きい。


掲載日:2010年12月16日

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