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アイデアを刺激する 最新科学技術キーワード


加速器駆動未臨界炉

次世代の原子炉として世界各地で研究開発が進む「加速器駆動未臨界炉(ADSR)」。加速器を使って未臨界状態の原子炉に中性子を送り込み、核分裂反応を持続する仕組みで、既存の原子炉より安全性が高いとされる。臨界状態で運転する既存の原子炉では、未臨界状態は停止中の状態にあたる。いったい未臨界で運転するとはどういうことか?今年3月、世界初のADSR実験を行った京都大学原子炉実験所(大阪府熊取町)を訪ねた。

【常に未臨界】

既存の原子炉は基本的に臨界状態で運転し、停止するとき未臨界状態にする。この「臨界」「未臨界」とは何か。

例えばウランを核燃料とする原子炉の場合、中性子がウランに吸収されると核分裂反応が起こる。核分裂反応の際、中性子が複数放出されるが、これらの中性子は次の核分裂反応を起こす可能性を持っている。核分裂反応はこうして次から次へと連鎖していく。

臨界と超臨界、未臨界は、一つの核分裂反応から次の核分裂がいくつ生じるかという分類だ。一つの核分裂反応から次の核分裂が同じ数だけ起こる場合を臨界といい、同じ数よりも多く起こる場合を超臨界という。反対に未臨界は同数未満しか起こらない場合を指す。

超臨界状態では核分裂の数がねずみ算式に増える。一方、未臨界が続けば核分裂の数は次第に減っていく。既存の原子炉はこの性質を利用して臨界状態を維持しながら運転し、出力を一時的に調整するときに制御棒を操作してほかの状態、つまり出力を上げるときは超臨界状態に、下げるときは未臨界状態にする。

これに対し、ADSRは常に未臨界状態にある。既存の原子炉では未臨界が続けば核分裂の数が減るとともに中性子も次第になくなっていく。そこでADSRは加速器を使って中性子を送り続け、核分裂反応が持続するようにした。常に未臨界にする利点はいくつもある。一つは臨界状態にする必要がない点だ。

ADSRは常に未臨界状態なので、臨界状態を基本とする既存の原子炉よりも超臨界との隔たりがある分、余裕が持てる。最初から臨界状態にしないという設計も選択できる。運転を停止するときは制御棒を使わず、加速器の電源を切って中性子の供給を止めればよい。

【核変換処理利用も】

加速器駆動未臨界炉(ADSR)実験のため新設した固定磁場強集束型(FFAG)加速器

加速器駆動未臨界炉(ADSR)実験のため新設した固定磁場強集束型(FFAG)加速器

また、核分裂反応で使われない中性子が原子炉の中に数多く存在するのも利点だ。このためADSRの応用分野は核分裂に伴う熱エネルギーを利用する原子力発電にとどまらない。使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物を中性子と反応させて短寿命化したり、放射能を失った状態にする核変換処理にも中性子を利用できる。科学研究や医療用の中性子源としても利用可能だ。ADSRは現在、基礎的な研究が進んでいる段階。今年3月、京大原子炉実験所で実施した世界初のADSR実験は実証的な研究の第一歩と位置づけられる。

【核破砕反応を実験】

世界初のADSR実験を終えた関係者(大阪府熊取町の京大原子炉実験所)

世界初のADSR実験を終えた関係者(大阪府熊取町の京大原子炉実験所)

ADSR実験では固定磁場強集束型(FFAG)加速器を新設。この加速器でつくった陽子を重金属であるタングステンの標的に当て、原子核をバラバラにする核破砕反応を起こして中性子を発生させる。中性子は未臨界状態の実験用小型原子炉である臨界集合体実験装置の中に送り込まれ、原子炉内のウランと核分裂反応が起こる。

「核融合反応で出てくる中性子を使った実験ではなく、核破砕反応による中性子というのが今回のポイント」と同実験所副所長の代谷誠治さんは説明する。核融合反応では1回で中性子が1個しか出てこない。核破砕反応は1回で多くの中性子が出てくる。実用化を視野に入れるなら、一度に中性子をたくさん供給できる方が有利だ。ADSRの研究開発は今後、加速器の性能を高めることが重要となる。

また、標的に発生した熱をどう取り除くか、中性子の大量発生に伴う標的の材料の劣化をどう抑えるかなどの課題があるほか、長期間ADSRを運転したときの核分裂反応の性質も詳しく調べる必要がある。実証的な研究開発はまだ始まったばかりだ。

展望・この技術

さまざまな分野で応用が期待される加速器

加速器の分野では海外の技術が主流となっているが、ADSR実験のために新設したFFAG加速器は純国産技術だ。1950年代に物理学者の大河千弘氏が原理を考案。陽子の加速は技術的な難しさから長年実現しなかったが、高エネルギー加速器研究機構(KEK)で2000年に世界で初めて実証に成功した。
 円形加速器には、加速電場と磁場の変化を同期させて粒子を一定の軌道半径に保つ、高エネルギー加速に適したシンクロトロンと、磁場を固定して加速に伴う粒子軌道の拡大を許す、大強度加速に適したサイクロトロンがある。FFAGは固定磁場の形状を工夫して両者の利点を取り入れ、小型で高エネルギー・大強度の達成を図る。ADSRのほか、素粒子物理学や医療などさまざまな分野で応用が期待されている。


掲載日:2009年12月17日

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