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アイデアを刺激する 最新科学技術キーワード


高温ガス炉

温暖化対策として、二酸化炭素(CO2)を排出しない原子力発電に追い風が吹く。ただ、原発立地の上で引き続き重要となるのが、放射性廃棄物の処理や安全性確保の問題。そうした中、小型でも高い経済性を持ち、万一の場合に炉心が溶融する危険性が低い「高温ガス炉」の実用化プロジェクトが国内で進められている。発電に加え、高温の熱を水素の製造や地域暖房などに幅広く活用できる次世代型の原子炉だ。その有用性を確かめるべく、試験研究炉の内部に潜入してみた。

【茨城・大洗に試験炉】

茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センター。ここに日本初の高温ガス炉「高温工学試験研究炉(HTTR)」が設置されている。

高温ガス炉

1991年から97年にかけて建設され、98年11月に原子炉の稼働開始ともいえる初臨界(核分裂の連鎖反応が一定割合で継続すること)に達した。定格出力は3万キロワット。
 建物自体は何の変哲もなく、外見からは次世代型の原子炉があるとは思いもよらない。それもそのはず。主役の装置類は地下にある。らせん階段を格納容器の底、地下30メートル近くまで下りて、厳重にロックされた圧力容器の内部に実際に入ってみた。もちろん運転停止中だが、燃料の入った炉心近くまで普段着で入っても放射能レベルはまったく問題ない、ようだ。

「クリーンかつ安全なのが高温ガス炉の特徴。被爆も少なく、保守時の炉心部へのアクセスも良い」。大洗研究開発センター所長の廣井博さんは自信ありげに話す。  「安全性」が高いのは、現行の軽水炉などと大きく異なる構造を持つため。「高温ガス」の名の通り、ヘリウムガスを使って熱を取り出す。ヘリウムは化学的に不活性で構造材と反応せず、運転中に放射能を持つこともない。

さらに炉心には耐熱性に優れ、熱をため込む能力が高い黒鉛を使用。異常事態時には原子炉出力が自動的に低下する仕組みにした。冷却材がなくなっても圧力容器外面からの自然放熱で冷やし、核分裂生成物を燃料内に閉じ込められる。

【日本独自の被覆燃料】

日本初の高温ガス炉「高温工学試験研究炉(HTTR)」の外観

日本初の高温ガス炉「高温工学試験研究炉(HTTR)」の外観

日本独自の技術もある。直径1ミリメートルに満たない球状の被覆燃料粒子がそれ。競争相手のドイツや中国、南アフリカが、ペブル(丸石)という直径6センチメートルほどの球状燃料を使うのとは対照的だ。

日本で開発された被覆燃料は、ウラン酸化物を炭化ケイ素などで四重に覆い、被覆部は1600度Cの高温に耐える。被覆が割れても粒子1個当たりに含まれる核分裂生成物の量が少ないため、世界最高の封じ込め能力を持つという。1基の高温ガス炉で燃料粒子を約10億個使うというのだから、気が遠くなるような話ではあるが。

原子力構造材として世界最高温度の1000度Cまで使用可能な金属材料「ハステロイXR」も日本発の技術。この素材のおかげで、04年4月には世界で初めて950度Cの熱を圧力容器外に取り出すことに成功した。

【発電効率50%超】

そして、この950度Cという高温の熱の多目的利用が高温ガス炉最大の特徴ともなっている。たとえば熱を発電に使った場合、軽水炉の蒸気タービンの発電効率が約33%なのに対し、高温ガス炉では50%以上にできる。
 このうち、燃料電池車など水素社会の到来をにらんだ取り組みとして注目されるのが、水素製造システムへの応用だ。熱化学法(IS法)という原理を使い、CO2を発生せずに水を効率良く、酸素と水素に熱化学分解する。

大洗研究開発センターではIS法の実用化も進めている。商用レベルとなると1時間当たり1000立方メートル程度の生産規模が必要だが、04年には同30リットルの連続水素製造にこぎ着けた。現在はその1000倍の同30立方メートルに狙いを定める。15年以降はHTTRに連結する形で、敷地の隣にIS法による水素製造の実証プラントが設置されることになるようだ。将来は、こうした小ぶりの炉が需要地ごとに分散立地され、そこから高圧水素タンクローリーで周辺のスタンドに水素燃料が運ばれることになるのかもしれない。

展望・この技術

国際的競争も加速

高温ガス炉は国内だけでなく、海外での展開も期待されている。その有望株がカザフスタン。日本との原子力協定にもとづき、2018年ごろ、カザフ国内に5万キロワットの炉を日本の技術で整備する計画が進行中。
 実は、高温ガス炉は世界中で激しい開発競争が繰り広げられている。発電用商用炉では中国と南アフリカが先行。中国は09年、南アは10年に建設開始の予定。欧米韓も商用化に力を入れる。ただ、中国の炉は取り出し口温度が750度Cと低いことなどから「HTTRを持つ日本が最先端を行く」(大洗研究開発センター副所長の小川益郎さん)との自負が日本側にはある。中国は将来、自前の炉を途上国に広げていく意向のようだが、発電所とセットになった産業インフラは途上国ニーズにも合致することから、各国の売り込み競争も将来、熱を帯びそうだ。


掲載日:2009年10月 1日

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