本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > アイデアを刺激する 最新科学技術キーワード

アイデアを刺激する 最新科学技術キーワード


粒子法シミュレーション

コンピューターシミュレーションは実験、理論に続く「第3の科学」と呼ばれ、研究を進める上で重要な手段となっている。その中で最近、「粒子法シミュレーション」という新しい手法が注目されている。従来のシミュレーションでは不可能とされていた、水しぶきや煙が立ち上る様子など、流体の大きな変形をうまく表現できるためだ。応用分野は原子力や土木関連をはじめ、医療やゲームにまでおよぶ。基礎と応用の両面から、最新のシミュレーション手法の動向を探った。

【水しぶきリアルに】

コンピューターシミュレーションは大きく「格子法」と「粒子法」に分けられる。従来手法である格子法は流体のある空間を碁盤の目のように四角に切り分けた“格子”にして、格子の集まりとしてシミュレーションを行う。有限要素法などが有名で自動車の衝突といった解析に利用。だが、水しぶきなどは格子法では表現できず、複雑な計算式を仮定して計算しなければならなかった。

これに対し、粒子法は水や砂などの流体を、ある大きさの粒と仮定。土石流や水しぶきなどの細かな動きをシミュレーションし、可視化できる。もとはといえば、宇宙での星の誕生や、銀河の挙動といったマクロな事象を計算するために開発されたのだが、空気や水といった身近なものにも適用できるよう改良された。

その立役者が、日本での粒子法研究の第一人者である東京大学教授の越塚誠一さん。「粒子法は軟らかくて大変形するものに適していて、生体にも合っている」と生命科学への応用にも期待する。

ダムでの土石流のシミュレーション(プロメテック・ソフトウェア提供)

ダムでの土石流のシミュレーション(プロメテック・ソフトウェア提供)

粒子法の粒子は実物大の原子や分子を1個ずつ表すのではなく、ある領域を仮想的に1個の粒子と考える。格子法との違いは、一つの粒子を中心とした一定距離内にある他の粒子との関係を計算に組み込んでいて、粒子間のつながりが自動的に計算される点。このことが大変形の計算を簡単にしている。格子法では、一つの格子点と格子点の間のつながりを仮定しなくてはならず、かなり複雑だ。

【カムイ外伝】

越塚さんが1990年代に開発したMPS法をもとにした新しい粒子法のシミュレーションソフトは、すでに商品化済み。東京大学発ベンチャーのプロメテック・ソフトウェア(東京都文京区)が、原子力や土木関連の数値解析を行えるソフトとして開発し、構造計画研究所が販売している。セメントやパルプメーカーの製造研究部門に売れたという。

映画「カムイ外伝」の中で、サメが飛び、着水した時に水しぶきが上がるダイナミックなシーンの制作にはプロメテックもかかわっている。粒子法を使って情景をリアルに表現。特撮と組み合わせることで、あたかも出演者とサメが同じ空間にいるような錯覚に陥るほどの出来映えだ。

【原発安全評価に力】

肺を粒子法シミュレーションで表現した図(東大の越塚・酒井研究室提供)

肺を粒子法シミュレーションで表現した図(東大の越塚・酒井研究室提供)

ほかにも、原子力安全基盤機構(JNES)では原子力発電所での安全評価に粒子法を活用。高温の水を通す配管が破裂した場合のシミュレーションを行っている。

ステンレス製配管は断熱材でくるまれている。配管が壊れると、中を通る高温高圧の水が熱湯や蒸気となって吹き出し、断熱材が一瞬で粉々になる。これまでの粒子法では、水もゴミもすべて同じ大きさにそろえなければならなかったが、新手法では発生するゴミをランダムな大きさに設定して計算するため、実際の状況に近いリアルなシミュレーションが行えるという。

医療分野への応用も進む。越塚さんは東大病院と共同で、がん治療の前に行うコンピューター断層撮影装置(CT)の診断結果から、粒子法を使って治療計画を立てる手法を研究中。がんの動きを見ることに初めて成功した。だが、がんの中でも肺がんは特に動きやすくシミュレーションが難しい。将来、赤外線マーカーと心電図を併用して体内でのがんの動きを調べながら手術ができるという。自動車分野も候補に上がる。カーブを曲がる際に内部のオイルタンクの中の油の動きや、雨が降った時に車の窓を開けても、雨が中に入らないようにする屋根の取り付け方、といった課題解決に役立てられる可能性がある。

展望・この技術

【実験の効率を格段に上げる新手法】

粒子法は物体の破壊や台風の激しい波などをシミュレーションできる画期的な手法。実際には見られない自動車内のギアボックス内で、オイルがギアによりかき上げられる様子を再現できる。越塚さんに簡易版をパソコン上で見せてもらったが、本当の液体のような動きだった。オイルのしぶきが飛ぶ様子を見たとき、思わず「おっ」と叫んだ。

すべてがシミュレーションできるわけではないが、実験の効率は格段に上がる。理論を実証するためには実験が必要だ。だが、実験に多大な時間やコストがかかる場合、いきなりとりかかるのはリスクが高くなる。そこでシミュレーションが理論と実験をつなぐ架け橋となり、粒子法はその一つとしてゲームや医療などの多方面で重要な手法になるだろう。


掲載日:2010年2月18日

関連リンク
  • 支援情報ヘッドライン
    ビジネスに役立つ無料セミナーなど公的機関による支援施策情報が毎日更新されます。
  • ビジネスQ&A
    経営者からのよくある質問に専門家が回答した事例集。

前の記事次の記事



このページの先頭へ