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アイデアを刺激する 最新科学技術キーワード


テラヘルツ波

安全に、中身をはっきり透視できます―。危険物などが入ったかばんなどを閉じたまま検査できる"光"が今、脚光を浴びている。その名はテラヘルツ波。波長がX線や可視光などの光と、ラジオ波などの電波の境界線上にある不思議な電磁波だ。応用研究は始まったばかりだが、テラヘルツ波を使えば、不透明な物質を透過して破壊せずに内部を調べられ、被曝(ばく)量の多いX線を使わずに済む利点がある。半導体や生命科学、空港のセキュリティーなどでの幅広い活用が期待されている。

【X線と違い被曝なし】

テラヘルツは毎秒1兆回振動する波の周波数。実際には0.1テラ―10テラヘルツの周波数帯の電磁波を指す。3ミリ―30マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の波長に対応し、波の性質が強い電波と光の性質が強い赤外線の境界領域にある。

テラヘルツ波は電波のように物質を透過する能力を持つうえ、X線と違い、放射能による被曝はない。それどころか低エネルギーで人体に害はない。水分に対して敏感なため生体試料への応用にも威力を発揮する。

ただ、このミリ波から赤外光までの領域はこれまで、産業利用されていなかったのが実情。発生と検出がともに難しかったからだ。それがここに来て、超短時間の光パルスを発生するフェムト秒レーザー(フェムトは1000兆分の1)や、半導体デバイス技術が発達したことで研究が一気に加速した。

国内の基礎研究を見てみると、東京大学生産技術研究所教授の平川一彦さんがフェムト秒レーザーで発生させたテラヘルツ波を利用し、半導体内で高速で運動する電子を調べる研究を進めている。電子の動きにより発生する電磁波をオシロスコープで観測し、超高速現象を解明するのが狙い。観測の時間幅は10兆分の1秒の100フェムト秒という。

可視光のレーザーと結晶からテラヘルツ波を作る研究を行っているのが理化学研究所主任研究員の緑川克美さんの研究室だ。従来方式では1テラ―3テラヘルツの範囲での発振が限界。それを可視光のレーザー光を自作した非線形光学結晶に入れ、1テラ―40テラヘルツの範囲で自由に発振できるようにした。

テラヘルツ波の電磁波領域

【光学異性体も判別】

応用面に目を向けると光学異性体の判別法といったユニークな使い道もある。分子はテラヘルツ波の領域に固有の「指紋スペクトル」を持ち、この領域は分子間や分子内の振動を示す。そのスペクトルを調べることで光学異性体の違いが判別できる。こうした点で、東大の平川さんは「テラヘルツ波は分子と分子との全体的な動きを眺めるのに適している」と話す。

テラヘルツ波での金属探知は、テロ対策も含めてもっとも需要が見込めそう。現在のX線での金属探知は、金属があるかないかを見分ける大まかな使い方しかできない。テラヘルツ波なら金属の形がはっきり見えるため、空港などでわざわざ金属類をからだから外す必要もなくなる。

【検出器など課題山積】

NECなどが開発したテラヘルツ波を検出できる小型カメラ

NECなどが開発したテラヘルツ波を検出できる小型カメラ

テラヘルツ関連装置を商品化する例も出てきた。情報通信研究機構と東北大学、NECは共同で、テラヘルツ波を使って生体物質を検出し、画像化するシステムを開発。9月からカメラの受注を開始した。

測りたい生体分子を白くて薄い膜に貼り、テラヘルツ波を照射。対象物を透過したテラヘルツ波をカメラで撮影し、リアルタイム観測が行える。

ただ、テラヘルツ波自体の幅広い応用に向けて課題は山積。「ポテンシャルは大きいが、検出器に限界がある」と理研の緑川さんも指摘する。テラヘルツ波は可視光に比べエネルギーが小さく、室温の熱エネルギーの影響がデータに及ぶ。そのため、測定器を液体ヘリウムなどで冷やす必要がある。さらに、産業用に使うには、研究室用のレーザーでは大きすぎるという難題もある。

それに対し、研究者の間ではテラヘルツ波の発振には半導体レーザーが有望との見方も広がる。たとえば情通機構のQCLならレーザーを小型化でき、コストを抑えられる見通し。情通機構新世代ネットワーク研究センターグループリーダーの寳迫(ほさこ)巌さんは、「常温での半導体レーザーが開発できれば、テラヘルツ波があらゆる分野に広がっていくだろう」と展望している。

展望・この技術

生命科学分野にブレークスルーも

テラヘルツ波の用途は生命科学や防災などの分野にも広がる。生体内のたんぱく質にテラヘルツ波を照射し、反射光や透過光からたんぱく質の構造を簡単に画像化する方法を検討中だ。現在、緑色蛍光たんぱく質(GFP)などの色素でたんぱく質を観察する方法がよく使われる。だが、染色に手間がかかるようだ。テラヘルツ波を使えば、生命科学分野にブレークスルーが起きるかもしれない。
 テラヘルツ波は火災の際の救助活動などでも威力を発揮するものと期待されている。煙にまかれて家の内部が見えない時でも、発生した一酸化炭素などの毒ガスを検出することも可能だ。
 検出器の感度やレーザー装置の小型化など課題は多いが、光を使った新しい手法として、これからも開発が進むだろう。


掲載日:2009年11月26日

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