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アイデアを刺激する 最新科学技術キーワード


緑の原油

もしかしたら日本が産油国になる? 湖面などに漂う藻。その藻から油分を取り出し、バイオ燃料として利用する技術の開発が進められている。得られた燃料は「緑の原油」と呼ばれ、次世代バイオ燃料として注目されている。この研究で、電力中央研究所は省エネルギーで高い抽出量を実現する技術を開発した。「産油国・日本」を実現し得る技術を求めて、神奈川県横須賀市の同研究所に足を運んだ。

【ジメチルエーテル】

「水分が多くあるところから少量の油を取り除く技術です」。電中研・エネルギー技術研究所で主任研究員を務める神田英輝さんは、技術の要点をこう説明する。
 エネルギー源として着目したのは、大きさが数マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の微細藻類。細胞全体で光合成を行うため、光合成能力(二酸化炭素吸収能力)が高く、トウモロコシの100倍以上とされている。

ただし、藻類はほぼ液体の状態で、従来は水分の蒸発に手間暇がかかった。さらに従来方法は水分を蒸発した後に、多くのエネルギーをかけて細胞壁を破壊し、ヘキサンなどの有毒な有機溶剤で抽出していた。抽出した油が環境にやさしいエネルギーでも、抽出過程で環境負荷がかかるなら実用的ではない。神田さんはあれこれ知恵を巡らせた末、この課題を解決。カギは抽出剤に使うジメチルエーテル(DME)だ。

DMEはそれ自身が無毒で、オゾン層を破壊する恐れのない溶剤。抽出の流れはこうだ。細胞壁があっても、DME分子は微細藻類の細胞内で油分と結合する。結合したDME分子は細胞の外に出て行き、油分を抽出できる。油分とDMEを分離する際も、DMEの沸点がマイナス24、25度Cと低い特性を利用し、加熱する必要がない。つまり無駄なエネルギーを省いた仕組みといえる。

バイオ燃料となる微細藻類のアオコを採集(電力中央研究所)

バイオ燃料となる微細藻類のアオコを採集(電力中央研究所)

微細藻類の一種であるアオコを用いた実証試験では、粗く脱水した後の水分91%の試料6.65グラムを使って、緑の原油0.24グラムの抽出に成功。水分がすべて取れた乾燥した重量に換算すると40.1%となり、従来方法の60倍以上に相当する。得られた緑の原油はガソリンと同等の発熱量を持つことが確認されている。

【石炭の脱水技術】

神田さんは、この緑の原油を「ゼロ次エネルギー」と位置づける。化石燃料や自然エネルギーを一次エネルギー、電気や都市ガスなど一次エネルギーを加工したものを二次エネルギーと呼ぶ。これに対して、緑の原油は太陽の光と二酸化炭素(CO2)と水から光合成で得られる。従来の枠組みにない新種のエネルギーということだ。

この新種のエネルギーを生み出した技術は意外なところが起源。神田さんによれば「もともとは石炭の脱水技術だったんですよ」と話す。石炭火力発電の燃料である石炭は水分を多く含むと発電効率が落ちてしまう。そのために脱水の技術を研究していた。その後、下水汚泥の脱水にトライした時に「おもしろい現象」が見つかった。

通常は臭気を放つ下水汚泥だが、自前の脱水技術を使ってみたところ、無臭だった。これは下水汚泥に含まれる微量の油を吸着した証拠で、技術の潜在能力の高さを実感した。その後にバイオエタノールが大いに話題になった時、原料であるトウモロコシの転作に伴う穀物価格の高騰が社会問題になり、バイオエネルギーに焦点を定めて技術開発を進めてきた。

デンソーが善明製作所内に完成した藻の培養施設

デンソーが善明製作所内に完成した藻の培養施設

【素材原料にも】

環境にやさしいエネルギーとして太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーがあるが、「発電技術ができないものをつくり出せる」と強調。例えば緑の原油は液体燃料のため運びやすいほか、石油のように燃料だけでなく、原料としての利用も可能だ。
 日本はこれまで化石燃料をはじめとするエネルギー源を海外に依存してきた。緑の原油の利用によってこの状況から脱却し、エネルギーを自給する世界も夢ではない。
 まして藻類は培養技術を開発すれば"無尽蔵の油田"を生み出すことも可能だ。日本が産油国になる―。技術の高度化が加速すれば、そんな未来も現実味を帯びてくる。

展望・この技術

2020年には自動車燃料

電中研のほか複数の企業、大学が「緑の原油」の開発にチャレンジしている。デンソーは自社で特許をもつ新種の藻からバイオ燃料を生産する研究を進めている。東北大学は東北電力と共同で、海藻から高効率でエタノールを生産する技術を開発するなど、国内でも盛んに行われている。
 電中研の神田さんは「光合成能力がより高い新種の探索を行っているところもある。我々は省エネルギーで燃料を取り出す技術。組み合わせることも検討していきたい」と、企業などとの連携による生産システムの高度化に意欲を示す。
 デンソーが自動車用燃料で実用化を目指す時期は2020年。暮らしの一部に緑の原油が使われる日は、そう遠くないかもしれない。


掲載日:2010年9月13日

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